[高校生のバイク問題] 埼玉県は“特定原付”の周知/啓発に自転車講習会の場を活用

小学生への子供自転車運転免許制度など、自転車教育に力を入れている埼玉県の活動から、6月26日(金)、埼玉県総合教育センターで開催された「令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会」の模様を紹介する。高校生を対象とした自転車講習会の中に特定原付(※)についての説明/試乗会が組み込まれており、特定原付に対する自治体の姿勢を窺い知れる内容だった。

※特定原付:’23年7月に施行された新しい車両区分「特定小型原動機付自転車」について国交省が定めた略称。特定小型原付とも呼称される。


●文:田中淳麿(ヤングマシン編集部)

学校に戻ってから内容を伝える“伝達講習会”

この取り組みは、高校生に継続的かつ系統的な自転車安全運転教育を行い、交通社会の一員としての責任を自覚させ、将来にわたる交通事故防止に役立つことが目的。県教委と県警察本部が協力して、埼玉県高校生自転車安全教育プログラムに基づいた講習が実施されている。

本講習会は、各校から選ばれた生徒2名と先生1名が参加し、参加生徒が学んで帰るだけでなく、学校に戻ってから他の生徒にも内容を伝えて共有する“伝達講習会”となっている。

そのため、スケアードストレイト(※)では動画を含む撮影が許可され、4本の講義ではスライド投影された資料のデータも配布された。さらには参加生徒が自校生徒に行う講習会の助けとなるよう、県教委が作成したプレゼンテーションファイルを配布して、説明や見せ方の要点を示すという講義もあった。

※スケアードストレイト:スタントマンによる交通事故の再現により事故の衝撃と恐ろしさを視覚的に理解させる取り組み。

スケアードストレイト|令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会
スケアードストレイト|令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会

【スケアードストレイトも実施され、生徒が記録撮影】スタントマンが自転車事故を再現するスケアードストレイト教育技法も行われ、生徒はスマホやタブレットなどで撮影を行った。事故の再現を見て「怖い」と認識させるだけでなく、この事故の原因は何かを考え、事故を起こさないためには何に注意すべきか、どうすれば良いのかを知る学習法だ。トラックの内輪差による巻き込み事故も再現された。

特定原付についての説明/試乗会も

また閉講式の後には、JEMPA(一般社団法人 日本電動モビリティ推進協会)による特定原付に関する説明会/安全運転啓発も行われた。

壇上には電動キックボードタイプと電動バイクタイプの特定原付が並べられ、改正道交法と交通ルール、車両の規格と保安基準等について説明があり、実際に購入する場合はナンバープレートの取得や自賠責保険への加入が必要なこと、また努力義務ながらヘルメットをしっかり被るべきといった運転者の心得も伝えられた。

その後は希望者への試乗会が行われ、生徒/先生/関係者などが試乗した。生徒らは「速い、すごい!」と興奮した様子で、乗り心地を楽しんでいた。

16歳以上免許不要の自走モビリティについて、高校生にどういう場で伝え、周知と安全啓発を推進するのかは大きな課題だ。埼玉県の取り組みには今後も注目したい。

令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会
令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会

【特定原付の法改正や保安基準等について説明/試乗会も開催】講習会の最後には、特定原付のメーカー団体・JEMPA(一般社団法人日本電動モビリティ推進協会)による改正道交法(’23年7月施行)や特定原付車両の保安基準等についての説明があり、屋外での試乗会も行われた。

令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会

2024年5月に公布された道路交通法の改正案。自転車の検挙件数が増え、違反処理(刑事手続)等の合理化を図るため、一定の違反行為が交通反則通告制度(青キップ)の対象となる。酒酔い/妨害運転等は赤切符のまま。

令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会

埼玉県警察本部交通部交通総務課により、自転車交通事故の現状が説明された。自転車事故は高校生年代で驚くほど急増する。

令和6年度 高校生の自転車安全運転推進講習会

東京海上日動火災保険による自転車乗車リスクに強くなるためのトレーニング講義で、加害責任や保険加入の必要性を学んだ。埼玉県では自転車保険等への加入が義務化されている。

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