![](https://young-machine.com/main/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
愛車を選ぶ際、今までとは違うタイプに乗りたいなぁ……と思うこともあるだろう。そのとき、選んだ先に何が待っているのかを少し知っておくことで、より自分に合ったバイクを選べるかもしれない。オンロードモデルからアドベンチャーモデルに乗り換えたら、何がどうなるの?
●文:ヤングマシン編集部
見晴らしがいい!
オンロードバイクとアドベンチャー/オフロード/クロスオーバーなどの大きな違いのひとつは、走破性をよくするために車高が高くなっていること(最低地上高も同時に高まる)だろう。加えて、ステップの上に立って操縦すること“スタンディング”を想定した幅広のハンドルバーが高い位置にあるため、普通に着座しても上半身が直立したライディングポジションになる。
これらによってライダーの頭の位置が高くなり、さらにオンロードバイクほど顎を引いた姿勢にならないため、目線がかなり高くなったように感じるはず。クルマでいえば乗用車とSUVまたはクロカン車のような違いだ。
ミラーの位置も高くなる。乗用車より少し高いくらいか。
じゃあアドベンチャー/オフロード/クロスオーバーは全て同じようなポジションかというと、実はその中にも少しずつ差異がある。
アドベンチャーは上半身を直立させた傾向が最も強く、座って乗っても立って乗っても上半身の前傾は弱い。一般的にトレールモデルとかデュアルパーパスと呼ばれるものもハンドルバーはけっこう高めで、最近の大きなくくりではアドベンチャーにまとめられることもある。
クロスオーバーは、オフロードっぽい部分とオンロードっぽい部分を併せ持つハイブリッドタイプで、両方の要素がクロスオーバーしていることからそのような名で呼ばれる。基本的にアドベンチャーモデルに近いライディングポジションだが、オンロードモデルとベースを共有していることも多く、上半身は弱めの前傾に、また車高はそれほど高くない傾向だ。
オフロードはというと、競技専用車などの本格的なものになるほど車高は高くなり、シートを含む車体はスリムになる傾向。その中でも、スプリント寄りの出自のものはハンドルバーがやや低めで、やや上半身は前傾していて積極的なアクションがしやすいポジションに。耐久レース寄りになるとハンドルバーは高く手前に来ることになり、あまり大きなアクションをしなくてもいいようなリラックスしたポジションになる。細身のアドベンチャーモデルに近いとも言えるだろうか。
ついでに言うと、車高が高くて軽いバイクは横風の影響を受けやすくなるので、強風の際には少し注意が必要だ。
サスペンションが柔らかくて乗り心地がいい!
アドベンチャーモデルにもいろいろあるが、走破性を高めようとすればするほどサスペンションストローク/ホイールトラベルは長くなり、一般的なオンロードバイクが120mm前後であるのに対し、少なくとも150mm以上、中には250mm前後のモデルもある。
長いストロークを使って路面の凹凸や衝撃をいなすため、小さな入力でもよく動き、大きな入力では深くストロークすることで運動エネルギーを吸収してくれる。したがって、オフロード寄りのアドベンチャーモデルになるほどサスペンションはよく動き、印象としても「柔らかい!」「乗り心地がいい!」になる。
大型モデルなら2人乗りで荷物満載でも十分な乗り心地。
乗り心地はよくなるが、そのぶん動きも大きいため、ブレーキをかけるとつんのめるような気がしたりする。また、サスペンションの動きが大きいゆえに反力の発生までに時間もかかり、オンロードバイクに馴染んでいるとレスポンスが鈍い印象にもなりがちだ。
ちなみに、走破性を高めるためにはフロントホイールの大径化が有効で、これに長めのサスストロークが加わると、フロントタイヤが大回りするような印象になり、左右への切り返しなども緩慢に感じるかもしれない。これは路面の荒れやうねりをいなし、細かい凹凸などに左右されずに進んでいくために必要な特性なのだ。
地面が遠い!?
ここまででお気づきと思うが、アドベンチャー/オフロード/クロスオーバーモデルは総じて車高が高い。シート高もおのずと高くなり、地面との距離は開いていく。
とはいうものの、アドベンチャー系はスタンディングも考慮して細身に造られていることが多く、また前述のようにサスペンションもよく沈むため、単純に数値からイメージするよりは足着きに困らないで済むことも。足着き問題を解消するためには、縁石や路面のうねりをうまく使うといいかもしれない。
左のGSX-8Sはシート高810mm、右のVストローム800DEはシート高855mmだ。
ブレーキが利かないように感じる!?
オンロード寄りのクロスオーバーはオンロードバイクと変わらないブレーキを備えていることもあるが、オフロード成分が強まるほどに、ブレーキは絶対制動力よりもコントロール性を重視したものに変わっていく。
ダート路面でいきなり強い制動力を発揮してもロックしたり滑ったりしてしまうだけ。それよりは、滑り出す手前でしっかりとコントロールでき、またロックもしにくいような特性が歓迎されるからだ。
これに加え、長いサスペンションストロークによって、前につんのめる感じ(ノーズダイブ)が大きく、フロントサスが沈んだところで路面からの反力をライダーが感じる状態になるまで時間がかかり、ブレーキが利いているという実感が得られにくいから、という理由もある。
実際は強めにレバーへ入力すれば十分な制動力を発生してくれるので、安全性への心配は無用だ。
あくまでもオンロードバイクに比べて初期でガツンと利かないだけ。
意外と足元が濡れる
これはフロントフェンダーのタイプによるもので、タイヤの外周を覆うように配置されるダウンフェンダーならオンロードバイクと変わらないが、オフロード色の強いモデルが採用するアップフェンダーになると、フロントタイヤが巻き上げた水がライダーの足元に来るのを防ぐ機能があまり高くなく、シューズや膝周りが意外と濡れがち。長いサスペンションストロークに対応し、石や泥が舞い上がっても防いでくれるアップフェンダーだが、日常使いではダウンフェンダーのほうが優れている部分もあるのだ。
左のCL250はダウンフェンダー、右のCRF250Lはアップフェンダーだ。
転んでもダメージが少ない!
オフロード傾向が強いモデルになるほど、つくりがシンプルであることに加え転倒に備えた設計になっているので、転倒しても(多少の傷はつくが)ダメージは小さくて済むことが多い。
立ちごけや転倒の場面でバイクにしがみついたり立て直そうと頑張ったりすると、ライダーが余計に怪我をするリスクもあるので、早めに諦めてバイクを捨てて逃げるという選択も大事である。特にオフロードでは遠慮なくバイクを投げよう。
ナックルガード付きならレバーが折れる心配もあまりない。
まとめ
アスファルトに特化されたオンロードバイクは、日常使いやツーリングなどで何も困ることはなく扱いやすいが、ちょっと道を逸れてどこかに行きたいとか、環境の変化に左右されずに楽な姿勢で自由自在に乗りたい、災害時に役立つバイクを……。そんなふうに考えたことがあるなら、アドベンチャーやオフロードバイクを手に入れてみるといいかもしれない。今までとは違った楽しみが得られるに違いないし、改めてオンロードバイクのよさもわかってくる。理想はオン/オフの2台持ちだなぁ……なんて考えてしまって、バイクの魅力から抜け出せなくなるかも?!
※本記事は2023年8月22日公開記事を再編集したものです。※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
野田さんは学生時代に二輪免許を取得してから今までホンダのバイクばかり乗り継いできました。そんな野田さんが最近購入したのがCRF1100L Africa Twin。どんな経緯でこのバイクを選んだのでしょ[…]
馬力は怒涛の200ps超え!クロスオーバーもここまで来た BMWモトラッドのMシリーズとは、4輪で展開しているそれと同じく、モータースポーツテクノロジーの粋を集めたハイエンドチューンを施されたプレミア[…]
経済情勢および為替レートの変動を受け、GASGASのラインナップが希望小売価格を改定。2024年8月1日から新価格となる。ガスガスの新車を手に入れるなら、値上がり前の今がチャンスかもしれない。 ’24[…]
水冷Vツインを搭載したアドベンチャーツアラー、ステルビオがいよいよ日本に上陸 このたび新発売となる『ステルビオ』は、モトグッツィの最新鋭エンジンとなる1042cc水冷V型2気筒を搭載するアドベンチャー[…]
経済情勢および為替レートの変動を受け、ハスクバーナのラインナップが一部を除いて希望小売価格を一新。2024年8月1日から新価格となる。例えば、ストリート向けのフラッグシップといえるNorden901 […]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
[A] より剛性を高め、スムーズな動きを追求るために開発された フロントのサスペンション機構、“フロントフォーク”には正立タイプと倒立タイプがある…と聞いて、何のこと? と思われた方は、まず写真を見て[…]
汚れたら/臭くなったら洗うのではなく、手入れは定期的に 近年は地球温暖化の影響もあり、真夏は35度以上の猛暑日が続くことも珍しくありません。とくにライダーは日光を直接体に受け続けることになるので、こま[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 「腐ったガソリン」とは、どんな状態のこと? 時間経過とともに燃料の品質が低下して変質したガソリン。放置すると、ドロドロを通り越してガム状の固形物へと変化。軽度の劣化であれ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト “M”シリーズの第3弾がデビュー! M 1000 XR モビリティリゾートもてぎで開催されていたBMW Motorradのメディア試乗会にて、デビューしたばかりのM 10[…]
[A] スポーツ性を追求するなら1本ショック。2本ショックはルックス重視 昔ながらのネイキッド系のバイクの多くが今も2本ショックユニット仕様ですが、これはオートバイらしい伝統的なルックスを重視している[…]
人気記事ランキング(全体)
メーター読み145km/hが可能なYZF-R15 高速道路も走れる軽二輪クラス。排気量で余裕のあるYZF-R25が有利なのは当たり前である。ただR25とYZF-R15の比較試乗と聞いて誰もが気になるの[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 「腐ったガソリン」とは、どんな状態のこと? 時間経過とともに燃料の品質が低下して変質したガソリン。放置すると、ドロドロを通り越してガム状の固形物へと変化。軽度の劣化であれ[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
バイクに積載義務のあるものとは? 車検証や自賠責保険証等の書類 積載義務違反で重い罰則が科せられるものの代表は“書類”です。バイクには使用時に以下の書類を備え付けなくてはなりません。 車両登録書(車検[…]
アクスルシャフト位置がピタリと決まる! “お助けリフターA”はリヤタイヤ着脱の必須アイテム リンクまわりの清掃やハブダンパーのチェックなど、リヤタイヤを外せばできると分かっていても、「タイヤの着脱が面[…]
最新の投稿記事(全体)
押し引きで熱い! 座ると熱い! そんなシートの熱さをどうにかしたい… ツーリングや街乗りにかかわらず、真夏のバイクは炎天下に駐輪していた後に触るのが最初の大きな関門になる。押し引きでシートに触れば手の[…]
ポイントはリヤタイヤと床面との空間。リフト量が少ないほどスタンド操作が軽く車体も安定する ガレージやサーキットのパドックで、バイクにスタンドをかけた状態で前後左右自由に移動できるのが、ガレージREVO[…]
SHISEIDO(資生堂) クリアサンケアスティック 日焼け対策といえば、まずは日焼け止めを塗ることが何より大切です。日焼け止めと言ってもさまざまな種類がラインナップされていますが、昨今人気を集めてい[…]
サンダルでの運転はダメ…では、半袖半ズボンのようなラフな格好は? たとえば、頭の蒸れが気になったからとヘルメットを脱いでしまった場合、乗車用ヘルメット着用義務違反が適用され、違反点数1点が科されます。[…]
メーター読み145km/hが可能なYZF-R15 高速道路も走れる軽二輪クラス。排気量で余裕のあるYZF-R25が有利なのは当たり前である。ただR25とYZF-R15の比較試乗と聞いて誰もが気になるの[…]
- 1
- 2