
社長交代、スズキとのカーボンニュートラル8耐チャレンジなど、話題満載のヨシムラがまたもヤッてくれた!今度は油冷エンジンを搭載する、スズキGSX-R750/1100用の純正パーツ復刻に乗り出すというのだ! 純正部品の供給が悪化している中、これはオーナーにとって感涙モノのニュースだろう!
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:編集部 ●外部リンク:ヨシムラジャパン
スズキと連携しつつ互換パーツをリプロダクト
東京モーターサイクルショーのヨシムラブースで行われたトークショーの様子。登壇者は右から加藤陽平社長、吉村不二雄相談役、辻本聡さん、MC役のみし奈昌俊さん。
創業70周年を迎え、吉村不二雄氏からポップの孫である加藤陽平氏へ。社長交代を発表したばかりのヨシムラからの話題が止まらない。スズキとのタッグでカーボンニュートラル燃料による鈴鹿8耐チャレンジを発表したところに、今度はオールドファン感涙のニュースだ。スズキ随一の名車であり、ヨシムラとも非常に縁が深い油冷エンジン搭載のGSX-R750/1100。その純正パーツの復刻に乗り出すというのだ。
横内悦夫さんという稀代のエンジニアによって生み出され、全日本やアメリカAMAなど、世界を股にかけたヨシムラのレース活動で伝説的な存在となった油冷GSX-Rだが、登場から40年近くが経過し、さすがに純正部品の供給が悪化している。そのリプロダクトにヨシムラが乗り出すというのだから…油冷オーナーにはこれ以上ないほどのビッグニュースだろう。
これは東京モーターサイクルショー3日目、3月24日にヨシムラブースで開催されたトークショーで発表されたもの。登壇した加藤社長は「油冷GSX-Rはヨシムラファンを育ててくれたとても大事な存在。しかし純正パーツの価格が高騰したり、手に入らないため車両を手放さざるを得ない…といった話を数多く聞く。これはヨシムラが恩返しできるいい機会だと考えた」と語り、今後も油冷GSX-Rを走らせ続けるために必要な純正互換パーツを製作・販売する考えを明らかにしたのだ。
具体的な動きはこれからとのことだが、まずは油冷GSX-Rの初期型、750であれば1985〜1987年式、1100なら1986〜1988年式に対応するパーツから着手していく予定とのこと。既にスズキとも連携を取っており“できることは最大限協力する”と言われているそうだから頼もしい限りだ。
【スズキGSX-R750(1985)】スズキのワークス耐久レーサー・GS1000Rのリアルレプリカとして誕生した初代GSX-R750。100ps(輸出仕様)を発揮する油冷エンジンを750ccクラス初のアルミフレームを採用した176kg(乾燥)の超軽量車体に搭載。750ccクラスにもレーサーレプリカブームを呼ぶきっかけに。
【スズキGSX-R1100(1986)】750登場の翌年に登場した当時のスズキ・フラッグシップ。750よりもひと回り太いアルミパイプを使った車体には197kgと、当時のリッタークラス車より20〜30kg軽量。1052ccの油冷エンジンは130psを発揮。
あの“ヨシムラ・コンプリート”が油冷で還ってくる?!
ヨシムラは今回の東京MCショーの展示車両として、1986年のデイトナ200マイルに参戦したGSX-R750レーサー(辻本聡車)のレプリカを製作している。足回りなどを現代のパーツで再構成しつつも当時の雰囲気を維持した、非常にセンスのいいカスタムが施されていたが、この車両の製作は純正部品の供給状況を知ることも目的だったという。
超グッドルッキンなコイツが買える?!
ヨシムラが東京モーターサイクルショーに展示した「GSX-R750レーサーレプリカ”604”」。フレームの補強など、一見1986年のデイトナ200に参戦した車両そのものに見えるが、前後オーリンズ改のサスペンションやビトーR&D製ホイールなど、現代のパーツで武装したカスタムマシンだ。マフラーやステップも今回の604(=辻本さんがデイトナに参戦した際のゼッケン)専用品を新造している。コンプリート販売を意識し、ミラーや超小型のウインカーなど公道仕様として仕上げられているのもポイント。
どんなパーツを復刻するかはこれから検討していくことになるが、油冷オーナーとしてはそこが最も気になる部分だろう。加藤社長にインタビューしたところ、ヨシムラが得意とするエンジンパーツ類はもちろん、旧車ユーザーが最も望んでいるであろう、外装パーツの復刻まで構想に入っているというから驚かされる。
これには理由がある。今回ショー用に作成したデイトナ200レプリカの出来栄えには加藤社長も自信満々で「ユーザーの希望があれば、いずれはこの車両と同じような、油冷GSX-Rをベースとしたコンプリート車の販売も行っていきたい」と考えているからなのだ。
ヨシムラ・コンプリート…。この甘美なコトバにどれだけのライダーが憧れたことか。1987年のトルネード1200ボンネビルを筆頭に、2000年の隼X-1、その翌年のカタナ1135Rといった伝説に連なるマシンが、なんと令和の世に、しかも油冷GSX-Rをベースに蘇るとなれば…。筆者、もうチビってしまいそうです(笑)。ともあれヨシムラがコンプリート車を作るとなれば、綺麗な外装パーツが必要になるのは当然だ。
【ヨシムラ トルネード1200ボンネビル(1987)】GSX-R1100をベースとするヨシムラ初の公道仕様コンプリート。排気量を1108ccにアップし、ボンネビルST-2カムやヨシムラミクニTM40キャブ、チタンサイクロンなどで武装したエンジンは180psを発揮。1987年に3台が生産された。
ちなみにヨシムラでは今回の750のほか、1100も既に購入しており、エンジンやフレームといった部品も入手済み(中にはヤフオクで購入したものもあるとか)。このプロジェクトに専門的に関わる“ヘリテイジチーム”もすでに組織したと聞けば、その本気度がヒシヒシと伝わってくる。
困っている油冷ユーザーにできる限りのサポートを
叔父である吉村不二雄氏を継ぎ、ヨシムラジャパンの3代目社長に就任した加藤陽平氏。今までもヨシムラのレース監督を務めていたが、POPや不二雄氏同様、レースの陣頭指揮を採る人物が会社の代表に就くことになる。
とある油冷GSX-Rユーザーがどうしてもクランクシャフトが必要で、スズキに問い合わせたところ、見積もりは出してくれたものの価格はなんと70万円…。個人的には見積もりだけでも出してくれるスズキというメーカーの優しさを感じるが、油冷GSX-Rの部品供給は今、そんな状況なのだという。引き続き加藤社長に話を聞いた。
「そうした困っている油冷ユーザーさんに対し、ヨシムラとしてできる限りのことはしたいと思っています。部品がなくて乗り続けられない、手に入らないって状況は解消したいですね。スズキさんも廃盤にしたくてしているわけじゃないので“ヨシムラができるならやって欲しいし、そのためには最大限の協力をする”と言われています」
「なので製作のハードルはかなり下がっていて、あとは我々がサプライヤーを開拓すればいい(編集部注:図面や寸法の情報を出して貰える?)。価格はやってみないとわかりませんが、コストが同じとしても、我々がやったほうがメーカーさんより低くできるかもしれません。スズキさんで廃盤になりそうな部品もその前に連絡をもらい、新しいサプライヤーを見つけるまでに必要な数をヨシムラの予算で確保するとか。そうしたことも考えています」
「理想を掲げないと何も出来ないので、責任を持ってやるためにも、今回あえてトークショーで宣言しました。(外堀を埋めたということ?) そうです(笑)。将来的に見ればハヤブサなども同じ状況に陥っていくはずですから、そこにも繋いでいきたい。スズキさんとはいい関係なので、今のうちに色々なものを進めておきたいと考えています」
ちなみに今回のプロジェクトは油冷GSX-Rのレジェンドである辻本聡さんにも協力してもらう予定。辻本さんご本人もトークショーで「自分も1986年式の限定車(乾式クラッチのGSX-R750R!)を持っているが、今乗っても本当に性能がいい。ヨシムラさんが油冷パーツを作ってくれるという安心感、これはオーナーとしても非常に嬉しい」と語っている。
加藤社長はEWC(世界耐久選手権)に参戦するヨシムラSERTモチュールチームの監督も兼任しており、4月20日にはフランスのル・マンで開幕戦を迎える。“油冷プロジェクト”が具体的に動き出すのはその後の5月頃からだろうか。7月の鈴鹿8耐で何がしかの発表があればワクワクするが・・・さすがに難しいかな?
ヤングマシンもいっちょ噛みしたいっ!!
このプロジェクトに前のめりになるのは辻本さんだけじゃなく、我々ヤングマシン(というより筆者かな?)だって一緒。進捗についてはヨシムラからの発表を随時レポートしていくとして、もっと何というかこう、いっちょ噛みさせて欲しいのです(笑)。
加藤社長は「どんなパーツが望まれているのか、何がなくて困っているのか。今はユーザーの声が聞きたい」との事なので…ヤングマシンで勝手にアンケートを取ることにしました(笑)。下のリンクからあなたの欲しい油冷GSX-R用パーツを投票してください。確実にヨシムラさんに届けますので!!
そんな筆者が欲しい油冷GSX-Rパーツは…ボンネビルカウルとヨシムラニッシンのブレーキキャリパー、この2つかな!!(←純正パーツじゃないじゃん!)
〈動画〉3月24日・ヨシムラトークショーの様子
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