
XSR125の正式発表で出揃ったヤマハ125ccの3兄弟。この機会に、XSR125、YZF-R125(およびR15)、そしてMT-125にイッキ試乗できるメディア向け試乗会が開催されたので、天然のヤングマシン脳を持つと言われる”ミヤケン”がレポートをお届けする。エキスパートの丸山浩さんによるインプレッション(ヤングマシン1月号に掲載!)とは異なる切り口で、フルサイズ125ccを大いに語る!
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヤマハ
YZF-R7似のデザイン、YZF-R25超えのアグレッシブさ
どれも個性的ななスタイルを持つヤマハ新型フルサイズ125の中で、もっともスポーティな存在感を放っているのがYZF-R125だ。フルカウルをまとったその姿はバイファンクションLEDヘッドライトや睨みの利いたLEDポジションランプを持ち、テールカウルも吹き抜け構造となっているなどパッと見は兄貴分のYZF-R7と瓜二つ。そのクラスを超えた雰囲気には、思わず「おぉ、カッコェェェ!」と声が漏れてしまった。
ライディングポジションにもそのYZF-RシリーズのDNAが色濃く反映されている。ハンドルもワイドで横一直線のような感覚だったXSR125やMT-125とは対照的に、セパレートハンドルとなるYZF-R125は絞り角がかなり強めでタレ角もそれなりについているというヤル気仕様。しかもトップブリッジは専用で肉抜き加工まで施されている。この低くなったハンドルに加えてシート高が815mmとXSRやMTより5mm高くなっているのとステップも別設計でグッと後方に下がっているので、かなり後ろが高くて前傾姿勢も強めとなり、まるでYZF-R1やR7をそのまま小さくしたかのような気分を味わわせてくれる。
同じYZF-Rシリーズでも普段の街乗りを大きく意識した設定のYZF-R25と比べると、ずいぶん思い切ったライポジだ。だが、YZF-R125ならではのユニークな部分はここから。これだけ本格スーパースポーツらしいライポジだと必然的に普段使いが不便になるはずなのだが、そこを141kgという超軽量な車重がカバー。それにシート高はXSRやMTより高いのにシート前方がうまく絞り込まれているので両足の腹までと接地すると、実はYZFの方が足着き性では優れていたりする。おかげで狭いところで跨ったまま車両の向きを変えるのもさほど苦にならない。
思い切り伏せて攻めることができるサーキットにも対応した本格SSライポジでグッと絞られたセパハンが印象的。250のR25より断然アグレッシブだ。足着きも両足ベタベタだったR25より、こちらはかかとが浮くようになるが、ヤマハ新型125のうちでは最も良かった。【身長165cm/体重55kg】
実はヤマハが一番のターゲットとして考えているのはコアなサーキット志向ユーザーではなく、スーパースポーツのスタイリングに憧れながらもメインは街乗りという普通のユーザー。たしかにこれだけ取り回しが楽だと、せっかくフルカウルなのに「街中用じゃあ妥協した部分があっても仕方ないよなあ」と残念感を覚えることなく、本物気分にひたることができる。
クイックシフターが実戦気分を高める
さて、試乗前にヤマハが考えるメインターゲットの話を聞いていたので、走りはそれなりなんだろうなと正直なところ舐めていた。ところが、そちらもなかなかどうして。どんどん攻めたくなって仕方がなく、途中で持参していたレーシングスーツに着替えたかったほどだ。
本格SSの前傾ライポジはフロントにしっかり荷重をかけたコーナー進入がしやすく、ホールド性に優れたタンクと高い位置にあるステップがフルバンクに持ち込む一連の動作をサーキットライディングのセオリーどおりにサポート。個人的にはストレートで思い切り伏せやすいようにタンク・シート・ハンドルの形状や位置関係もちゃんと考え抜かれた様子なのにも感動した。街乗りメインで作られたバイクだと思いきり伏せるのはけっこう大変だったりするのだ。
ハイグリップタイヤを履かせたくなるっ!
エンジンは出力・特性ともにXSR125やMT-125と基本的には変わらずでスポーツ走行にも十分対応。ほぼゼロ発進に近いところから一気に全開にしても可変バルブのVVAが利いて下から上までスムーズな吹け上がりを見せてくれる。このYZF-Rのみオプションでアップ方向のクイックシフターが装着可能となっており、より実戦気分が味わえるのも特徴だ。
また、このYZF-R125には車体共通のままボア径を6mm拡大して4psアップ&155ccとした兄弟車のYZF-R15も存在。そちらにも試乗したが、これが一段と良かった。特に速度が最も落ちるヘアピンの旋回ではマシンを前に押し出す方向へかかるトラクションでグリップ感が増し、安心感につながるのを顕著に感じた。R15は車体ディメンションに加えて車重までもR125と同じだから難しくなる部分はない。免許や税金・保険区分などに困らないなら、安心感が高まり高速道路も走れるR15の方を個人的には推したい。
街乗りしやすいけど、それだけじゃもったいない!
装備面ではR125/R15専用に作られたデジタルメーターも印象的で、モノクロ液晶ながらレイアウトはSTREETモードとTRACKモードの2つを用意。TRACKモードではタコメーターが6000rpmからとなりラップタイマー機能もあると、やっぱり妥協しない本格SS仕様となる。オン/オフ選択が可能なトラクションコントロール機能については雨天や滑りやすい路面で加速するときの後輪スリップ抑制を目的とした公道安全用で、ABSとともに急激なコーナリング対応やフロントホイールのスリップ抑制といったスポーツ向けの性能は備えていないものの、普段の街乗りでは有りと無しだと気持ち的に余裕が違う。
総じてレーシングマシンに乗るような気分を最も手軽に味わわせてくれると感じさせてくれたYZF-R125&R15。実際に手に入れたとすると、やがて早い段階でサーキットを体験してみたくなるのではないかと思う。それほどの魅力にあふれている。一番のターゲットは街乗りライダーとしつつも、これで彼らをスポーツライディングの奥深い世界に誘おうと考えているヤマハの本音を垣間見た気がした。
今回の125cc兄弟の中で唯一、155cc版もラインナップされるのがYZF-R。ヤマハの心意気を感じずにはいられない!
YAMAHA YZF-R125 のスタイリング
YAMAHA YZF-R125 / YZF-R15 のスペック
車名 | YZF-R125 ABS | YZF-R15 ABS |
認定型式/原動機打刻型式 | 8BJ-RE45J/E34LE | 8BK-RG86J/G3U4E |
全長×全幅×全高 | 2030×725mm×1135mm | 1990×725mm×1135mm |
軸距 | 1325mm | ← |
最低地上高 | 170mm | ← |
シート高 | 815mm | ← |
キャスター/トレール | 25°30′/88mm | ← |
装備重量 | 141kg | ← |
エンジン型式 | 水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ | ← |
総排気量 | 124cc | 155cc |
内径×行程 | 52.0×58.7mm | 58.0×58.7mm |
圧縮比 | 11.2:1 | 11.6:1 |
最高出力 | 15ps/10000rpm | 19ps/10000rpm |
最大トルク | 1.2kg-m/8000rpm | 1.4kg-m/7500rpm |
始動方式 | セルフスターター | ← |
変速機 | 常時噛合式6段リターン | ← |
燃料タンク容量 | 11L | ← |
WMTCモード燃費 | 49.4km/L(クラス2、サブクラス2-2、1名乗車時) | 50.2km/L(クラス2、サブクラス2-2、1名乗車時) |
タイヤサイズ前 | 100/80-17 | ← |
タイヤサイズ後 | 140/70-17 | ← |
乗車定員 | 2名 | ← |
価格 | 51万7000円 | 55万円 |
色 | 青、灰、黒 | ← |
発売日 | 2023年10月16日 | ← |
YAMAHA YZF-R125 のディテール
セパレートハンドルを採用し、トップブリッジはシリーズ共通イメージの大胆な肉抜きを施したもの。レイヤードカウルに設けられたエアスクープなど、ディテールもしっかりYZF-Rのそれ。
顔面はLEDバイファンクショナルヘッドライトによるモノアイ顔と鋭い眼光のポジションライトを組み合わせ、テールもYZF-R7などのビッグブラザーを思わせる造形。ウインカーはオレンジバルブとクリアレンズの組み合わせだ。
車体色は左から、ディープパープリッシュブルーメタリックC、ダークブルーイッシュグレーメタリック9、ブラックメタリック1。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ヤマハYZF-R125を購入したい! 車両販売情報はこちら
ヤマハYZF-R15を購入したい! 車両販売情報はこちら
あなたにおすすめの関連記事
免許取得前にエントリーし、対象モデルを新車で購入すればサポートが得られる ヤマハのスポーツバイクを販売する正規ディーラー「YSP(YAMAHA MOTORCYCLE SPORTS PLAZA)」は、こ[…]
XSR125よりもスポーティで凝縮感のあるライディングポジション ヤマハの新型フルサイズ125シリーズのひとつとして11月に登場したのがスポーツネイキッドのMT-125だ。エンジンやフレーム、サスペン[…]
バイクの本当の楽しさを教えてくれるのがフルサイズ125 「あの山の先まで行ってみたいなあ……」。高校生の頃の僕は、窓の外はるか彼方に連なる丹沢山系を眺めて授業もろくすっぽ聞いていない、そんな生徒だった[…]
ヤマハ新世代125cc/155ccの先鋒が兄弟そろって登場! ヤマハは、今春のモーターサイクルショーに市販予定車として出展した4車のうち、「YZF-R125」「YZF-R15」を正式発表。大型バイクや[…]
※2023年12月14日更新 125ccクラスは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、[…]
最新の関連記事(新型原付二種 [51〜125cc])
「走る」を変える次世代の相棒 一般的なガソリンバイクが燃料を燃焼させてエンジンを駆動するのに対し、電動バイクはバッテリーに充電した電気でモーターを回して走行する。そのため、排気ガスを一切排出しない、環[…]
ピカイチの快適性を誇り、タンデムユースも無理ナシ ようやく全日本JーGP3の開幕戦が近づいてきて(記事制作時)、最近はバイクに乗るトレーニングもスタート。 筋力が増えたことで、これまで苦手だった車種で[…]
コスパも高い! 新型「CUV e:」が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者(北岡)は“EV”全般に対して懐疑的なところがある者です。カーボンニュートラル[…]
スマホ連携TFTやスマートキー装備のDX ホンダがミラノショーで発表した2025年モデルのPCX125(日本名:PCX)。2023年には欧州のスクーターセグメントでベストセラーになった同車だが、日本で[…]
WMTCモード燃費×タンク容量から航続距離を算出してランキング化 この記事では、国内4代バイクメーカーが公表しているWMTCモード燃費と燃料タンク容量から算出した1給油あたりの航続可能距離を元に、12[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
8/1発売:ロイヤルエンフィールド「ハンター350」 2025年8月1日より受注を開始するのが、ロイヤルエンフィールドの新型「ハンター350」だ。注目すべきは、従来モデルから5万円以上の値下げが敢行さ[…]
ヤマハ版ハンターカブ「PG-155」の可能性を探る アジアで話題沸騰のヤマハ「PG-1」はキャブレター仕様のため、日本の排出ガス規制が壁となる。そこでヤングマシンは「PG-155」という上位グレードの[…]
今年の8耐レーサーYZF-R1&1999 YZF-R7フォトブース 6年ぶりに鈴鹿8耐へファクトリー体制での参戦を果たすヤマハ。それもあってか、今年の8耐は例年以上の盛り上がりを見せている。 会場のヤ[…]
“モンスターマシン”と恐れられるTZ750 今でもモンスターマシンと恐れられるTZ750は、市販ロードレーサーだったTZ350の並列2気筒エンジンを横につないで4気筒化したエンジンを搭載したレーサー。[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒の「ニンジャZX-R」、2気筒「ニンジャ」計6モデルに10色を新設定 カワサキは欧州でフルカウルスポーツ「ニンジャ」ファミリーのうち、4気筒モデル「Ninja ZX-6R」「Ninja ZX-4[…]
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
ピカイチの快適性を誇り、タンデムユースも無理ナシ ようやく全日本JーGP3の開幕戦が近づいてきて(記事制作時)、最近はバイクに乗るトレーニングもスタート。 筋力が増えたことで、これまで苦手だった車種で[…]
50ccでも実用カブとは別系統のOHCスポーツ専用エンジンを開発! ホンダは1971年に、50ccではじめてCBの称号がつくベンリイCB50を発売した。 それまで50ccにもスポーツモデルは存在したが[…]
最新の投稿記事(全体)
歩行者が消える?超危険な「蒸発現象」による事故を防ぐ方法 2024年10月、岡山県内の道路である現象が原因となる交通事故が起きました。横断歩道を渡っていた高齢の女性をクルマがはねた、という事故です。ク[…]
2025年6月16日に83歳になったアゴスティーニのスペシャル仕様 MVアグスタは欧州で、同ブランドが2025年で創立80周年を迎えるとともに、Agoことジャコモ・アゴスティーニ氏が83歳の誕生日を迎[…]
今年の夏〜秋に走りたい、日本全国のおすすめ「ツーリングロード100」 今回、新たにヤングマシン”D”(電子版)に新規で掲載(追加)された特別ページとは、「TOURING ROAD by YMD 100[…]
バイク用ヘルメットに特化した消臭・除菌機 MAXWINの「MUFU MF-C1」は、バイク用フルフェイスヘルメットなどの小空間に特化したオゾン除菌/消臭機で、ニオイのこもりやすいヘルメット内を15分〜[…]
全天候に対応! 防水仕様の高機能バックパック アールエスタイチの「WPカーゴバックパック RSB283」は、急な雨でも安心な防水気室を2つ搭載。メイン収納とフロントポケットの両方に防水加工が施されてお[…]
- 1
- 2