佐藤ことぶきのレース通信

【日本GP】日本人チャンピオンを期待させるMoto2/Moto3、しかしMotoGPクラスはドゥカティが支配

ロードレース世界選手権(MotoGP)第14戦日本GPが週末に開催された。主役となったのは、スプリントレースに続き、ヘビーレインとなった決勝も制した#89ホルヘ・マルティン。ワークスと同じカウルにしてから調子は上向き。この勢いでタイトルを獲得できるか!?


●文/写真:ヤングマシン編集部(佐藤寿宏)

ヘビーレインとなったMotoGPクラスを制したのはマルティン!

コロナ禍開けのMotoGP日本グランプリは、日本車勢の苦しい現状を目の当たりにしました。新フォーマットで今シーズンから行われているスプリントレースでは、ホルヘ・マルティンがキレのある走りで勝利。KTMのブラッド・ビンダーが2位、フランチェスコ・バニャイアがジャック・ミラーとの3位争いを制してゴール。日本車勢では、マルク・マルケスが5番手を走っていましたが、マルク・ベセッキに突かれ、ヨハン・ザルコにもかわされ7位という結果でした。ヤマハファクトリーにいたってはファビオ・クアルタラロとフランコ・モルビデリがランデブーで15、16位という低迷ぶりでした。

12周で争われたスプリントレースは、ドライコンディション。本日の主役マルティンが速さを見せた。

スプリントレースの結果を受け、日曜日の決勝でもマルティンが独走することが予想されました。しかし、朝もてぎに向かう道中で雨は本降りとなり、ウエットコンディションでのレースになれば、昨年雨でポールポジションを獲得したマルケスにチャンスが訪れるのでは? という見方もありました。

その後、雨は止み、この日、最初のレースとなったIDEMITS ASIA TALENT CUPのレース2は、ほぼドライコンディションで行われました。その後、MotoGPクラスのウォームアップがあり、Moto3、Moto2とドライでレースは進んでいきましたが、MotoGPクラスのスタートを前に雨がポツポツと降り始めました。あと少しもってくれれば、という願いもむなしく、レースがスタートします。ホールショットはポールポジションのマルティンが奪い、ミラー、ビンダーのKTM勢が続きます。後方では、行き場を失ったマーベリック・ビニャーレスとヨハン・ザルコが接触しコースアウト。ザルコはグラベルをうまく走りコースに戻りますが、ビニャーレスは転倒を喫してしまいます。

フラッグtoフラッグで乗り換えて出て行くライダーたち。なかなかのカオスな光景でもある。

スタート直後にマシンの乗り換えが可能となるホワイトフラッグが提示され、オープニングラップで、ほとんどのライダーがピットに入り、スリックタイヤからウエットタイヤを履いたマシンに乗り換えました。ここでピットに入らなかったミケーレ・ピロがトップに立ち、クアルタラロ、ステファン・ブラドル、モルビデリ、カル・クラッチロウと続きますが、その後雨足は強くなり、明暗が分かれる結果となります。

一時は6番手までポジションを落とした#89マルティンはここから追い上げる。

実質のトップにはマルティンが立ち、アレイシ・エスパルガロ、マルケス、ベセッキ、バニャイアと続いていきます。まだ路面が完全に濡れるところまでいかない状態では、アレイシがトップに立ち、マルケスが2番手と経験値の高いライダーが前に出ていました。しかし、マルティンはペースをつかむと、あっと言う間にトップに立ちレースをリード。その後、レースも折り返しとなる13周目に雨足が強くなりザルコがセカンドアンダーブリッジ先の左高速コーナーで転倒。マルケスやバニャイアも中断をアピールし赤旗が提示されます。

レースは残り12周でクイックリスタートで再開されますが、ウォームアップラップで再び赤旗が提示され、そのままレース成立となりました。この結果、マルティンが優勝し、バニャイアが2位となったことで、両者のポイント差は3に縮まりました。

「すごく難しいコンディションでした。一時は6番手に下がりましたが、電子制御がうまくいったので、普段は苦戦しているウエットでも強い走りができました。再スタートは、雨が強いままでしたし“なんでレースを再開するんだ?”と思っていたので、中止にしてくれてよかったです。勝てた実感はありませんが、フルポイントついたことが重要です」とマルティン。

マルケスは、今シーズン初表彰台。ウエットコンディションなら腕で前に来るが、それでも3位が精一杯なところが苦しいところ。

3位にマルケスが入り、今シーズン、フルレースでは初表彰台となりました。中上貴晶は11位となっています。

IDEMITSU Honda Team Asiaが1-2フィニッシュ。チャントラは久しぶりの優勝を飾った。

Moto2、Moto3では小椋藍と佐々木歩夢がそれぞれ2位

Moto2クラスでは、小椋藍が昨年に続く2連覇が期待されましたが、レースウイーク中は体調を崩していました。決勝日に、かなり回復しましたが、チームメイトのソムキアット・チャントラの好調ぶりには追いつけませんでした。それでも2位に入り、会場のファンを沸かせてくれました。青山博一監督率いる、IDEMITSU Honda Team Asiaが1-2フィニッシュを飾りました。

「スタートで出遅れてしまい、2番手に上がったときはチャントラとの差がついてしまっていました。そこから追いつこうと頑張りましたが届きませんでした。ホームグランプリなので、必ず表彰台に上がろうと思っていましたし、チャントラが速かったので今回は2位で満足です」と小椋。

羽田太河は19位、野左根航汰はヘアピンで転倒。再スタートしますが、そのままピットインしリタイアしています。

Moto3クラスは、ジャウマ・マシアが優勝。2位争いは佐々木歩夢とダニエル・オルガドの一騎打ちとなり、最終ラップのビクトリーコーナー立ち上がりでリアタイヤをスライドさせたオルカドを逆転した佐々木が、このバトルを制しています。佐々木は、来シーズン、ヤマハ契約でCorreos Prepago Yamaha VR46 TeamからMoto2にステップアップすることを発表。現在、暫定ランキングではトップのマシアと6ポイントの2位となっているだけに、Moto3のタイトルを引っさげてMoto2に行きたいところでしょう。

来シーズンからMoto2クラスにスイッチすることを発表した佐々木歩夢。世界チャンピオンを獲ってステップアップしたいところだ。

シーズン後半戦に入ったとはいえ、まだ6戦もあるMotoGP。日本人チャンピオンの誕生にも期待しましょ!

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