
’80年代を通じて過熱し続けたレーサーレプリカブーム。このスペック至上主義の時代には、わずか1馬力の差がマシンの命運を分けることもままあった。本記事では、流行のさなかに現れて堂々のトップセールスを記録したストリートモデル、カワサキのGPZ400Rを取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
ナナハン並みの極太リヤタイヤに見惚れた〈カワサキ GPZ400R〉
レーサーレプリカブーム真っ只中の’85年。技術の進化に伴い、各社はレースで培ったテクノロジーをフィードバックさせたモデルを多く打ち出していた。
GPZ400Rもその渦中に生まれたモデルではあったが、開発コンセプトはレプリカではなく、あくまでもストリート路線。位置付けとしては、前年に登場し、世界最速のスポーツモデルに君臨したNinja GPZ900Rのミドル版となる。
エンジンは、輸出向けのGPZ600Rをベースとした新設計の水冷DOHC4バルブ4気筒。600がスチール製フレームだったのに対し、X字を描く独特な形状のアルミ製フレームを新開発した。ライディングポジションもアップハンドルに低シート高と公道向けの設定だった。
既にGSX-RやFZら軽量なレプリカコンセプトのライバルは存在したが、カワサキは車重にこだわらず、独自の重厚路線を突き進んだ。乾燥重量176kgは重く、スペック的には不利だったものの、大柄なボディやナナハン並みの130mm幅リヤタイヤなどの堂々たるフォルムに人気集中。’85~’86年、2年連続でベストセラーを記録した。
後継のGPXが登場した後もGPZの人気は高く、’89年型まで継続生産された。流行に左右されず信念を貫いた好例と言えるGPZ。そのコンセプトは後のZZRにも受け継がれる。
【’85 KAWASAKI GPZ400R】■水冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 398cc 59ps/12000rpm 3.6kg-m/10500rpm ■176kg ■タイヤサイズF=100/90-16 R=130/90-16 ●当時価格:62万9000円 [写真タップで拡大]
【空力追求、前後16インチ】前面投影面積を抑え、驚異的な空力性能を誇るカウリング。CdA値はクラス最少の0.29を誇る。またロード系初の前後16インチホイールで低重心化を促進。小径で太いタイヤが新鮮だった。 [写真タップで拡大]
カワサキ GPZ400Rの系譜
’85 カワサキ GPZ400R:独自路線に踏み出す
’89 カワサキ GPZ400R:GPXのメカを投入
カワサキ GPZ400R 派生モデル
カワサキ FX400R:スパルタンイメージで人気
カワサキ GPX400R:ダブルクレードルの進化版
カワサキ GPZ250R:スタイリッシュなニーゴーニンジャ
カワサキ GPX250R:メカは進歩したが…
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