
昭和50年代は、免許制度の改正により人気が中型に集中し始めた時代だ。ここではレプリカブーム以前、中型黎明期のヒット作を紹介。今回はヤマハRZ250とRZ350だ。 ※ヤングマシン2009年9月号より
●文:ヤングマシン編集部 ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
あの頃の中型 青春名車録「2ストの台頭」(昭和55年)
1970年代(昭和45年~)、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共通化されるのが普通で、多くのモデルに350ccや400ccの上級モデルが存在していた。そのため、どうしても格下グレードの印象が拭えず、250ccは魅力に乏しかったのだ。2ストロークにも逆風が吹いていた。
’70年に米国で制定されたマスキー法に倣い、日本でも’78年(昭和53年)に排ガス規制が施行。2ストは軽量で加速性能に優れるものの、クリーン性能では明らかに不利だった。そんな時代背景だったが’79年(昭和54年)の東京モーターショーにRZ250は鮮烈デビューを果たした。レーサーの技術をダイレクトにフィードバックするというレプリカの手法で登場した公道版TZに人気が殺到、見事に2ストが返り咲いたのだ。
RZ250の試乗車は’82年型(昭和57年)で動画のテスターは丸山浩さん。
RZ350の試乗車は’81年型(昭和56年)でテスターは同じく丸山浩さん。
【YAMAHA TZ250 1976年(昭和51年)】’62年から発売が始まったTD/TZシリーズは、数多くのライダー/チューナーを育てた市販レーサーで、’60~’90年代の世界GPには数多くのTD/TZシリーズが参戦していた。当初は空冷だった2サイクルパラレルツインが、水冷化されたのは’73年(昭和48年)から。RZにはこの技術が投入された。
YAMAHA RZ250/RZ350
’80年(昭和55年)に発売されたRZ250は、ロードレーサーTZ250をベースにした2スト水冷パラツインに量産ロードモデル初のモノサスを搭載。常識外れのハイスペックに発売当初から注文が殺到した。リッター換算140psのハイパワーと俊敏なシャーシが生み出す速さは強烈かつピーキーで、「事故率ナンバー1」「初心者には無理」と言われながら、ヒット街道を驀進。そして翌’81年(昭和56年)には+10psとフロントダブルディスクを与えたRZ350を追加。痛快な加速でナナハンキラーの異名を誇り、大型ライダーが敢えて乗り換える例もあった。RZ以降、各社から2スト250が投入され、250ブームが到来。また、レーサー譲りの技術をダイレクトに反映させる手法は、後のレーサーレプリカの先駆けとなった。RZはバイク史を塗り替えた、記念碑的なモデルなのである。
主要諸元■全長2080 全幅740 全高1085 軸距1355 シート高790[785](各mm) 車両重量139[143]kg(乾燥)■水冷2スト並列2気筒ピストンリードバルブ247[347]cc 35ps/8500rpm[45ps/8500rpm] 3.0kg-m/8000rpm[3.8kg-m/8000rpm] 変速機6段リターン 燃料タンク容量16L■ブレーキF=ディスク[Wディスク] R=ドラム■タイヤF=3.00-18 R=3.50-18■新車当時価格35万4000円[40万8000円]
【YAMAHA RZ250 1980年(昭和55年)8月】最初にデビューしたのは250。カラーリングはニューパールホワイト。
【YAMAHA RZ250 1980年(昭和55年)8月】初代RZ250のもう一色はニューヤマハブラック。
【YAMAHA RZ350 1981年(昭和56年)3月】約半年遅れて350がデビュー。カラーリングはヤマハホワイトだが、ゴロワーズカラーと呼ぶのが一般的だ。
【YAMAHA RZ250 1982年(昭和57年)】’82年型は250と350のカラーリングを共通化しグラフィックは3本線となった。写真はニューヤマハブラックで250。
【YAMAHA RZ350 1982年(昭和57年)】’82年型は250と350のカラーリングを共通化しグラフィックは3本線となった。写真はヤマハホワイトで350。
【YAMAHA RZ350 1982年(昭和57年)】’82年は250、350ともにチャピイレッドのYSPリミテッドバージョンも用意された。写真は350。
【YAMAHA RD250/350LC 1980年】海外仕様はRDの名称でLC=Liquid Cooled(水冷)の略。写真は350。
【YAMAHA RD250/350LC 1981年】海外版で写真は250。
【YAMAHA RD250/350LC 1982年】海外版で写真は350。
「あの頃の中型 青春名車録」はパート1~5までの連載で、中型モデルが輝き始めた昭和50年代の人気車を5回に分けて動画とセットで紹介していく。「自二車は中型二輪に限る」と運転免許証の条件に記載された最初の世代に送る「あの頃」のバイク特集だ。
動画はこちら↓
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
昭和50年(1975)10月1日に免許制度が改正され、401cc以上のバイクに乗るためには大型免許(=限定なしの自動二輪免許)が必要になった。しかも、大型免許は教習所で取得することができなくなり、運転[…]
YZR500の血を受け継いだ1983年のRZ250R/RZ350Rが元ネタ? ワイズギアは、大阪モーターサイクルショーで初公開したばかりのカウルセットを早くも2023年6月に発売すると発表した。なかで[…]
円安や物価の高騰を受け、価格は6万6000円上昇 ヤマハは、スポーツヘリテイジ「XSR」シリーズの2気筒モデル「XSR700 ABS」2023年モデルを発表。折からの為替変動や各種原材料等の高騰を受け[…]
'23 ヤマハXSR125 先に登場したYZF-R125から、124ccの水冷単気筒エンジン/スチール製のデルタボックスフレーム/37mm径の倒立フロントフォークといった基本要素を受け継いだXSR12[…]
革新的な機構を導入したレプリカブームの先駆車 「2ストロードスポーツの歴史は、"RZ以前"と"RZ以後"に分類される」などと断言すると、世の中には異論を述べる人がいそうだが、’70年代後半に消滅の危機[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
Zを知り尽くしたエンジニアならではの勘ドコロを押えた絶品設計! 1989年のゼファー(400)が巻き起こしたネイキッド・ブーム。 カワサキはこの勢いをビッグバイクでもと、1990年にゼファー750と1[…]
ザッパーシリーズの多種多様な展開 トータルでの歴史は30年以上に及ぶザッパーシリーズだが、その存在意義は’80年代以前と’90年代以降で大きく異なっている。まず’80年代以前の主力機種は、クラストップ[…]
ヤマハ・ハンドリングの真骨頂、パイプ構成では得られないデルタ形状アルミ鋼板フレーム! 1980年に2スト復活を世界にアピールしたヤマハRZ250の衝撃的なデビューに続き、1983年にはRZ250Rで可[…]
RZ250を上回る新テクノロジー満載! 1979年にホンダがリリースした、まさかの2ストローク50ccスポーツのMB50(広告なでの名称はMB-5)。 250ccやビッグバイクのスケールダウン・デザイ[…]
現在に続くミドルクラスの基盤は日本メーカーが作った ’70年代の2輪業界における最大のトピックと言ったら、日欧のメーカーが歩調を合わせるかのように、ナナハン以上のビッグバイクを発売したことだろう。もっ[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
世界初公開! 3タイプのEVバイクが未来の二輪車シーンを牽引する!? 10月30日(木)から11月9日(日)まで東京ビッグサイトにて開催されている「ジャパンモビリティショー2025」。ヤマハのブースで[…]
欧州では価格未発表だが、北米では前年から200ドル増の9399ドルと発表 ヤマハは北米で新型「YZF-R7」を発表。欧州で発表された新型「R7」にモデルチェンジ内容は準じつつ、北米独自のカラーリングで[…]
2026モデルのモトクロッサーYZ450Fをベースに電動化 電動トライアルマシンの「TY-E」でFIMトライアル世界選手権EVクラスに参戦するなど、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みにも積極的な[…]
スポーツライディングの登竜門へ、新たなる役割を得たR7が長足の進化 ミラノで開催中のEICMA 2025でヤマハの新型「YZF-R7(欧州名:R7)」が登場した。2026年から従来のワールドスーパース[…]
YZF-R9、ついに国内正式発表! ヤマハは、クロスプレーン3気筒(CP3)エンジンを搭載した新型スーパースポーツ「YZF-R9」の国内正式導入を発表し、2025年10月30日に発売。ファンが待ち望ん[…]
人気記事ランキング(全体)
11/1発売:カワサキ Z250 カワサキ「Z250」はニンジャ250と骨格を共有するこの軽二輪スーパーネイキッドは、アグレッシブな「Sugomi」デザインを継承。軽さと力強さを併せ持つ本格的スーパー[…]
薄くても温かい、保温性に優れる設計 GK-847は、ポリエステル素材をベースとしたサーマル構造を採用しており、薄手ながらも高い保温性を実現している。厚手のウインターグローブの下に装着しても動きが妨げら[…]
厳冬期ツーリングで感じる“インナーの限界” 真冬のツーリングでは、防寒ジャケットやグローブを重ねても、冷えは完全には防ぎきれない。風を受け続ける上半身は体温が下がりやすく、体幹が冷えることで集中力や操[…]
長距離や寒冷地ツーリングで感じる“防寒装備の限界” 真冬のツーリングでは、重ね着をしても上半身の冷えは避けにくい。特に風を受ける胸や腹部は冷えやすく、体幹が冷えることで集中力や操作精度が低下する。グリ[…]
より高度な電子制御でいつでもどこでも快適な走りを!! 【動画】2026 CB1000GT | Honda Motorcycles ホンダがEICMA 2025にて発表した「CB1000GT」は、「Hi[…]
最新の投稿記事(全体)
世界初公開! 3タイプのEVバイクが未来の二輪車シーンを牽引する!? 10月30日(木)から11月9日(日)まで東京ビッグサイトにて開催されている「ジャパンモビリティショー2025」。ヤマハのブースで[…]
革新メカERC装備の本格アドベンチャー EICMA2024、そして今春の東京モーターサイクルショーでも展示された「Concept F450GS」が、EICMA2025で正式モデル「F450GS」として[…]
風のように静かで、1000㏄並みにトルクフル! ホンダは昨年のEICMA2024で「EV Fun Concept」を出展したが、今回のEICMA2025では「WN7」を発表。基本スタイルは踏襲するもの[…]
今回は、BMCの最新モデル「防風ジーンズ・ボア」2025年モデルがターゲットだ!! 先日、弊誌が「週刊○○」のようにBLUE MONSTER CLOTHING(以下:BMC)のローリー青野氏を追尾して[…]
点火トラブルって多いよね 昔から「良い混合気」「良い圧縮」「良い火花」の三大要素が調子の良いエンジンの条件として言われておりますが、それはそのまま調子が悪くなったバイクのチェック項目でもあります。その[…]
- 1
- 2






















































