
昭和50年代は、免許制度の改正により人気が中型に集中し始めた時代だ。ここではレプリカブーム以前、中型黎明期のヒット作を紹介する。 ※ヤングマシン2009年9月号より
●文:ヤングマシン編集部 ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
あの頃の中型 青春名車録「4気筒再び」(昭和54年)
それまで全盛を誇った2気筒のブームを収束させたのが、カワサキのZ400FX。CB400フォア以来途絶えていた待望の4気筒は、DOHCヘッドを採用し一気にナンバー1セールスを記録した。来るべき’80年代に向け、次期戦力機としてFXが投入されたのは、昭和54年(’79)の春。角張ったフォルムの大柄な車体はZシリーズの上級モデルを思わせ、発売されると瞬く間に中免ライダーを虜にしたのだ。
試乗車は改良版のE2で動画のテスターは丸山浩さん。
KAWASAKI Z400FX
昭和52年(’77)5月にCB400フォアの生産が終了後、400㏄クラスに4気筒モデルは不在だった。しかしそれは不要だったわけではなく、ユーザーは絶えずメーカーに要望の声を送り続けていたのだ。そして、その声に応えたのがカワサキだった。最高出力はクラス最強の43psを叩き出し、4気筒ならではのパワー を誇ったが、車重も乾燥で189kg(初期型)とズッシリ重かったため、必ずしも速いとは言えない面もあった。それでも、当時普及しつつあったキャストホイールに前後ディスクブレーキを備え、始動方式はセルのみとされたのも新時代の到来を感じさせた。
商品性の高さは、昭和57年(’82)に後継モデルのZ400GPが出てからも併売・再生産されたことからも明らかだった。もちろん、FXの登場以降は各社から4気筒のライバルが続々と登場し、’80年代の初めにかけてベストセラーを記録。これが起爆剤となって後の400cc市場は加速度的に急成長、発展を遂げたのである。なお、FXのエンジンとスタイリングは’80年代の終わりにゼファーへと受け継がれ、転生を果たしたのだ。
主要諸元■全長2100 全幅785 全高1125 軸距1380 シート高805(各mm) 車両重量189kg(乾燥)■空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ399cc 43ps/9500rpm 3.5kg-m/7500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量15L■ブレーキF=ディスク R=ディスク■タイヤF=3.25-19 R=3.75-18■新車当時価格38万5000円 ※昭和54年(’79)
【KAWASAKI Z400FX 昭和54年(1979)4月】欧州ではZ500として発売されたモデルの国内版E1。CB400フォアI/IIの生産終了の約2年後に発売された2番目の直4中免モデルだ。
【KAWASAKI Z400FX 昭和54年(1979)12月】動画の試乗モデルE2。後輪リムが2.15になり、ライト下にエンブレムを追加。価格も1万3000円アップした。
【KAWASAKI Z400FX 昭和55年(1980)10月】E3はヘルメットホルダーを標準装備。ストライプ入りの銀と黒を用意。7000円アップ。
【KAWASAKI Z400FX 昭和56年(1981)8月】E4はグラブバー、トランジスタ点火、セミエアフォークを採用。価格は3万円アップ。
【KAWASAKI Z400FX 昭和56年(1981)12月】500台のみが生産された希少な限定仕様E4A。Z1Rをイメージさせるビキニカウルの装着と、シリンダーなど各パーツに配色された赤が特徴的だ。
【KAWASAKI Z400FX 昭和57年(1982)12月】’82年秋の時点ですでに後継車となるZ400GPは完成していたものの、マニアからの熱心なラブコールに応えべく、カワサキは最後のZ400FXとなるE4Bを発売。
「あの頃の中型 青春名車録」はパート1~5までの連載で、中型モデルが輝き始めた昭和50年代の人気車を5回に分けて動画とセットで紹介していく。「自二車は中型二輪に限る」と運転免許証の条件に記載された最初の世代に送る「あの頃」のバイク特集だ。
動画はこちら↓
※本記事は2018年11月30日に公開した記事を再編集したものです。※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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