トライアンフ スクランブラー900 試乗インプレッション【流すだけで快感。これぞ傑作ツイン】

トライアンフで人気のモダンクラシックシリーズ。新色をまとった’23年モデルが早くも日本に上陸した。アップマフラーが特徴的なストリートスクランブラーは“スクランブラー900”へと車名を改めたが、’21年にユーロ5に適合しているので今回は車体色の変更のみ。改めて魅力に迫る。


●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:柴田直行 ●外部リンク:トライアンフ

トライアンフ スクランブラー900:感性を刺激する鼓動感。ハンドリングも絶妙だ

クラシカルな外観の水冷並列2気筒エンジンを搭載する、トライアンフのモダンクラシックシリーズ。排気量は1200ccと900ccに大別でき、中でも個人的にツインの傑作だと感じているのが後者だ。今回試乗した’23年モデルのスクランブラー900がこれを搭載しており、あらためて奥深い味わいを堪能した。

主要諸元■全高1180 軸距1445 シート高790(各mm)車重224kg ■水冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ 900cc 65ps/7500rpm 8.16kg-m/3250rpm 変速機5段 燃料タンク容量12L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=100/90-19 R=150/70R17

最もシンプルなスピードツイン900のキャストホイールをワイヤースポーク化し、フロントを18→19インチに。ハンドルやシート、ステップを変更してアップライトな乗車姿勢とし、右2本出しのアップマフラーを与えたのがスクランブラー900だ。装着タイヤはメッツラー・ツアランス。

【カラーラインナップ】試乗した赤×黒のほかジェットブラック/マットカーキを用意。価格はそれぞれ異なる。

エキゾーストパイプのヒートガードが足に触れるが、それでも足着き性は良好な部類に入る。アップライトでバランス良し。[身長175cm/体重68kg]

トライアンフ スクランブラー900:試乗インプレッション

走行モードはロード/レイン/オフロードの3種類で、ロードモードはやはり力強い。最高出力が65psとはいえ、900cc2気筒の加速力は伊達ではない。3250rpmという低い回転域で最大トルクを発生させるので、スロットルの開け方次第では突進と表現できるほどのスタートダッシュを見せる。

とはいえ、ツインらしい排気音とは裏腹に、体に伝わる不快な振動は少なく、回転上昇は極めてスムーズ。そして、そこに混じる脈動感が非常に味わい深いのだ。同じく270度クランクを採用する並列2気筒は多々あれど、この心地良さは唯一無二のものだ。

ハンドリングもいい。ベースであるスピードツイン900(旧名:ストリートツイン)との違いは、フロントのホイール径やライディングポジション、マフラーのレイアウトぐらいだが、これらがうまく作用し、往年のスクランブラーらしいハンドリングを構築しているのだ。

舵角の付き方はフロント19インチらしく穏やかで、バンク角主体で大らかに向きを変える。前後サスの動きはスムーズで、荒れた路面でも乗り心地が実にいい。これに気を良くして未舗装路に踏み込むと、224kgという車重が顔を出してくるが、シート高が低いという安心感もあって、ちょっとした冒険心が芽生えるのを自覚するだろう。

ブレーキは、雨の中でもコントロール性に不満はなく、ABSが介入したときのキックバックもライダーを慌てさせるものではない。オフロードモードにすればABSとトラクションコントロールがキャンセルされるので、自信のある方は積極的に使ってほしい。

車両価格は、継続のジェットブラックで3万9000円アップに。昨今の輸送コストの急騰などを考慮すると、良心的な価格と言えよう。

トライアンフ スクランブラー900 車両解説

トライアンフ スクランブラー900:エンジン

【’21年に規制対策済みだ】エンジンは900cc水冷SOHC4バルブ並列2気筒で、’19年に55→65psとなり、’21年にユーロ5をパス。’17年のデビュー時から電子制御スロットルを採用。ミッションは5段だ。

触媒ボックスを巧みに隠した右2本出しアップマフラーを採用。エンジンのフィンを削ることでスリム化を実現。

トライアンフ スクランブラー900:足まわり

【正立式フロントフォークはカートリッジ式だ】ブレーキディスクはフロントφ310mm/リヤφ255mmで、キャリパーはフロントが’19年にニッシンからブレンボへ。リヤはニッシンを継続する。KYB製のφ41mmカートリッジ式正立フォークとプリロード調整可能なリヤショックは、ともにホイールトラベル量120mm。両持ち式スイングアームは鋼管製だ。

トライアンフ スクランブラー900:主要装備

ヘッドライトはマルチリフレクターにハロゲン球を組み合わせたもので、ハウジング/ドリムともにブラック。ヘッドライトステーはʼ21年モデルでデザインを変更、前後ウインカーはクリアレンズ+オレンジバルブだ。テール&ブレーキランプはLEDだが、クラシカルな雰囲気をうまく演出している。

ワイドなアルミ製テーパーハンドルを採用する。左側スイッチボックスにはモード選択ボタンがあり、ロードとレインモードではスロットルマップとトラコンの設定が切り替わるほか、オフロードモードではトラコンとABSがオフに。トルクアシストクラッチの採用でレバーの操作力を軽減。

【メーターはコンパクトながらも多機能だ】液晶パネルは燃料計とギヤ段数を常時表示するほか、時計/回転計/積算計/距離計×2/瞬間&平均燃費/航続可能距離を切り替え表示する。操作スイッチはハンドル左側に設置。

燃料タンクは容量12Lを公称し、純正アクセサリーでニーパッドを用意している。

上面に滑りにくい表皮を使用したタックロールシート。ライダー側はキーロックにて取り外し可能で、中にUSB電源ソケットを設ける。

[△] スタイルに惚れたなら右足の熱さは我慢せよ

トライアンフのモダンクラシックシリーズは、ラジエターのレイアウトが影響しているのか、足元の熱さが共通する。スクランブラー900はさらにエキパイが右足に接近しているので、推して知るべし。外観に惚れたのなら我慢するしかない。

[こんな人におすすめ] 見た目と走りのマッチングはパーフェクトだ

できるだけステーやハーネスを隠すといった隙のないスタイリングと、そこから想起できるテイスティな走り。サウンドも含めて完璧にマッチしており、このシリーズが大人気なのも納得できる。


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