
’19年10月に発売されたカワサキのKLX230に、待望のローダウン仕様「S」が登場した。シートのアンコ抜きではなく、前後のサスペンションストロークの短縮によって車高を下げているのがポイントで、KLX230比でシート高は55mmもダウン。気になる走行性能への影響をチェックした。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:カワサキ
[◯] 足が届くという安心感。サスペンション設定も過不足なし
「闘う4スト」ことKLX250の生産終了から3年後の’19年10月。カワサキから久しぶりに発売されたトレールモデルがKLX230だ。新設計のエンジンは232cc空冷単気筒で、最高出力19psは水冷250cc勢より控えめだ。とはいえクローズドコース専用車のKLX230Rと同時に開発されただけあって、その実力はオフロードをハイペースで走るのに不足のないもの。ただ、それと引き換えに街乗りでの足着き性は非常に厳しく、このモデルにおけるほぼ唯一の短所となっていた。
今年2月に登場したこのKLX230Sは、前後のサスペンションストロークをほどよく短縮し、シート高を55mmも下げたローダウン仕様だ。その効果は絶大で、標準仕様は身長175cmの私で両足の拇指球がやっと届く程度だったが、Sは両かかとが楽に接地する。しかもシートのフラットな形状はそのままなので、ステップとの距離や着座位置の自由度は変わっていない。これは大きな美点だ。
【KAWASAKI KLX230 S】■全長2080 全高1110 軸距1360 シート高830(各mm) 車重136kg ■水冷4スト単気筒SOHC2バルブ 232cc 19ps/7600rpm 1.9kg-m/6100rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量7.4L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=2.75-21 R=4.10-18 ●色:緑 濃緑 ●価格:50万6000円
【サスペンション短縮でシート高55mm低下。標準仕様は姿を消すことに】メインチューブに角断面パイプを使用した高張力鋼セミダブルクレードルフレームを採用。ホイール径はフロント21/リヤ18インチのフルサイズで、車重はホンダCRF250Lよりも4kg軽い136kgを公称する。純正アクセサリーでETC2.0車載器を用意している点は親切だ(CRF250L/ラリーにはなし)。
KLX230(写真左)に対してシート高を55mmダウンしたのがKLX230S(写真上)であり、ご覧のとおり足着き性は格段に向上している。シート自体は共通なので、膝の曲がりが窮屈になっていないのも好印象。 [身長175cm/体重68kg]
さて、気になるハンドリングについて。スロットルのオンオフで発生する車体のピッチングは標準仕様より減少しているものの、重心の低下と相まって安定性が増している印象で、これが舗装路での扱いやすさにつながっている。特に感心したのは高速巡航で、乗り心地の良さはそのままに直進性が高まっていると感じた。未舗装路では、路面状況や走り方によっては標準仕様よりもサスペンションの底付き回数は増えるだろうが、いつでも足が着けるという心理的ハードルが下がったことにより、初心者ほどSのありがたさが身に染みる。
エンジンは、スロットルレスポンスの忠実さと快活な吹け上がりが特徴で、生産終了となった249cc/20psのヤマハ セローよりも全域で元気がいいと感じるほどだ。6段ミッションのシフトフィールは非常にスムーズで、クラッチレバーの操作力も軽い。なお、高速巡航時にハンドルから伝わる微振動が多いように感じたのだが、試乗車は純正アクセサリーのファットタイプハンドルバーに換装していたので、これが影響している可能性も捨てきれない。
カワサキ KLX230S ディテール解説
KLX230/R用に開発された232cc空冷SOHC2バルブ単気筒エンジン。ボア×ストロークはほぼスクエアなφ67.0×66.0mmで、最高出力は19ps/7500rpm。FIのスロットルボディ径はφ32mmで、バランサーシャフト/セルフスターター/6速ミッションなどを採用する。
アルミリムを組み合わせたワイヤースポークホイール。標準装着タイヤはIRC製GP-21F/22Rを採用。ブレーキはφ265mmディスクと片押し式2ピストンキャリパーの組み合わせ。
リヤはφ220mmディスク+シングルピストンで、ボッシュと共同開発したデュアルパーパスABSを導入。カット機能はないが、オフロードでも違和感なし。
リヤのニューユニトラックサスペンションはホイールトラベル量を223から168mmへ、φ37mm正立式フロントフォークも220→158mmに短縮してシート高をダウンする。
ヘッドライトは伝統的なハロゲン球で、他の灯火類もフィラメント球で統一。なお、カワサキインドネシアが6月に公開した新型はヘッドライトが小型に。
試乗車は純正アクセサリーのファットタイプハンドルバー(1万3530円)に交換されていたが、本来はブレース付きとなる。
メーターはモノクロの液晶タイプで内容はシンプル。タコメーターやギヤポジションインジケーターなどはなし。
燃料タンクは容量7.4Lを公称。燃料計の最後の目盛りが点滅してから給油したところ4.7Lしか入らなかった。
シートはKLX230と共通で、シュラウドやサイドカバーとのつながりがスムーズだ。
キーロック式の左サイドカバーを外すとバッテリーにアクセス可能。中には車載工具が収められている。リヤショックのプリロード調整もここから行う。
試乗車には純正アクセサリーのリヤキャリア(1万9140円)とETC2.0車載器キット(4万5980円)が装着されていた。ヘルメットホルダーは標準で装備。
トレッキング性能アップ!
足着き性が向上したことで、林道走行に対する心理的ハードルが大幅ダウン。トコトコと流すならサスペンションの短さも気にならない。
[△] 前照灯は次期に期待。ミラーは要改善案件
KLX230の発表当時から賛否両論あるヘッドライトだが、カワサキインドネシアが今年6月に公開した次期モデルではスリムになっており、日本仕様も期待できそうだ。ミラーはステーが短いために腕の写り込みが大きく、後方視界が悪い。
[こんな人におすすめ] セローのような二輪二足という乗り方も可能に
私は普段セロー250に乗っており、KLX230Sの元気の良さと高速での直進安定性はうらやましいというのが正直な感想だ。ブレーキも同様で、制動力が高いだけでなくオフロードABSも優秀。このSはセローの代替に最も近い1台だ。
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