特許図はMT-10がベースのようだが……

次期MT-09は3気筒ターボ!? ヤマハがターボエンジンの応答特性を向上する特許を登録

ヤマハの新しい特許が2022年8月17日に発行された。その内容は「複数の燃焼室を有するエンジンとターボチャージャーを備える車両において、アクセル操作に対するエンジンの応答性を向上させる」というもの。図版の車両はMT-10がベースだが、エンジンは3気筒が用いられている。

車体姿勢の制御に不可欠な“忠実なレスポンス”を具現化する

“ユーロ5”や“令和2年排出ガス規制”といった文言を見かける機会がずいぶん増えてきた。今後ますます厳しくなっている一方の環境規制と大型バイクらしいパフォーマンスの両立は、スポーツバイクを製造するメーカーにとって避けて通れない命題といえるだろう。

その解決方法はメーカーによってさまざまであり、燃焼効率の追求とキャタライザー(触媒)の組み合わせなどによる正攻法、スーパーチャージドエンジン(カワサキでおなじみ)、ハイブリッド機構の採用、電動化といった多様なソリューションが検討あるいはすでに実用化されている。

8月17日に発行されたヤマハの特許は、2020年2月に出願され、同年10月に公開されたのち2022年8月8日に登録されたものだ。

その内容は、「複数の燃焼室を有するエンジンとターボチャージャーを備える車両において、アクセル操作に対するエンジンの応答性を向上させる」というもの。

この部分はやや専門用語が多めなので読み飛ばしていただいても結構だが、乗り手のアクセル操作によって姿勢を制御する乗り物である自動二輪車等は、アクセル操作に対するエンジンの応答特性を向上させることが求められる。この要求に対する解決方法として、まずは気筒毎にスロットルバルブを備えることから検討をはじめたところ、スペース確保の難しさや重量増というネガが出たため、複数の気筒に共通のスロットルバルブ、つまり多気筒エンジンに対し単一のスロットルバルブで対応する方向で検討を進めた。その結果、スロットルバルブと燃焼室の間にサージタンクを設けず、インテークマニホールドにおける集合部の容積を小さくすることで、エンジンの応答特性、特に非過給領域での応答特性が向上することがわかったのだという。

これを実現するための手法は細かい検討の積み重ねになるので記事では省略させていただくが、注目したいのはこの特許の検討に用いられたのが並列3気筒エンジンだということ。また、これを搭載するベース車両として特許図に描かれているのは、クロスプレーンクランクを採用する4気筒マシン、MT-10であった。

特許図版に用いられていたMT-10。写真は2020年モデルのMT-10 SP(国内モデル)だ。

ここからは妄想の部類になるが、次期MT-09またはシリーズ最高峰のMT-10のどちらかが、ターボチャージャー付き3気筒エンジンを搭載する可能性があるのではないか……。

特許の文面には「エンジンが有する燃焼室は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい」とあり、また「上記実施の形態では、過給機として、ターボチャージャーが採用されているが、ターボチャージャーの代わりに、スーパーチャージャーを採用してもよい」とも。つまり、この特許技術を採用したマシンは、ターボまたはスーパーチャージャーを組み合わせた2~4気筒エンジンのスポーツバイクになる可能性もある、ということなのだろう。

じっさいにこうしたマシンが発売されることになるかはともかく、ヤマハ発動機がモーターサイクルにおけるターボ技術を研究していることは間違いない。数多の検討された技術のうち世に出るのは一部だけだとしても、我々ライダーにとっては夢のある話である。続報に期待したい。

特許図に描かれたMT-10ベースと思われる車両の右側面に、エンジンの吸気通路&排気通路を示す模式図と、吸気通路部における下流側吸気通路部を併せて示したもの。

エンジンの右側面図だが、ざっくりした描写ながら吸排気の取りまわしがよくわかる。

エンジンの正面図。

エンジンに接続された外部吸気通路部における外部下流側空気通路部を示す斜視図。

エンジンに接続された吸気通路部における下流側吸気通路部を示す模式図。

アクセル操作に対するエンジンの非過給領域での応答特性を調査した結果を示す図。左はこの特許のように1つのスロットルバルブ×3つの燃焼室、右は各気筒に1つずつスロットルバルブを配置した場合だ。左の方がスロットル開度に対し短い時間でトルクが上昇しはじめているのがわかる。


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