愛車選びの際に悩ましいのは、どの排気量クラスにするかということ。高速道路に乗れなくていいなら維持費も安い125cc(原付二種)以下を選ぶのも手だが、趣味のバイクとして「これ1台!」なら126cc以上を選ぶという方も少なくないのでは。そこで気になるのは、車検の有無で費用がどのくらい変わるのかである。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:カワサキ
まずは車種の前に予算でしょ……!?
バイクが欲しい! と考えたとき、真っ先に気になるのは「どのバイクがカッコいいの?」ということ……と言いたいところだが、やっぱり予算と合うかどうかが最優先、という方が多いはずだ(一部ブルジョアの方を除く)。
まずはなんといっても車両価格。昔ならヤングマシン誌を片手に、現代ならWEBヤングマシンを含む数多のWebサイトを眺めながら、車両価格と実際に支払う総額をシミュレーションし、現金で買うかローンを組むか、オプションや装具はどうする……と楽しくも悩ましい時間を過ごす。そして新車と中古車のどちらにするか、相場と車両の程度はどうなっているのか、とリサーチしながら的を絞っていくのが常だろう。
次に気になるのは維持費である。最初の支払い総額だけでは終わらず、ガソリン代やメンテナンス費、自賠責&任意保険や軽自動車税&重量税とといった継続的にかかる費用は馬鹿にならないものだ。
このうち、ガソリン代やメンテナンス費は車種によって異なることが多く、傾向としては排気量が小さいほど安く済むと言える。このほか、住んでいる地域によっては駐輪場代がかかることもあるだろう。といいつつ、これらはあくまでも傾向としてしか語れない。
一方、排気量の区分けでカッチリと価格が異なるのは、軽自動車税、重量税、各種保険料、そして251cc以上の小型自動二輪で義務付けられる『車検』の費用だ。
まず毎年の春に振込用紙が届く軽自動車税は以下の通り。
50cc以下 2000円
50cc~90cc 2000円
91cc~125cc 2400円
126cc~250cc 3600円
251cc以上 6000円
次に新車購入時と車検時に必要な重量税はというと、125cc以下は0円で、126cc以上は下記のようになる。
126cc~250cc 4900円(新車購入時のみ)
251cc以上 1900円/年(初年度登録後12年まで)
2200円/年(初年度登録後13年~17年)
2500円/年(初年度登録後18年以上)
上記で、車検ありのクラスは車検毎に税金が徴収されることがわかる。
じゃあ自賠責保険はというと、じつはそんなに大きな差がない。下記は2022年度の自賠責保険料(沖縄県と離島地域を除く)の基準料率だ。いずれも1年の場合(離島地域などの詳細はコチラ)。
125cc以下 7070円
126~250cc 7540円
251cc以上 7270円
任意保険に関しては125cc以下/126cc以上という区分けで、料金は補償内容や保険会社によって異なるが、もちろん125cc以下は安く(ファミリーバイク特約というものもある)、126cc以上はそれなりに高くなる。とはいえ、保証年齢や保険等級によって大きく変わってくるので、使用状況に合わせて設計できるのも特徴。いずれにしても任意保険への加入については「任意保険に入っていないなら乗る資格なし!」という人もいるほどで、当WEBとしても強く推奨しておきたい。
車検あり/なしで費用に差がつくのはどこ?
さて、本題の車検費用について。じつは、車検の費用で“絶対に支払わなければならない”のは、車検期間をカバーする自賠責保険料(一般的に24か月)、重量税3800円~(2年分)、そして陸運局事務所で買う印紙代1700円だけだ。ただしこれはユーザー車検といって、自分で車両を持ち込んで検査してもらった場合。バイクショップなどの業者に以来した場合は、代行手数料と必要なメンテナンス費が上乗せになり、メンテナンス不要の最小限で1万円台後半、メンテナンス込みでは5万円前後が必要になるケースが多い。
では、車検あり/なしは購入時の判断材料としてどのくらい重点を置くべきなのだろうか? じつは短期的に考えればそれほど差はないともいえる。
新車から5年間の所有を想定して車検あり/なしを比較
新車で買って、5年間乗って手放すと想定してみよう。車両価格を無視すれば、自賠責保険料は似たようなもの(むしろわずかに安い)、任意保険は126cc以上であれば同一だ。差が付くと思われる税金については、毎年の軽自動車税が3600円 vs 6000円で2400円差、重量税は新車購入時にのみ支払えばいい126cc~250が4900円、251cc以上の場合は初年度に5700円、3年後の1回目の車検で3800円を支払うので合計9500円になる。差額は5年間で4600円だ。
これに1回の車検費用がプラスされるわけだが、最低限で言えば前述のように印紙代1700円のほかはそれほど変わらない。業者に依頼するのであれば車検代行料が1万円台後半になるとしても、メンテナンス費については(普段から定期的にショップにメンテナンスを依頼しているのであれば)車種毎の部品代の違い程度である。
ようするに、定期的なメンテナンスを怠らずに実行している場合、251cc以上のバイクを所有して5年間で+αが掛かるのは、税金類の差額合計7000円と印紙代1700円、そしてショップに依頼した場合の車検代行手数料(1回分)のみということになるわけだ。
小さな額とは言わないが、向こう5年間にわたって好きなバイクに乗るか諦めるかを決定するのに、これを最優先の条件とすべきかどうかは意見が分かれるんじゃないだろうか。
では、じっさいのユーザー動向はどうなっているのだろう?
じつはニンジャ250/Z250よりも売れているニンジャ400/Z400
とても比較しやすい例としては、カワサキの「ニンジャ400」と「ニンジャ250」が挙げられる。ほぼ同一の車体に、排気量の異なるエンジン(ベースは共有)を搭載し、これにともなう吸排気システムの違いのほかには、ラジアルタイヤ(400)とバイアスタイヤ(250)といった差異が挙げられる程度。車両価格もニンジャ250の65万4500円に対し、ニンジャ400は72万6000円と、それほど大きな差はないといえる。
ディーラーで聞こえてくるのは、新車から3年間の所有期間を想定して購入するユーザーが少なくないということ。つまり、車検ありの車両でも、新車で買えば最初の車検が来るまでに3年あり、そこから次のバイクに買い替えるかも……と考えるそうである。2回目以降の車検はは2年毎になるが、これについては「気に入って乗り続けることになったらそれはそれ」という感覚だ。
そうなると、同程度の車重にパフォーマンスの異なるエンジンを搭載しているなら、余裕のある400を選ぼうと考えるユーザーが多くなる。実際に販売台数を見ても、2021年はニンジャ250/Z250(型式が同じため2機種の合計台数となる・以下同)の合計が2023台(二輪車新聞調べ・以下同)に対し、ニンジャ400/Z400は3438台と大きく水をあけている。
250クラスはニンジャZX-25Rがあるから……と思うかもしれないが、ZX-25Rが発表される以前の2019年で比べてみても、ニンジャ250/Z250は2284台で、ニンジャ400/Z400は3589台と大して変わらないのだ。
もちろん、400ccクラスと軽二輪クラスを比べれば、総販売台数では選択肢の多い軽二輪のほうが上だが、401cc以上の大型バイクまで加えれば、2021年の販売台数では車検ありが9万3900台で、軽二輪クラスの7万9800台を超えている。
ちなみに、初回の車検有効期間が3年に設定されたのは2007年から(自家用乗用車は1983年から)で、それまでは2年だった。これに併せて、点検整備制度の見直しも実施されている。
元気いっぱいのニンジャ400と、優しい乗りやすさのニンジャ250
せっかくなので簡単な試乗インプレッションも記しておきたい。
ニンジャ400は、スペック表からも明らかになっているとおり、かなりのハイパワー。最高出力48psで元気のいい走りを見せつけてくれる。と同時に、じつは低回転域でトルクが得られるため、回さずに走ってもキビキビと動くことができ、じっさいの車重以上に車体が軽く感じられる。大型バイクと同じように、スロットルワークで車体の挙動を操れる感覚だ。また、ラジアルタイヤならではの接地感には上質さもある。スポーティに走ってもダラダラ走っても、軽い車体とエンジン出力がモノを言う。
一方のニンジャ250は、トルクに厚みがあるとは言えないが回転上昇にストレスがなく、振動も少ないため気負わずに走ることが可能。トコトコとゆっくり走ると優しさが際立ち、スポーティに走りたいならエンジンを使い切る喜びもある。トルクがないぶんスロットルワークに対する車体の動きはゆったりしているが、ライダーをビビらせない優しさが扱いやすさにつながっている。同排気量のCBR250RRと比べると排気音が静かで疲れにくいのも特徴だ。
ヤングマシン2020年11月号の実測比較では、下記のようになっている。
ニンジャ400──実測後輪出力44.3ps/0-1000m加速26.4秒/実測燃費23.57km/l
ニンジャ250──実測後輪出力33.0ps/0-1000m加速29.6秒/実測燃費23.48km/l
メーカー公称スペックでは、ニンジャ400のWMTCモード燃費は24.8km/lで、ニンジャ250は26.2km/lだが、実測ではむしろニンジャ400のほうが好燃費だった。これはサーキットを含むテストにより、平均速度が高かったことも理由だろう。
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