コロナ禍のバイクブーム、好調の裏側にあるもの

若いライダーの方が危機管理できている?! バイクの任意保険、もはや必須です! …〈多事走論〉from Nom

加入していないと法律により罰せられる自賠責保険に対し、その名の通り任意で加入する任意保険に法律等の強制力はありません。しかし、自賠責保険で補償される金額ではカバーしきれない事故の損害で、人生を棒に振ってしまいかねないケースはままあります。最近、ネットニュースでは任意保険未加入の事故で厳罰が……という話題が世間を騒がせました。実際のところ、任意保険の加入状況はどのようになっているのでしょうか?

バイクの任意保険、ちゃんと入っていますか?

19都道府県に発出されていた緊急事態宣言が9月30日に全面解除となり、徐々にではありますが以前の日常を取り戻しつつありますが、新型コロナ感染症の流行が我々の社会に与えた影響はそう簡単には消え去りはしません。

様々な業種が、依然として非常に苦しい状況に立たされていますが、ご存知のように二輪業界は相変わらず好況を博しています。

先日も、最後の空冷4気筒バイクになるであろうホンダ・CB1100EX&RSのファイナルエディションの予約受付を10月8日に開始したところ、2週間足らずで予定販売台数の1600台(シリーズ合計)を上回る注文があり、予定期間の1カ月以上も早い10月25日で予約受付を終了したことが象徴するように、一部人気車種を中心に納車まで半年以上かかるといった新車バブルのような状況が続いているのです。

二輪免許証取得者数推移

2017年~2020年の二輪免許証取得者数推移。●データ: 警察庁運転免許統計 [写真タップで拡大]

中古車販売も同様で、大手中古車ショップでも在庫が十分にない状況が続いていて、仕入れに四苦八苦しているとのこと。

そして、今回のバイク業界に押し寄せているプチバブルのような波を象徴するのが二輪免許の取得者の多さです。

昨年から続いている普通二輪免許、小型二輪免許の取得者の急増は、教習所の入所待ちというコロナ禍前では考えられないような状況を呈しています。

免許取得者の伸び率を見てみると、大型二輪免許が2018年→2019年で103%、19年→20年では107%、普通二輪免許は同じく102%と134%、小型限定免許が120%と102%、原付免許が93%と103%と、20年は全クラスで伸長していますし、今年も昨年同様の取得者数を維持しているようです。

加えて、バイク用品やカスタムパーツの好調なセールスなど、長く二輪業界に携わってきたものとしては本当に久しぶりに訪れた市場拡大が大いに喜ばしいことなのですが、ライダーが増えれば必然的に起こることが事故の増加。

これは昨年から表面化していたことで、昨年は若年層ライダーの事故がとても増えていたのですが、今年はすべての年齢層で事故が増加しているようです。免許を取得したばかりの不慣れなライダーに加えて、今年になって中高年のリターンライダーが当事者になる事故も増えているといいます。

久しぶり(ウン十年ぶりという人もいるはず)にバイクに乗り始めたリターンライダーが、反射神経も運動能力も低下している事実を自覚しないまま、若いころと同じ感覚でバイクを扱おうとして事故を起こしてしまう。

各方面からの話を聞けば聞くほど、好調の裏側にある憂慮すべき状況を危惧してしまいます。

実際、夕方にクルマで都内の国道254号線(川越街道)や環状8号線を走っていると、おそらく通勤・通学の途中であろうライダー、主に125㏄クラスのスクーターに乗ったライダーの多くがクルマの間を結構な勢いですり抜けて行きます。

自分自身もライダーなので、バイクの動きは承知しているつもりですが、それでも、いや、だからこそ無謀と思ってしまう抜き方をするライダーを見かけることもしばしば。

警視庁のデータでは、事故の発生は通勤・通学時間帯に非常に多くなっていて、派生場所は交差点及びその付近、そして直進状態での事故が圧倒的多数になっています。

クルマの間をすり抜けているときに、ハンドル操作を誤ったり、クルマが急に進路変更したりして、接触してしまうケースがおそらく多いのだろうと思います。

TVのニュースで見た方もいらっしゃるでしょうが、大阪でも通勤ラッシュ時のバイクのすり抜けが非常に大きな問題となっていて、取り締まりの強化が行われています。

そんな報道や、自分のクルマのすぐ脇をギリギリのところで猛スピードですり抜けているバイク/ライダーを見ていたら、危ないから気を付けて欲しいという思いと同時に頭に浮かんできたのは、「ちゃんと任意保険に入っているのかな」ということでした。

コロナ禍で密を避けるために125㏄などのバイクに乗り始めたライダーは、ひょっとして自転車の延長線の感覚でバイクに乗り始めているのではないか。自転車代わりだから、任意保険に入るなんてことまで思いつかずに、自賠責保険のみという危険な状態のライダーが増えているのではないかという老婆心がムクムクと湧き上がってきたのです。

憂いに反して若年層ほど任意保険に加入していました

国産新車ディーラー、大手中古車販売店に聞くと、新規購入者の5割は店頭で任意保険に加入し、残りの5割もファミリーバイク特約、インターネット保険などに加入して、トータルで8割ほどのライダーが保険に加入しているのではないかという予想外の答えが返ってきた。 [写真タップで拡大]

そこで、国産メーカーの正規ディーラー、大手中古車販売店に新規にバイクを購入した人たちの任意保険への加入動向を聞いてみました。

返ってきた答えは双方ともほぼ同じで、購入者の5割ほどは店頭で任意保険に加入している、残りの5割の人の大半も、インターネットで保険に加入する。また125㏄クラスの車両の購入者は、所有するクルマの保険のファミリー特約に入るといった理由で店頭では加入しないが、おおよそ8割くらいの方が何らかの形で任意保険に加入しているのではないかとのことでした。

これはもちろん、新規購入者に店頭で任意保険の必要性と、未加入の場合のリスクを丁寧に説明していることの効果でもありますが、印象としては若いライダーのほうが安全意識が高くて、任意保険にも積極的に加入しているそうです。

逆に、以前バイクに乗っていてしばらくぶりに復帰するリターンライダーのほうが、任意保険なんて必要ないと言って、未加入のままバイクに乗っているケースが見受けられるそうです。

実際、自分も30代になるまではバイクの任意保険には加入していなかった記憶があり、当時はそれがごく普通のことだったように思います。リターンライダーの中には、そんな当時の記憶を引きずったまま保険に未加入でバイクに再び乗り始めているのかもしれません。

そこで、店頭型の保険会社とインターネット型の保険会社の両方に、ここ数年の任意保険の加入動向を聞いてみました。

任意保険の加入者は若年層を中心に増加傾向。なかでも20代の方の加入者の伸びがとても大きいようだ。 [写真タップで拡大]

まず、任意保険への加入傾向ですが、店頭型保険大手として全国約1800店のバイクショップの保険代理店を務める損保ジャパンによると、2020年3月以降、コロナの影響もあって12月までは減少傾向だったのが1月からは一転して上昇傾向になり、2021年9月時点ではコロナ前を上回る加入者数を記録しているとのこと。

年齢層では、70代を除く全年齢層で増加傾向にあって、とくに20歳以下の加入者は2020年以降、月平均で約45%の伸びを見せているといい、バイク販売店での加入動向を裏付ける内容となっています。

また、インターネット保険の大手であるチューリッヒでも、加入者はここ数年増加傾向にあって、コロナ禍の影響を受けることもなく、加入者数は順調に推移しているそうです。

ということで、筆者が抱いた新規ライダーの多くが保険に加入しないままバイクに乗っているのではないかという考えは杞憂だったことが分かったのですが、125ccクラスのライダーの方々が多く入っているというファミリーバイク特約について少し気になって、損保ジャパンとチューリッヒの双方に、ファミリーバイク特約のメリットとデメリットを聞いてみました。

ロードサービスの有無が実は大きなポイントです

所有している自動車の任意保険に付帯するもので、125㏄以下のバイクが加入でき、任意保険より安い保険料でバイクを運転中の事故による対人・対物の補償が受けられるのがファミリーバイク特約です。

割安な保険料のほかに、バイクで事故を起こして補償を受けても、自動車保険の等級に影響しないというメリットもあるのですが、逆にバイクで無事故を続けてもファミリーバイク特約部分の料金割引は受けられません。

そして、決定的な違いであるロードサービスの有無(ファミリーバイク特約にはロードサービスは付帯しない)ですが、筆者はこの10年間くらいの間に、バイクのトラブルで3回、任意保険に付帯しているロードサービスを使用しました。いずれもエンジン系のトラブルで走行不能になり、ロードサービスを利用しました。

3回のとも都内で起きたトラブルだったこともあり、1時間以内にレッカー車が到着して、ディーラーまでバイクを運んでもらって事なきを得ました。

損保ジャパンでも「バイクのトラブルの7割は故障ですので、安心してバイクライフを楽しまれるならロードサービスの付いた任意保険をお薦めします」とのことでした。

最近は、とくに125㏄クラスのバイクでツーリング、それも荷物を満載したキャンプツーリングに行かれる方も非常に増えています。自宅近辺でのトラブルならまだしも、ツーリング先でエンジンが止まってしまったり、転倒や事故などで走行不能になったりしたら125㏄クラスのバイクでも万事休す。レッカー車を待つしかありません。

安心してバイクライフを楽しむためには、やはりロードサービスも付帯している任意保険に加入しておきたいものです。

1億5000万円の高額賠償請求の事例も

今回、バイクの任意保険についていろいろ調べているうちに、気になる数字を見つけました。

それは、「損害保険料率算出機構」が発表した2020年度自動車保険の概況資料の中の「任意自動車保険 用途・車種別普及率表〈2020年3月末〉」の二輪車の保険普及率で、これによると対人は43.8%、対物は44.5%に過ぎません。

これは分母が保有車両数のために、実際にはまったく稼働していなくて、廃車をせずにただ税金を払い続けている不動車もすべて含まれているため、5割にも満たない加入率になっているようです。また、125㏄ユーザーの一定数の方が任意保険ではなくファミリーバイク特約を利用していることもこの数字の要因のようです。

保険会社の見解では車検のない軽二輪や原付では任意保険に加入を促すタッチポイントが少なく、一度、加入のきっかけを逃すとそのままずるずると未加入を続ける例が多いとのことでした。

前述のように、販売店の肌感覚では新規バイク購入者の約8割は何らかの任意保険に加入しているのではないかとのことですが、それにしても残りの2割は未加入の可能性は高く、既存ユーザーはさらに未加入率が多い可能性が高いと思われます。

任意保険に未加入で、もし重大な事故を起こしてしまったら……。

最近は、以前とは大きく異なって1億円を超える賠償金を請求される例も少なくなく、バイクだから大丈夫、なんていう根拠のない考えは今すぐ捨てるべきだ。 [写真タップで拡大]

記憶に新しいかもしれませんが、10月初めに、任意保険の未加入ライダーが対向車線を走ってきたバイクに衝突して運転していたライダーを死亡させ、任意保険未加入のため損害賠償を行える見込みがないとして2年間の禁固刑を受けたというネットニュースの報道がありました。

このケースは、かなり稀な悪質事案としてこういう判決が出たようですが、悪意のない過失に基づく事故でも超高額な賠償金を請求されるケースもままあるようです。

チューリッヒのバイク保険の加入者が、道路を横断中の歩行者と事故を起こし、当事者のライダーが約1億5千万円の高額補償を請求された事例があるとのこと。このように、1億円を超すような賠償金を請求されるケースもあるようです。そんな額を請求されることになったら、バイクライフどころか人生がそこで終わってしまいかねませんね。

新しくライダーになった方々の保険加入の有無を調べるために取材を重ねてみましたが、バイクに乗るなら新規ライダーだけではなく既存のライダーも任意保険には必ず入ることを肝に銘じていただきたいと、あらためて強く思いました。


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マシン・オブ・ザ・イヤー2021
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