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アフリカツインをベースとする兄弟車、大阪・東京モーターサイクルショーで発表されたホーク11(イレブン)。クルーザーのレブル1100、ツアラーのNT1100に続く第4弾は「GB系のネオクラシックか?」とも予想されたが、なんと完全オリジナルのロケットカウルを纏ったカフェスタイルで登場が決定した。モーターサイクルショーに先駆け、’22年2月末からティーザーでロケットカウルの画像が公開されたが、このカウルこそがコンセプトの要であり最大のこだわりだ。
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ
カウルありきで開発を進めたロードスポーツ
’22年3月19日からの大阪モーターサイクルショーにて世界初公開となったホーク11。本誌でも数回に渡りスクープをお伝えしてきたが、どうやら、モーターサイクルショーで市販予定車として発表されたモデルが最終形態となりそうだ。
水冷2気筒エンジン/セミダブルクレードルのフレーム/前後の足まわりから解るように、直接的なベースはNT1100。とはいえNT1100もアフリカツインも、いわゆる「腰高」なアドベンチャーやツアラーである。それを「低いロードスポーツ」のカフェスタイルに落とし込み、形だけでなく軽快な走りを成立させるためには、デザイン的に容量を稼ぎにくいエアボックスの設計や、キャスターを立てたアライメントなど様々苦労があったという。
【’22 HONDA HAWK 11】■水冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ 1082cc 102ps/7500rpm 10.6kg-m/6250rpm ■214kg シート高820mm 14L ■タイヤサイズF=120/70-17 R=180/55ZR17 ●色:グラファイトブラック パールホークスアイスブルー ●価格:139万7000円 ●発売日:’22年9月29日
カラーバリエーションはグラファイトブラック/パールホークスアイスブルーの2色展開。いずれもロケットカウルを縁取るように塗り分けたのは、後方に流れるように抜けるキャラクターを強調するためのこだわりとのこと。
こだわりの繊維強化プラスチック製ロケットカウル
そしてホーク11のアイデンティティであるロケットカウルは、量産市販車としては珍しいFRP(繊維強化プラスチック)製。一般的なABS樹脂だと、この形状で作るにはインジェクション成形型を分割せざるを得なく、モールドの“継ぎ目”ができる。それだと仕上げの形状はもちろん、塗装面への「風景の映り込みが美しくない」という理由でFRPを採用したというから驚かされる。じつは変わった取り付け方法のバックミラーも、ロケットカウルにミラーステーの取り付け穴を開けたくなかったためだという。バーエンドミラーは車幅が広くなるので却下され、後方視界の良さも含めて、この形態に決まったという。
繊維強化プラスチック(FRP)とは!?
金型で大量生産できる一般的な樹脂部品に対し、繊維強化プラスチック(FRP)は、ガラス繊維などを樹脂で固めて強度を高めたもので、薄く、軽量化できるのが最大の特徴。ただし製造工程には繊維の貼り込み作業が必要になるため大量生産には向かず、主に小ロット生産のモデルに採用される。このホーク11は、青と黒の2色展開の模様だが、このFRP製カウルに起因する生産台数も気になるところ。
カウルの裏側にはFRP外装特有のグラスファイバーの繊維が見える。
セパレートハンドルだがツーリングも楽しめる快適なライディングポジション
とはいえロケットカウル&低いセパレートハンドルは、スタイリッシュではあるがキツい前傾姿勢を強いられるのが一般的。そしてホーク11が想定するメインユーザーは経験豊かなベテランライダー。様々なバイクに乗り継いでおり「伝統的なシルエットのバイクに乗りたい。しかし疲れるライディングポジションは避けたい」と、要求のハードルも高い。そこでホーク11は、「低いセパレートハンドルと、ラクなライディングポジション」という本来は相反する条件を見事にクリア。これはMCショーで跨った方なら体感できたと思う。快適性を追求するならレブルやNT1100のようなDCT仕様が優位と思われるが、ホーク11は(現時点では)MT6速。これは走りの満足感、充足感を得るための選択という。
そしてプライスは139万7000円。国内外問わず、スタイルを重視したネオレトロ系は総じて“高め”なのに対し、排気量などのクラスを考えると手が届きやすい、といえる。これもホーク11の歓迎すべき特徴だろう。
【ライディングポジション】ロケットカウル+セパレートハンドルは、本来ならキビしい前傾姿勢を強いられるが、熟年ライダーもツーリングを楽しめるラクなポジションを追求。スタイルと乗り心地の相反する要求に応える。[身長172cm/体重75kg]
’22 HONDA HAWK 11
【キャスター角は25度】ワインディングを軽快に楽しめるよう、NT1100より立った25度のキャスターと98mmの短めのトレールを採用し、ホイールベースも25mm短い。ロー&ロングに見えて意外とコンパクトなのも特徴。
【曲面とエッジの組み合わせで高めた存在感】流麗なカフェレーサーのスタイルにとことんこだわった。じつはテールランプを囲むリヤカウルも、成型の“割り”を入れたくないのでFRP製を選択。
ロケットカウルのカフェスタイルを確固たるコンセプトに基づいて開発。シャシーのベースとなったNT1100の“高いディメンション”を、“低いカフェスタイル”で成立させた技術は見事。
【エンジンはアフリカツイン系のMTだ】270度位相クランクの水冷2気筒はパワー/トルクはNT1100と同一。しかし、MT仕様かつ最新モデルだけあって全車中で最良の燃費を誇る。DCT仕様は現時点では予定ナシだが、ユーザーの要望次第かも。
エンジン鼓動と排気音にこだわったマフラー。サイレンサーはNT1100と形状は同じようだが、若干カチ上げ気味にセットされている。
フロントサスペンションはショーワのSFF-BP、リヤサスペンションはモノショックのプロリンクで、共にプリロードアジャスター(フロントは左のフォークトップ、リヤは手で調整可能)を装備。フロントブレーキはニッシンのラジアル4ポット。
【メーターはシンプル。走行モードは4つ】反転液晶のメーターはレブル1100と同系。スロットルバイワイヤを採用し、パワー/トラクションコントロール/エンジンブレーキを切り替えるライディングモード(スタンダード/スポーツ/レイン/ユーザー)を装備。
ミラーはなんとカウルステーからバーで車体外へ取り回している。跨った感じ、慣れないとちょっと見づらいかも。
クルーズコントロールシステムの採用はないようで、右スイッチボックスは至ってシンプル。左スイッチボックスは、中央下の「MODE」スイッチでモードを選択、「SEL」スイッチで切り替える。レブル1100と一緒のシステムだ。
NT1100比で100mmほどシートレールを短くして、カフェレーサーらしいコンパクトなスタイルを創出している。
ETC2.0は標準装備。シート下スペースはバッテリーとヒューズボックスなどの電装類でいっぱいという感じだ。
カフェレーサースタイルだが、荷かけフックも用意されており、タンデムステップも使えばリヤシートに4点留め固定が可能。
【ホークの名前の由来は!?】「ホーク」というペットネームは、’77年の「HAWK-II(CB400T)」にまで遡ることができる。とはいえ当時の車両と、ホーク11の共通点は“2気筒”であることくらいで、有名な“ヤカンタンク”でもなければ、空冷でもなく関連性はほぼないに等しい。ホークというペットネームを使った新型車が出たと思った方がいいだろう。
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