スポーツできるロードスター! BMW S1000R試乗インプレッション【電子制御満載のMパッケージ】

BMWのダイナミックロードスター「S1000R」が初のフルモデルチェンジ。ベースとなっているのは現行S1000RRで、可変カム機構のシフトカムは非採用ながら、先代と同じ最高出力165psを維持する。RRと同様に豪華なMパッケージが用意されたのも話題のひとつだ。


●まとめ: ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真: 真弓悟史 ●外部リンク:BMWモトラッド

【’21 BMW S1000R M PACKAGE】■全長2075 全幅815 全高1050軸距1450 シート高830(各mm)車重204kg ■水冷4スト4気筒DOHC4バルブ 999 cc165ps/11000rpm 11.6kg -m/9250rpm変速機6段リターン 燃料タンク容量16.5L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●色:赤 銀 白 ●価格:235万円

【2年遅れでシャーシが現行S1000RRと共通に】スーパースポーツ・S1000RRのロードスターとして’14年に登場。RRは’19年にフルモデルチェンジしていたが、シングルRもついに’21年型でそれをベースに生まれ変わった。ベースモデルは178万円で、今回試乗したのは最上級のMパッケージ。電子制御サスペンション/クルーズコントロール/Mリチウムイオンバッテリーなど装備は豪華で、価格は235万円だ。

【ライディングポジション】ストリートファイターのように上半身が軽く前傾し、足着き性はまずまず。ハンドル切れ角は27→33°に増えている。[身長175cm/体重68kg]

[◯] パワフルだが優しさも。安心感の源は各種電子制御

海外では「シングルR」とも呼ばれているS1000Rが、’21年に初のフルチェンジを受けた。外観では左右非対称の2眼だったヘッドライトが小顔になったのをはじめ、テールランプはS1000RRと同様にウインカーと一体化された。フレームやスイングアームなどシャーシはRR譲りで、先代から5kgも軽くなったという999cc水冷並列4気筒エンジンは、可変カム機構のシフトカムこそ採用されていないが、ユーロ5をクリアしながらも先代と同じ165psを維持しているのだ。

まずはそのエンジンから。試乗したMパッケージはライディングモードが4種類(レイン/ロード/ダイナミック/ダイナミックプロ)用意されており、どのモードもスロットル全閉からの開け始めの反応が唐突すぎず、ウェット路面でもライダーを慌てさせない。特に感心したのが電子制御スロットルのレスポンスで、開閉方向に対して忠実なだけでなく、一定開度を保っている状態(パーシャル)でも回転ムラが出ないことから、制御が緻密であることが分かる。わずかにザラついた微振動が体に伝わるものの、それは力量感の演出にもつながっており決して不快ではない。トラクションコントロールとウイリー制御を統合したDTC(ダイナミックトラクションコントロール)や、双方向クイックシフターも採用されており、これらが安心感を与え、疲労軽減に役立っている。

ハンドリングも優秀だ。Mパッケージに採用される電子制御サスペンションのDDC(ダイナミックダンピングコントロール)は、ダイナミックモードでも硬すぎることはなく、張りのある動きで路面を捉えてくれる。ロードモードではギャップ通過時の衝撃が大きく軽減され、その後に続く余韻はスカイフックを想起させるものだ。舵角の付き方も穏やかで、どんな操縦でも車体を寝かせてしまえばスムーズに向きを変える。旋回中の安定性は、電サスの働きはもちろん、若干しなやかに感じられる新型シャーシも貢献しているようで、気が付けばワイディングを無心で楽しんでいた。

ブレーキはバンク角に応じて制御するABSプロを導入。さらにクルーズコントロールやキーレスライドなど、利便性も充実している。

【コストダウンのためシフトカムは非採用に】単体で5kg(S1000RRは’19年に4kg)もの軽量化を達成した999cc水冷並列4気筒は、165psを発揮する。変速比は4速=2%/5速=4%/6速=8%ロング化。

【Mパッケージはアクラポビッチ標準装備】Mパッケージはアクラポヴィッチ製のスポーツサイレンサーを標準装備する。エキゾーストシステム全体では前作から10%の軽量化を達成。なお、装着タイヤは国内では展開のないダンロップのスポーツスマートMk3という銘柄で、サーキット走行も許容するという。

【プレミアムライン以上は電サスだ】マルゾッキ製倒立フロントフォーク/フルフローター式リヤショックとも、ベースモデルはフルアジャスタブルで、プレミアムラインとMパッケージは新世代電子制御サスペンションのDDC搭載。ブレーキはABSプロを導入。

STDモデルのホイールはアルミキャストだが、Mパッケージはアルミ鍛造製で、前後合わせて1.8kgも軽い。さらにカーボン製のホイールをオプションで用意しており、価格は前後合わせて26万8000円と非常にお買い得だ。

Mパッケージのチェーンは伊レジーナ製のエンデュランスタイプだ。DLCコーティングが施されており、駆動効率が高くメンテナンスサイクルも長い。

プレミアムラインおよびMパッケージはアダプティブヘッドライトを採用する。

【ハンドルはブラックに、スイッチ類は前作を継承】ハンドルバーはシルバーからブラックとなり、レーザーエッチングで車名を刻んでいる。スイッチ類はBMW の多くの機種で採用されているものだ。

【RR譲りのTFT多機能メーター】6.5インチのTFT 液晶ディスプレイはS1000RRと共通で、スマホとの連携機能あり。STDモデルは2種類、Mパッケージは3種類の表示画面が選べる。

タンク容量は17.5Lから16.5Lへと微減。MパッケージはMスポーツシートを標準装備する。シート高は830mmで、810mmとなるローシートと850mmのハイシートをオプションで用意。なお、日本仕様はパッセンジャーキットが標準に。

[△] ステアリングダンパーがやや強めか。サーキットで本領発揮

滑りやすい路面に萎縮して車体を倒し込めないでいると、やや強めのステアリングダンパーによって、舵角が付きにくい状況に陥りやすい。それと、市街地で乗りやすいとはいえ、スイートスポットは3ケタの速度を超えた領域にある。本領はぜひサーキットで。

[こんな人におすすめ] スポーツできるロードスターが欲しいあなたに

ネオクラとは真逆ながら各社が注力している、強心臓ネイキッドというジャンル。S1000Rは普段使いできるほど懐が深いので、ショートツーリングだけでなくたまにサーキット走行も楽しみたいというスポーツ派にオススメの1台だ。


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