これが最後の空冷4発! ホンダCB1100RS/EXファイナルエディション【丸山浩、惜別のラストインプレ】

惜しまれながら、ついにCB1100が生産終了を迎える。予約が早期終了するほどの人気を見せた「RS」および「EX」の貴重なファイナルエディションを丸山浩が連れ出し、ラストランを敢行。現行モデル唯一であり、もう二度と出ないかもしれない空冷直4を味わい尽くした。


●まとめ:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ホンダ

【テスター:丸山浩】業界屈指のCB好きとして知られる『ヤングマシン』誌メインテスター。空冷直4のCB750Fが免許を取るキッカケで、現在もCB900Fを所有する。CB1100カスタムの”プロジェクトF”も好評だ。今回の試乗にあたり、「さらば空冷CB! “ありがとう”の分だけ大ジャーーンプ!!!」

昔そのままのテイストに酔う。ハンドリングの違いも楽しい

生産終了が決定してから、CB1100の人気を再確認することになった。有終の美を飾るEXとRSのファイナルエディションは、予約期間が’21年10月8日〜11月30日だったが、注文が殺到。早くも10月25日で受付が終了してしまった。CB1100を気になっていた人が多かった証拠だろう。

終了のニュースは僕(丸山)にとっても大ショック。ここ10年で一番の衝撃かもしれず…。速攻でRSのファイナルを予約してしまったほどだ。

【’22 HONDA CB1100 RS FINAL EDITION】■全長2180 全幅800 全高1100 軸距1485 シート高785(各mm) 車重252kg(装備) ■空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1140cc 90ps/7500rpm 9.3kg-m/5500rpm 変速機6段 燃料タンク容量16L ■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17●色:マグナレッド マットジーンズブルーメタリック ●価格:140万3600円 ※予約受注終了

【’22 HONDA CB1100 EX FINAL EDITION】■全長2200 全幅830 全高1130 軸距1490 シート高780(各mm) 車重255kg(装備) ■空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1140cc 90ps/7500rpm 9.3kg-m/5500rpm 変速機6段 燃料タンク容量16L ■タイヤサイズF=110/80R18 R=140/70R18●色:キャンディークロモスフィアレッド ダークネスブラックメタリック ●価格:136万2900円 ※予約受注終了

そんなCB1100を久々に乗ってみると、ゆったり走るのが改めて楽しい。近頃のバイクに比べてズシッとした重量感があり、’80年代初頭までの大型バイクに近い雰囲気だ。まさに鉄の塊で、僕の所有するCB900Fにも似ている。さすがに現代のCB1100はもっと乗りやすいけど、青春時代そのままの気分に戻ってしまう。

飛ばさなくていいかな、と思えるのは、重量感に加え、現行唯一の空冷直4エンジンがその理由だ。DOHCは本来、高回転まで回すためのメカ。淀みなく回転は上昇するが、低中速域でも太いトルクで楽しませてくれるのは珍しい。4000rpm辺りのドロドロ感が心地よく、回転が上がるとシフトアップして回転を落としたくなる。

そして特筆すべきはサウンドだ。’11年の初代は排気音を消す方向だったが、’14年のEXで2本出しとなり、世界統一基準となった’17以降の現行型で劇的に音質が良くなった。懐かしくも野太い重低音を奏で、エンジンの味わいに貢献している。旧型にノーマルで乗りたい人は、このマフラーに交換することをぜひおすすめしたい。

初代以来、空冷直4として進化を続けたものの、昔のエンジンの味わいをずっと大事にし続けている。これは他のバイクでは得がたいテイストだ。

【ライディングポジション】上体が直立したEX[写真下]に対し、RS[写真上]は軽い前傾姿勢。ステップ位置は共通で、ヒザの曲がりはきつくない。足を降ろすとステップに当たるが、両足指先の腹が着き、足着き自体はいい。シート高はRSの方が5mm高いものの、ほぼ同じ印象だ。[身長168cm/体重61kg]

EXとRSを乗り比べてみて、記憶していた以上の”違い”に驚かされた。EXは前後18インチ+ワイヤースポークホイールのクラシカル仕様、RSは前後17インチ+キャストホイールを履くスポーティー仕様で、サスペンション/タイヤ幅/ディメンジョンまで現代的に変更している。エンジンは2台とも前述した特性だが、RSは5000rpm辺りからのレスポンスをやや高めた設定だ。

特に足まわりによる違いが大きい。EXは’69年登場のCB750フォアに端を発する’70年代マシンを思わせる、リヤに乗って後輪で曲げていくスタイル。手前に大きく引いたアップハンドルによって自然とリヤ寄りに座り、フロントに荷重がかけにくい。それでも前後18インチでリヤタイヤが細いため、腰を曲がりたい方向に押し付ければ、パタンと軽く寝る。ただし、そこから鋭く曲がるわけではなく、バンクさせた状態が続く。いかにも往年のCB750フォア風の走りだ。

一方のRSは’80年代、と言いたいところだけど、これを飛び越して’90年代マシンらしいフロント荷重を使うハンドリングに仕上がっている。

前後17インチを使い始めた時代で、上体は軽く前傾し、着座位置もややフロント寄りだ。肩を入れて膝を開き、ハングオフを使うとよく曲がる。EXからRSに乗り換えると曲がりにくく感じるかもしれないが、走らせ方が違うのだから当然と言えるだろう。

フロントフォークはEXより剛性が高く、奥で踏ん張る。さらにもう少し限界が高いラジアルキャリパーと、旧型EXでサーキットを走った際に僕が欲しいと思った装備が全部揃っている。

CB750フォア風のEX。流行のカフェレーサー風スタイルを持つRS。それぞれの外観に合わせて、走りまで年代に応じた造り分けに成功している。しかも同じ1台で20年ほどハンドリングを進化させているのだから、実に面白い味付けだと思う。

高性能&高効率へのアンチテーゼ。マジメな1台だ

僕だったら、選ぶのはやはりRS。バイクで青春を送ったのは’80年代だし、当時はアップハンドルをすべてセパハンにしたいと思っていたぐらいだから、RSがいい。それに足まわりが最初から充実しているRSの方がカスタムの素材としても適している。とはいえ、この車格と重さを考えると、まったり乗れるEXの方が本来のキャラに似合っていると今回の試乗で感じた。

【丸山浩のお気に入りは…やっぱりRS!】’80年代にバイクに乗り始めた僕としては、やはりRSに親近感がある。カスタムの素材として考えても、脚が強化されたRSがイイ!

そんなCB1100にハマるのはどんなシチュエーションか? 意外にも高速道路のクルージングだと思う。

街乗りでは、足着きが悪くなくエンジン特性も素直なのだが、小回りがしにくく、押し歩きも手ごわい。ワインディングでは、250kgオーバーの車重が顔を出し、RSでさえスポーツモデルのように攻めるのは向いていない。ただし、重いバイクを手なずけて振り回す、そんな昔ながらの楽しみ方をしたい人には最適だろう。とはいえ、これらは飛ばした時の話。ある程度の腕があり、ゆったり走ればステージを問わず普通に楽しいのだ。

その点、高速クルーズは大得意。直進安定性が優秀で、特に重量のあるスポークホイールを持つEXは、ドッシリ揺るぎない。また6速ミッションにより抑えた回転数で巡航できるのがいい。リヤキャリアを装着した中古車が多いのも、CB1100がツーリング向きであることを裏付けている。

そして何より、オーセンティックなバイクに乗りたい人、バイクと共にある生活を送りたい人にフィットするバイクだ。空冷シングルを積む弟分のGB350とも似たキャラで、GB好きな若者にも刺さる1台だと思う。ただし、GBはビギナーでもOKだが、CBは車重がヘビーなため、多少の腕前がないと乗り続けるのはキビしい。かといって、仮にCBが軽量だったとしたらチープになってしまう。そこがCBの立ち位置の難しいところだ。

たとえばカワサキのZ900RSは、中身は水冷直4+モノサスペンションなどの最新で実に軽快ながら、外観はクラシカル。一方のCB1100は、空冷直4+リヤ2本ショック、フレームも昔ながらのダブルクレードルで、中身まで昔のバイクを再現している。ホンダは本当にマジメだなと思う。それだけに今回の生産終了は残念極まりない。

CB1100が11年前に登場した際、感心したことを覚えている。当時のホンダは時代に逆行したバイクを造らないイメージだったのに、昔ながらの空冷エンジンを引っぱり出し、最新技術で仕上げてきたからだ。

バイクって、高性能&高効率だけが存在理由じゃない。乗り味や雰囲気を楽しむ良さがある。僕がCB900Fを愛するのも、そんなところが理由だ。

さらに、空冷の持ち味をいかに進化できるか、登場から11年やり続けてくれた。本当にいいマシンを出してくれたなと今さらながらに思う。次期排ガス規制に対応して、ずっと発売してもらいたかったのが正直なところだ。

しかし悲しんでいても仕方ない。今のところネオクラ的なCBとしては水冷直4のCB1300が存在するけど、CB1100とはキャラが異なる。今回のファイナルエディションで、懐古的なCBの需要がまだまだあることをホンダも理解してくれたはず。いちファンとして、レトロ路線を受け継ぐ次期CBの登場を心待ちにしている。

思い出深い… 丸山浩の特に印象に残ったCB1100

【’10 タイプI:外せない初代。特に白が鮮烈!】やはり初代は衝撃。ホンダがあえて時代に逆行したマシンを出してくれたことや、青春を送ったあの頃のフィーリングが再現されていたことに感激した。特にホワイトは斬新で、印象的。

【’11 無限エディション:いかにも旧車な銀エンジン!】初めてオールシルバーのエンジンを採用したのがコイツ。フォアやCB750F/900Fのイメージで、昔の空冷直4CB風だ。ウィズミーで手がけるFZスタイルのカスタムにもピッタリ。

【’14 ブラックスタイル:黒で統一したエンジンがイイ!】シリンダーヘッドまで黒いのは意外と珍しい。エンジンカラーだけでここまで様々な色が選べるバイクも珍しい! ヘッドだけ銀でシリンダーは黒など、自由に組み合わせるのも楽しい。

【’17 RS:”欲しい”脚が全部入り!】現行の第3世代に進化した’17年型RSは思い出深い。長いホンダ空冷直4の到達点と言うべきサウンドに加え、以前から「欲しい」と思っていた足まわりが全部入りだ!

最後にひと言!「CB1100には感謝しかない。ホンダの次期ネオクラに期待だ」

僕のように昔を知る人には青春時代の懐かしさを、現代のライダーには空冷直4の魅力を伝えてくれたCB1100には、もう感謝しかない。生産終了は惜しいのひと言に尽きる。空冷直4の消滅によって、ホンダのネオクラシックバイクがどんな方向に進むのか見守りつつ、さらに魅せてくれる”次期CB”の登場に期待したい!


※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

最新の記事