
●文:モーサイ編集部(阪本一史)
ホークII CB400T(1977年登場)は、“中型免許”設定後のホープだった
ホンダを象徴する形容詞は何かと考えたとき、“頑固な技術屋”や“エンジンへのこだわり”、あるいは“飽くなき挑戦”など、いくつかの言葉が浮かぶ。そうしたイメージは、創業者・本田宗一郎のキャラクターによるところが大きいが、時代時代で少しずつ変化はありつつも、連綿と続いてきたイメージだろう。
もちろんそれは2輪製品にも当てはまり、各時代、先を行くべく開発された数々の車両の中には、当然雄弁に語られる名車もあれば、反対も然り。
そんな中、筆者がどちらにも分類しがたいモデルのひとつとして思い浮かぶのが、1970年代後半に新たな空冷並列2気筒を引っ提げて登場した「ホーク」シリーズである。
ホークシリーズが生まれたのは1977年のこと。
同年5月に400cc版の「ホークII CB400T」が、7月に250cc版の「ホークCB250T」が登場した。当初から自動二輪中型限定免許(当時の呼称・現在は普通自動二輪免許)上限排気量の400ccと、軽二輪クラス向けのスケールダウン版250ccが用意されたわけだが、ホークシリーズ誕生の大きな要因は、1975年施行の自動二輪の段階免許(小型/中型/限定解除)だと言われる。
1975年当時のホンダの中型車ラインナップは、空冷OHC2気筒搭載で1973年登場のCB360Tと、空冷OHC4気筒搭載のCB400Fourだったが、カフェレーサースタイルを取り入れ1974年に登場したドリームCB400Fourは、当初実排気量が408ccであった。そこで、1975年からの中型限定免許へ対応すべく、エンジンを398cc化して1976年から投入した。
1974年に登場したドリームCB400Four。408cc空冷並列4気筒エンジンを搭載し、市販車初の4into1集合マフラーを採用。スポーティーなカフェレーサースタイルで人気を集めた。1976年には“中型免許”に合わせた398cc版が登場。
ひとまずこれら2気筒/4気筒の両車で中型ロードモデルの需要に対応したが、CB360T用エンジンのベースは、1960年代後半に登場したドリームCB350などの350cc並列2気筒、CB400Fourの4気筒エンジンにしても、オイルショック以前1972年登場のCB350Fourベースと開発時期の古いものであった。
結果、性能面で傑出しにくく、しかもCB400Fourは輸出向けの408ccと国内向け398ccの生産になり、量産効率が悪いことなどもネックとなり、400cc向けの新エンジンの開発が急務となった。
そこで登場したのが、ホーク系の新開発・空冷OHC3バルブ2気筒エンジンである。
1977 ホンダ ホークII CB400T
次世代の中型ロードモデルとして、1977年5月に発売されたホークII CB400T。丸みを帯びたこの初期型のフォルムは、通称「やかんタンク」と呼ばれる。アルミリムにスポークプレート(初期はスチール製)をリベット固定した、ホンダ独自のコムスターホイールも当時注目の装備だった。新車価格は31万9000円。
1977 ホンダ ホークCB250T
ホークII CB400Tに続き、1977年7月に発売されたホークCB250T。395ccのホークII CB400Tに対し、ボア/ストロークとも縮小した249ccエンジンは、26ps/1万rpm、2.0kg-m/8500rpmの性能を発揮。初期の同車は、前後輪とも18インチのスポークホイールを採用していた。新車価格は29万9000円。
4気筒以上の性能/静粛性を追求した空冷OHC3バルブ2気筒
1977年登場のホークII CB400Tの広報資料を見ると、「長年培ってきた高度のエンジン技術をもとに、新しい魅力を持つ中排気量2輪車を開発(中略)。従来、このクラスでは満たせなかった、ハイウェイからラフロードまでの走行を余裕のある性能でこなす軽快な2輪車で、俊敏でワイドなスポーティさを兼ね備えた…」といった記述がある。
具体的には、次の3点がホークシリーズが搭載する空冷2気筒エンジンのもっとも大きな特徴だ……
※本記事は2022年2月17日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
Z1とともに、CB750Fourを挟み撃ちするねらいで生まれた、Z1ジュニア=Z650 公害やマスキー法、オイルショックなどが社会問題として声高に叫ばれ始めた1970年代、カワサキは2サイクルのマッハ[…]
意外なる長寿エンジン「ザッパー系」が積み重ねた31年の歴史 2006年12月、ゼファー750ファイナルエディションの発売がアナウンスされ、1990年初頭から続いたゼファー750の16年におよぶ歴史が幕[…]
白バイがガス欠することはあるの!? 今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。 私も10[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | ホンダ [HONDA])
ホンダ「モンキー125」(2024)試乗レビュー この記事ではかわいらしいフォルムと実用性が同居したファンバイク、モンキー125の2024年モデルについて紹介するぞ。初期のモンキー125に近い、シンプ[…]
現代の耐久レーサーはヘッドライト付きのスーパーバイクだが…… 近年の耐久レーサーは、パッと見ではスプリント用のスーパーバイクレーサーと同様である。もちろん細部に目を凝らせば、耐久ならではの機構が随処に[…]
高回転&高出力主義の権化 250クラスでも高性能な直4を望む声が高まっていた’80年代前半、スズキが世界初の250cc水冷直4エンジンを搭載した量産車、GS250FWを投入。以降、ヤマハ、ホンダが追随[…]
0.1ps刻みのスペック競争 日本史上最大のバイクブームが巻き起こった1980年代は、世界最速を謳う大型フラッグシップや最新鋭レーサーレプリカが次々と市場投入され、国産メーカー間の争いは激化の一途を辿[…]
250ccを思わせる車格と水冷2スト最強パワーに前後18インチの本モノ感! 1979年、ホンダはライバルの2ストメーカーに奇襲ともいえる2スト50ccの、まだレプリカとは言われてなかったもののレーシー[…]
人気記事ランキング(全体)
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
静かに全身冷却&最長10時間のひんやり感を実現 ライディングジャケットのインナーとしても使えそうな『PowerArQ Cooling Vest』。その特長は、ファンやブロワー、ペルチェ式ヒートシンクを[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
レブル250ではユーザーの8割が選択するというHonda E-Clutch ベストセラーモデルのレブル250と基本骨格を共有しながら、シートレールの変更や専用タンク、マフラー、ライディングポジション構[…]
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
最新の投稿記事(全体)
2025年モデル概要:インパクト大なシリーズ初カラー カムシャフトの駆動にベベルギヤを用いた、美しい外観の空冷バーチカルツインエンジンを搭載。360度クランクによる鼓動感や等間隔爆発ならではの整ったエ[…]
エイトボール! 王道ネイキッド路線への参入予告か スズキがグローバルサイトでティーザーらしき予告画像を公開した。ビリヤードの8番玉の横には『SAVE THE DATE 4TH JULY』とあり、7月4[…]
収納しやすく持ち運びやすいカード型くもり止めスプレー これからの時期、急に雨に降られて走行する際にシールドが曇りやすくなる。雨の中でシールドが曇ると余計に視界がなくなり、安全運転を阻害する要因となりか[…]
論より証拠! 試して実感、その効果!! 1947年カリフォルニア州ロングビーチで創業し、これまでにカーシャンプーやワックスをはじめ、さまざまなカー用品を手がけてきた「シュアラスター」。幅広いラインアッ[…]
価格はそのままで、バッテリー交換+メンテナンスサービスチケットが付属 株式会社サイン・ハウスは、オートバイ用インカム「B+COM」シリーズより、 「B+COM SB6XR(シングルUNIT)バッテリー[…]