400cc並みの値段と軽さを引っ提げて’14年にデビューしたヤマハMT-07が、平成32年排出ガス規制適合のためにマイナーチェンジを実施。エンジンは最高出力73psを維持しながら新規制をパスし、スタイリングを一新するとともにブレーキを強化した。3代目の実力をチェック!
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヤマハ
’21 ヤマハMT-07 ABS
[◯] 全体的な印象は不変。ミシュラン ロード5は雨でも安心
排ガス規制適合によって魅力が薄らいだバイクは多い。’07年に導入されたユーロ3のときが顕著で、継続モデルについて各メーカーはFI化でこれに対応するも、まだドライバビリティにまで十分な研究が進んでおらず、キャブ時代の味わいを求める声が多く聞かれたのも事実だ。
そんな負の時代を経験しているからこそ、ユーロ5(≒平成32年排出ガス規制)に適合したMT‐07がどう変わったのか、楽しみよりも心配の方がはるかに大きかった。しかしそれは杞憂に過ぎず、傑作とも言うべきMT‐07らしさは健在だった。
まずはエンジン。270度位相クランクを採用する688ccの水冷並列2気筒”CP2″エンジンは、最高出力73psをそのままに、新ECUと吸排気系の変更程度で新排ガス規制に適合した。低回転域かつスロットル低開度からの扱いやすさと心地良い加速感、4000〜8000rpmにかけてのトルクがグングンと上乗せされていく楽しさ、そしてレッドゾーンの始まる1万rpmまで不快と感じる振動がないなど、全体的な印象は規制適合前と何ら変わらない。勾配が10%を超える峠道の上りにおいて、8000rpmから上での伸び上がりが以前ほど力強くはないかな? などと感じたが、新旧を直接比較していないので断言は避けたい。厳しい排ガス規制をパスしてなおMT‐07らしさをしっかりと残したのは、素晴らしいのひと言だ。
ハンドリングに関する変更点としては、タイヤ銘柄がミシュランのパイロットロード4からロード5になったのと、ハンドルバーの幅広化によるライディングポジションの違い程度だ。タイヤについては、土砂降りの中でウェットグリップや接地感の高さを確認することができた。スチール製のダイヤモンドフレームは’14年登場の初代から変わっていないが、前後サスペンションは’18年の2代目でリニューアルされている。旋回力の高さと、それを自由自在に操れるというMT‐07の持ち味は3代目となる新型も健在。加えてライディングポジションのアップライト化によって、積極的なコントロールがさらにしやすくなったと言えるだろう。
[△] アシストはABSのみ。次なる一手に期待する
ライダーエイドなアシスト機能はABSのみ。車両価格や車重などの問題も絡むだろうが、次なる一手としてトラクションコントロールやスリッパークラッチなどの採用を期待してしまう。強化されたというブレーキは、基本的な印象としては先代と変わらない。
[こんな人におすすめ] このクラスには傑作が実に多い。ベテランもぜひ
およそ8年前、買ったばかりのホンダNC750Sから乗り換えようと思ったほど、初代MT-07の傑作ぶりは衝撃的だった。その印象は3代目となる新型も不変。顔付きはより精悍になり、初心者からベテランまで幅広くお薦めできる。
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