今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は43年にわたる歴史の幕を下ろした伝統のビッグシングル・ヤマハSR400/500(フロントドラムブレーキモデル)をあらためて紹介する。まずはこの名車の特徴と歴史について振り返ろう。
フロントドラムブレーキ車は決してお買い得ではない?
’58年に初代が登場したホンダ スーパーカブシリーズや、’32~’74年にハーレーダビッドソンが販売した750ccのサービカー、’39年から約半世紀に渡って生産されたトライアンフOHVツインなど、モーターサイクルの世界にはいろいろな長寿車が存在する。ただし「基本設計をほとんど変えることなく」「250cc以上」という注釈を付けるなら、一番の長寿車はヤマハSRだろう。500の販売は’00年に終了したものの、400の生産期間は’78~’21年まで、トータルで43年にも及んだのだから。
もっとも、トレールバイクのXT500から基本設計を転用して生まれたSRは、デビュー当初は誰もが絶賛するモデルではなかった。それどころか「非力/迫力不足/キックが重い」などという否定的な意見が存在したのだ。
とはいえ、当時の2輪が高性能化に向かって突き進む中、昔ながらのオーソドックスな魅力が満喫できるSRは、ジワジワと支持層を拡大し、’80年代に入るとカスタムの素材として、多くのショップ/ライダーが唯一無二の資質に注目。以後のSRは、爆発的ではなくても堅実な人気を維持し、誕生から10年が経過する頃には定番としての地位を確立することになったのである。
さて、そんなSRの最近の話題と言えば、’21年3月に登場したファイナルエディションが新車価格の倍以上で取り引きされていることが有名だが、当企画で取り上げるのは適度に価格がこなれた中古車=’85〜’00年のフロントドラムブレーキ車である。ただし、今回の取材に協力してくれたAAA(スリーエー)の田島直行氏によると、’00年型以前のSRは狙い目とは言えないそうだ。
「その年代だと、良好なコンディションの中古車は少なくなっていますし、純正部品は欠品が増えていますからね。もしキャブレター車にこだわるなら、電装系が以後の年式とは微妙に異なる’01~’02年型は避けて、’03~’08年型を探したほうがいいと思いますよ」
そう語る田島氏ではあるが、同店にはフロントドラムブレーキ車や、第1世代と呼ばれる’78〜’84年型を長く愛用中のお客さんが数多く存在する。その事実を考えると、後年式車の部品を流用して性能を回復/維持することは十分に可能なようだが…。
これからSRを購入する場合は、安易に古いモデルに手を出すと、本来の資質を取り戻す整備費用が高額になり、結果的に「’03~’08年型の極上車が買えたかも?」という状況になる可能性を頭に入れておくべきかもしれない。
SRの進化:大雑把に分類して4つの世代が存在
SRは4つの世代に大別できる。まず初代=’78~’84年型のわかりやすい特徴は、フロント19インチ+ディスクブレーキと、強制開閉式のVMキャブレター。細身のガソリンタンクや灯火類なども以降のモデルとは異なっている。
’85~’00年の第2世代は、フロント18インチ+ドラムブレーキを採用し、キャブレターを負圧式のBSTに変更(ただし初期モデルはVMを継承)。ステップは大幅に後退したが、’98年型以降は本来の位置に戻されることとなった。
なお’90年代末には一部で生産終了が噂されたSRだが、’01年にはAIS(エアインダクションシステム)の導入によって排出ガス規制をクリアした第3世代に進化。フロントブレーキのディスク化と新世代のBSRキャブレターの採用も、当時は大きな注目を集めた。
’09年から発売が始まった第4世代=最終型は、時代の要求に応えるため、電子制御式フューエルインジェクションを採用。外装部品はすべて刷新され、扱いやすさを高めるため、クラッチやキック関連部品なども見直しを受けている。
中古相場は40~70万円:生産終了を契機に全年式が上昇中
ひと昔前は10~20万円台の個体がゴロゴロしていた…ような気がする’85~’00年型SR。プレミアム価格になったファイナルエディションに引っ張られる形で、近年の中古車相場は着実に上昇中。ちなみに田島氏がオススメしてくれた’03~’08年型の価格は、’85~’99年型とほぼ同じか、ちょっと高い程度である。
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
SR400ファイナルエディション/リミテッド 概要 '78の初代発売以来、環境規制適合化をはじめとする数々の改良などを受けながらも、空冷OHC2バルブ単気筒エンジンの基本部とキックのみの始動方法、一部[…]
あなたにおすすめの関連記事
'21 ヤマハSR400ファイナルエディション [◯] この振動は本物の証だ。ネオクラとは格が違う 私が初めてSRに触れたのは'90年代前半のこと。レーサーレプリカブームの末期であり、その少し前にはカ[…]
「あのときと同じ鼓動だ!」 石塚さん35年前の思い出バイクは「ヤマハSR400」です。おぉぉ~ 石塚さんはバイク乗りだったんですね。しかもSR400とは。 SR400は'78年にデビュー。「これぞ、ザ[…]
単気筒好きに訴えかけるパルス感に浮気しそう!? まず驚いたのは、GB350が想像していたよりも乗りやすかったこと。排気量差に反して、車格としてはSR400よりもGB350のほうが大きいので、足着きや取[…]
雑味のないパルス感のGB350。振動にレトロを感じるSR400 ヤマハのSR400は、'10年型での燃料供給インジェクション化、'19年型のキャニスター追加など、近年は数々の熟成を受けて環境規制適合化[…]
洗練されたメカのGB。古典を今に伝えるSRGB vs SR スタイリング比較GB vs SR ライディングポジション比較GB vs SR パワーユニット&シャーシ比較GB vs SR 装備比較 空冷シ[…]
最新の記事
- 2025年「56レーシング」チーム体制発表! 13歳の富樫虎太郎は全日本J-GP3フル参戦、新たに9歳の木村隆之介も加入
- Wチャンピオンを手土産に世界に再挑戦!【國井勇輝インタビュー】
- 「いつから、いくら下がる?」ついにガソリンの暫定税率廃止へ! 新原付の地方税額も決着……〈多事走論〉from Nom
- 【2024年12月版】シート高780mm以下の400ccバイク10選! 地面に足が着くのはやっぱり安心
- 「これを待ってた」ホンダ新型CB400フルカウル「CBR400RR/CBR400R FOUR」スクープまとめ「かっけー!」
- 1
- 2