
台湾の三陽工業が製造するSYM(エスワイエム)は、スクーターブランドとして世界的に知られているが、欧州や南アフリカではアドベンチャーモデル「NH T」シリーズも人気だという情報を聞きつけた。そこでオフロードマシン総合誌『ゴー・ライド』編集部では、原付二種モデル「NH T125」の実力を林道ツーリングでテスト。まずはその価格や装備に驚かされたが、果たしてその走りたるやいかに!?
●まとめ:ゴー・ライド編集部(小川浩康) ●写真:関野温 ●取材協力:SYM JAPAN(モータリスト)
振動のないエンジンとスムーズな乗り心地で林道も充分走破できる原二アドベンチャー
個人的には、高品質ながら求めやすい価格設定で、まさに”コストパフォーマンスのいいスクーターブランド”というイメージをSYMには抱いていた。そのアドベンチャーモデルとなる「NH T」には125/200がラインナップされ、36万3000円/39万9300円という価格が設定されていることもあって、求めやすさを重視したモデルだと思っていた。

【SYM NH T125】■全長2068 全幅860 全高1195 軸距1405 シート高790(各mm) 車重142kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 124.1cc 10.8ps/9000rpm 0.95kg-m/7500rpm 変速機5段 燃料タンク容量11L ■タイヤサイズF=100/90-19 R=130/80-17 ●価格:36万3000円 [写真タップで拡大]
果たして求めやすさはそのとおりだったが、その走りは予想以上。装備も充実していて、高速道路を使わないと決めていれば、普段使いから林道ツーリングやロングツーリングまで、これ1台でこなせるリアル・アドベンチャーマシンとして完成していた!!
明るいLEDヘッドライト/USBソケット/センタースタンド/大型リヤキャリア/ABSなどを標準装備し、その仕上がりには安っぽさが皆無で、スイッチ類の操作性も良好だった。
エンジンは極低回転ではトルクの細さを感じるものの、アイドリング以上にアクセルを開けるとトルクに粘りが出て、スムーズな加速を発揮してくれる。特筆すべきはレッドゾーン開始の9000回転までストレスなく吹け上がり、さらにレブリミットまで不快な振動を発することなくスムーズに回っていくこと。シフトチェンジしてトルクバンド(7500回転~)をキープをすれば、ダラダラと続く上り坂でも意外なほどの登坂力を発揮してくれた。
さらに、スムーズなのはエンジンだけでなく、乗り心地もだ。舗装路ではタイヤの接地感がよく、前後サスも初期からよく動き、余分な衝撃のないフラットな乗り心地を実現している。振動がなく、乗り心地もよく、エンジンも扱いやすいこの乗り味はライダーに負担をかけないので、ロングツーリングに向いた乗り味だと思えた。
林道では剛性の高いタイヤが路面からの衝撃を吸収しきれず、ゴツゴツとした感触が手に伝わってきた。だが、そのタイヤはダートでも意外なほどのグリップ力を発揮し、トルクの粘りもあって予想以上の走破力を発揮する。フロント19インチのおかげでハンドルも振られにくく、取りまわしの軽い車体と足着き性のよさもあって、林道ではアドベンチャーマシンよりもトレールマシンに近い扱いやすさが感じられた。マディやガレ場での無理は禁物だが、取りまわしは125らしい軽快さなのでUターンも苦にならず、価格の安さだけではないツーリングマシンとしての完成度の高さに驚かされたのが正直なところだ。
原付二種なので高速道路を走行できないが、そこを踏まえておけば、安かろう悪かろうではなく、安全安心に幅広いシーンで楽しいバイクライフを味わえる1台となるはずだ。今回は125のみの試乗だったが、水冷エンジンを搭載する200の走りも大いに期待できそうだ。

[左]しなやかに作動する正立フォークはストローク量140mmを確保。[右]ダートでの良好なトラクションに貢献するリヤサス。奥に見える銀のパーツはABS制御ユニット。ABSは干渉し過ぎない設定で乗りやすい。 [写真タップで拡大]
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