新型スズキGSX‐S1000の実力を検証する今回の企画。本記事では、ライバル対決として’21年夏に国内登場した3代目ヤマハMT-09SPと、カワサキの直4ベストセラー・ニンジャ1000SXの2台もワインディングに持ち込み、テスター丸山浩氏が比較試乗を行なった。
●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:スズキ
ヤマハMT-09:まったく異なる峠の世界観
まずは同じスポーツネイキッドのMT-09からだ。試乗したのはフロントにKYB、リヤにオーリンズのサスペンションを装備した上級版のSP。STDよりも路面追従性や接地感が向上しており、攻める走りをした際に暴れそうなマシンをコントロールできるベテランであるほど、その恩恵を実感できる。
そんなSPをもってしても、GSX‐Sと乗り比べると純粋にワインディング性能だけ見ると勝てないと言わざるをえなかった。その最大の理由は主にMTならではのライディングポジションから来るもので、GSX‐Sから乗り換えると驚くほどハンドル位置が高い。それにシートも腰高感があって、まるでモタードかオフロードに乗ってるかのように錯覚するほど違いがある。ワインディングを走るうえではこのハンドル高がネックとなって、もうちょっとフロントに荷重をかけたいのにそれができない場面も多々。攻める走りをするのはなかなか難しい。
だが結論から言うと、MTに関してはそんなことはどうでもいい。なぜならMTはロケット加速を見せるジャジャ馬のような3気筒を、あえてロデオのように躍動しながら乗り回す独特の世界観にこそ楽しみがあるからだ。同じスポーツネイキッドでありながら、スポーツライディングの王道を行くGSとは求めている世界がまったく異なっている。この2台に優劣を付けるのは意味がない。どちらの世界観にも魅力がある。あとはそれがライダー自身の性に合うかだけの問題だ。また、MTには兄弟車のトレーサー9GTもある。基本に忠実なスポーツライディングを楽しみたいなら、実はこちらの方がうまくまとまっている。同じ3気筒でもまた性格が異なるので試してみてほしい。
カワサキ ニンジャ1000SX:マルチさが魅力。侮れない速さを峠で発揮
次にニンジャ1000SX。こちらはフルカウルでちょっと毛色が違うが、リッター直4でカワサキは外せないのでチョイスだ。ニンジャはこのSXになってツアラー色がより強くなったが、先代時代からスポーツ性能でも評価の高かったモデル。今回もパワーモードをスポーツにすれば、なかなか元気な走りを見せてくれた。
だが、可動式スクリーン/グリップヒーター/クルーズコントロール/ETCなど快適装備てんこ盛りの車重はGSX‐Sより22kgも重く、またがった感覚もひと回り大きめな印象。チョイ乗りにもちょっと気合いがいる。パフォーマンスを最大限発揮することを主眼に置いたシンプルで軽量なGSX‐Sのパッケージングとは対照的だ。
そして、そのエンジンが決定的。スーパースポーツ譲りのGSX‐Sの直4はその元気さでニンジャを上回る楽しさを峠では発揮する。もっとも、峠に限定せずツーリング全体で見ればニンジャのマルチ性能ぶりはなかなかの魅力。それに快適&電子装備てんこ盛りなのに価格はGSX‐Sと5万5000円しか変わらないというのも悩むところだろう。新型GSX‐Sにもカウル付きのFがあれば、ニンジャは真向対決のライバルになる。取材時点ではまだ発表されていないものの、新型Fの登場に期待したい!
ライディングポジション比較
主要諸元比較
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