’21年8月から9月にかけて、東京オートバイ協同組合(AJ東京)が令和4年度予算へのバイク駐車場整備等に関する要望のため、都内各政党を訪問した。都議会では自民党/公明党/都民ファーストの会東京都議団へ、区議会では杉並区議会自民党/江東区議会公明党/板橋区議会公明党へ訪問または文書の提出を行なった。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
バイク利用の現状を捉えた要望を提出
AJ東京は都内のバイク販売店による団体で、江東区での条例改正(アーカイブ記事参照)など都内におけるバイク駐車環境の整備に大きな実績を残してきた。今回紹介する活動は、AJ東京という2輪関連団体が、都内の各自治体が整備するバイク駐車環境の改善に対して、その予算の確保や条例改正などをお願いに行くというものだ。本記事ではまず、その要望書をひも解く。
AJ東京は要望書において、新型コロナ禍における現状も踏まえつつ、その背景を以下のように説明している(筆者要約)。
- 三密を避けるため、通勤通学や新たな趣味としてバイク利用者が増えた
- 利用者が増えているのに、首都圏ではバイク駐車場が不足している
- 自工会/二輪車委員会による調査では、都内2輪ユーザーの6割以上が駐車場数に不満を持っている
- 都内の2輪駐車違反件数は’20年に2万9千台と減少傾向にあるが、取り締りを受けることで電動アシスト自転車への切り替え傾向が今も続く
- 原付一種には2段階右折、30km/h規制があり、原付二種の需要が増えているが、都内自治体の自転車条例の多くは自転車を50cc以下と定めているため、原付二種を駐車できない
- これらの理由により、バイク駐車場不足は都民バイクユーザーの利用を妨げ、死活問題となっている
新型コロナ禍において、通勤通学のみならずツーリングなど趣味に関する領域までバイク利用者が増えているのに、駐車環境整備においては受け入れ体制が整っていない現状を訴えているのだ。実はこうした当然とも思える訴えが、自工会以下バイク業界からまったく聞こえてこなかった。しかし、AJ東京は駐車場の整備に権限を持つ各自治体の議会議員にしっかり直接的に訴えている。こうした訴えがなぜできないのか?2輪業界のまったくもって不思議なところだ。
社会に役立つバイクの有効活用は、新型コロナ禍だけでなく災害対応にも必要な考え方だ。10月7日に発生したマグニチュード5.9の千葉県北西部地震では、電車が動かなくなったことで帰宅困難者が街にあふれた。テレワークの推進下であっても、人が集まった駅構内での感染リスクは高まったはずだ。彼らのうち1割でもバイク通勤ができていれば…と思う。
新型コロナ禍の現状を受け止め、社会課題として正しく認識し、バイクという乗り物が貢献できることはないかと常に考えを巡らせなければ、バイクの利用環境が良くなるわけがない。小池都知事が進めるゼロエミバイク(EV化)も、駐車場がなければ普及しない。次記事でも引き続き要望活動について紹介する。
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