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CB1100のファイナルエディションをもって、遂に市販車ラインナップから消えることとなる”空冷4気筒”。CB1100が登場したのは’10年で、当時の目標は”機能美と気持ち良い走りを両立させる”こと。どのようにしてホンダのエンジニアは、この稀有な存在を世に送り出したのか。ここでは当時の資料を紐解き、初代CB1100の技術面を改めてクローズアップ。数値化しにくい”乗り味”を追求するため、開発陣がいかに心血を注いだかが伝わってくる。その情熱は、最終型となるファイナルエディションまで受け継がれているのだ。
●文:ヤングマシン編集部(沼尾弘明) ●外部リンク:ホンダ
【’10 HONDA CB1100】国内最後の空冷4気筒モデルとなった、CB1100の初代は’10年に登場。’92年のCB750以来、約18年ぶりに新開発された空冷直4CBだ。アップハンドルのタイプI(写真)と、グリップ位置を低くしたタイプIIを用意していた。
開発のキーワードは”鷹揚(おうよう)”
「鷹が悠々と大空を舞うような自由感を楽しんでほしい」
開発キーワードとなった”鷹揚”を実現すべく、ホンダのエンジニアたちが最新技術を投入した空冷直4が新設計されることとなった。CB1100の誕生前夜の話だ。
【コンセプトは”大人の所有感を満たすエモーショナル空冷直4ネイキッド”】初代開発時のレンダリングスケッチ。人が跨った状態で、バイクやエンジンがどう見えるのかを考えてデザインされていることが分かる。
こちらはエンジン単体のレンダリングスケッチ。空冷エンジンの要である冷却フィンは、深く刻まれ、発熱量や部位に応じて面積を最適化。工作精度に優れる新製法で、わずか2mmという極限の薄さを実現。「大人が欲しい」と思えるバイクを妥協なく追求した結果、存在感抜群のエンジンが生まれた。
緻密な設計で実現した”心地よさ”と”機能美”
開発当時、設計のスタート地点は実は一般的な最高出力や最大トルクではなかった。「オーナーにどう感じてほしいか」から、その開発がスタートしたのだ。
そこで気筒間の吸気バルブタイミングを敢えてズラし、PGM-FIによる高度な制御を実施。これらにより、燃焼ガスが長い間ピストンを押し下げていく感覚と、直4らしい伸び切り感の両立に成功した。
【始まりは最高出力や最大トルクでなく「どう感じてほしいか」】初代CB1100の吸/排気ポートの断面図。高出力化には不利だが、バルブの挟み角を広げてDOHCのカムシャフト軸間を広く取ることで美観を追求。同時に味わいを造り込むという異例の開発手法だった。
【”トルクの厚み”を感じさせる燃焼感へ】1&2番と3&4番シリンダーの吸気側カムタイミングを敢えてズラし、表情のある回り方を実現。4000rpmまでの燃料噴射マップも緻密で、ゆったり走れるトルク特性とスムーズな伸び切り感を両立している。
“空油冷”とも言える冷却システム
空冷エンジンを新規開発するにあたって、当然直面するのは温度の管理。これについては、複雑なオイルラインや通風孔を組み合わせて水冷に迫るほどの冷却性能を確保。
また当時、性能だけではなく2mmという極薄の冷却フィン、美しい配置のカムシャフトなど外観も造り込んだ。
まさに開発コンセプトである”大人の所有感を満たすエモーショナル空冷直4ネイキッド”を具現化することに成功したのだ。
初代CB1100の冷却システム図。最も高温になる排気ポートや点火プラグ付近にエンジンオイルを誘導。
空冷式オイルクーラーを備えるほか、流路にバイパスを設けることで、プラグ座の冷却効果は抜群だ。ちなみにクランクケースは水冷のCB1300譲り。
プラグ自体に風が抜けるシリンダーヘッドとシリンダー形状を採用。
鉄に比べ、温まりやすく冷めやすいアルミ製シリンダースリーブも放熱性に貢献する。
車体の面でも”鷹揚”を追求
もちろん開発の初期から車体も”鷹揚”を追求し、スキルを問わない自然な操縦性を目指した。メインフレームにはφ38mmスチールパイプを用い、しなやかで優しく、タメ感のある味わいを演出。
威風堂々のアップハンドル仕様=タイプIとスポーティなタイプIIのライディングポジション比較。こうして見ると、タイプIIはけっこう前傾が強い。
こちらはCB1300スーパーフォアとの、ライディングポジション(上)とシート設計(左)の比較。CB1100のほうが足つき性が良くなるよう、設計されていることがわかる。エンジンを美しく見せつつ、スリムで自然なライディングポジションも意識した設計だ。
登場当時の主要諸元
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