青木宣篤の上毛GP新聞

青木宣篤、モトGPを斬る!!【ペナルティを科すならなるべく公平に】

新型コロナ禍でも熱いレースが繰り広げられているモトGPだが、ちょっと気になる出来事も。最近、妙なペナルティでレースに水を差す場面が目立つ気がしませんか……?


●監修:青木宣篤 ●写真:MotoGP.com Yamaha Ducati Suzuki Redbull

誰が得をしているんだ??

これからいろいろ書きますが、ワタシとしてはあくまでのレーシングライダー側の立場に立ってモノを申しておりますので、あしからずご了承ください。

最近のモトGPを観ていると、「せっかくライダーが限界ギリギリの走りをしてるのに、水を差してくれるなよ……」というジャッジが目立つ。

たとえば予選。ライダーが黄旗を通過した時のタイムは、それがベストタイムでも無効となってしまう。確かにモトGPのレギュレーションには、「黄旗が掲示されている時はライダーは減速しなければならない」と明記されている。ならばタイムを更新しているはずはない。だからタイムは無効、というロジックだが、う、う〜ん…。

予選の残り1分なんて、誰もが限界を超えた領域で頑張ってるわけですよ。転倒だって起こり得る。それで黄旗が掲示され、他のライダーのタイムが無効になるって、ワタシとしては釈然としない。

安全に配慮するのは重要なことで、ライダーとしては大変ありがたいのだが、せっかくの努力をスポイルするようでは意味がない。

ライダーはたいてい、コース上の危険に注意を払っている。ほとんどの事態には気付いているものだ。自分の身に直接降りかかってくるリスクなのだから、当然だ。

だが、運営側としては安全を優先すればするほど、ちょっとしたことでも黄旗を掲示したくなる。結果、集中最高潮という場面で「その走り、キャンセルね」と言われることになってしまうのだ。

モータースポーツは、もともとある程度のリスクを抱えながら行う競技。ペナルティの発動も、競技としての醍醐味を損なわない程度に配慮していただきたいものだ。

…という意味では、「トラックリミット」もどうかと思う。縁石の外側にある緑色に塗られたエリアに前後輪が入ってしまうと、トラックリミット違反でペナルティが科せられてしまうのだ。

もともとF1で導入されたペナルティだが、いろいろ不透明な点が多すぎる。1周目は「多くのライダーが密集しているから」という理由で違反は記録されず、最終ラップはレース結果に影響したとみなされた場合に限って特別なルールが適用される。トラックリミットを超えたことで得したかどうかで、違反か無罪かが決まるのだ。

…ワケが分かりません。トラックリミットを超えたかどうかは機械判定だが、得したかどうかを判断するのはモトGPスチュワード、つまり人間による判断で、非常に主観的な判断になる。「えっ、今のでアウト?」「いやいや、今のはセーフだろう」といった曖昧さが生じるのが、ワタシには受け入れがたい。

第7戦カタルニアGPではファビオ・クアルタラロがオーバーランしてコース外を走行し、ショートカットとみなされてペナルティとしてレースタイムに3秒が加算された。クアルタラロは何の得もしていないのに……。

ペナルティは、大多数が納得できる公平なものでなければならないとワタシは思う。審判団のチェアマンは元世界チャンピオン。まさかドクターペッパーを飲みながら判断しているわけじゃないだろうが…、う、う〜ん…。

【遠回りしたのに…】カタルニアGP決勝、1コーナーへの進入でフロントをすくわれオーバーランし、ロングラップペナルティの走路を走ったクアルタラロ。まさかのショートカットと見なされ決勝タイムに3秒加算のペナルティ……。

【最終ラップの大接戦! その1】第6戦イタリアGPの最終ラップ、KTMのミゲール・オリベイラとスズキのジョアン・ミルが激しい接戦に。そして5コーナーの立ち上がりで……。

【その2:やっべ! はみ出した!!】オリベイラがトラックリミットを超えてしまった。写真中央の白線の左側。薄灰色に見える部分が、カラーでは緑色。ここに前後輪が入っている。

【その3:オレもはみ出したっ!!】だが直後にいたミルもトラックリミットを超えていた。結局、「どちらも得していないよね」との判断で両者おとがめナシって、何なのよ……。


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