●監修:青木宣篤 ●写真:Ducati MotoGP.com
’03~’06:メインフレームレスという挑戦
モトGP開始翌年の’03年、デスモセディチGP3でデビューを果たしたドゥカティ。前方に鋼管トレリスフレームを配しながら、エンジンを主要車体構成部品とするメインフレームレス構造を採用していた。低荷重域では非常に不安定だが、意を決してバチッと高荷重をかけるとビシッと安定する。気難しい特性は量産車とよく似ていた。
’07~’08:難物を王座に押し上げた天才
年を追うごとにアップデートを続けたが、低く、長く、接地感が得られにくいデスモセディチは、パーシャルがないと言われるほど猛々しいエンジンの出力特性もあって、乗りやすいマシンとは言いがたかった。’06年までの4シーズンでわずか4勝と苦戦していたが、モトGPが800cc化した’07年、ケーシー・ストーナーが加入するや瞬く間に10勝をマーク。それまでの不調がウソのような快進撃で、なんとチャンピオンを獲得してしまった。これはもう天才ストーナーだからできたワザでしかない…。
’09~’10:短命に終わったカーボンモノコック
GP9でカーボンモノコック構造を採用。これがまた、曲がらない。ストーナーは’09年に4勝、そして’10年に3勝を挙げているが、これこそ天才のワザ。その様子を見たバレンティーノ・ロッシが「オレならタイトルを獲れるけどね」と、落とし穴にハマるのだった…。
’11~’12:もうひとりの天才=ロッシには乗りこなせず…
’11年に意気揚々とドゥカティ入りしたロッシだったが、カーボンモノコックのGP11に乗るや「こりゃアカン!」と驚いた。エンジンも猛々しく、もっとも乗りやすいとされるYZR-M1からの乗り換えはもはや不可能だった。シーズン途中で素材をアルミに変えてみたものの、やはりダメ。そしてロッシらしい強権を発動し、’12年にはそれまでの歩みをすべてひっくり返し保守的なアルミツインスパーフレームを投入させた。
’13:いぶし銀参入でまっとう化
2シーズンでドゥカティを逃げ出したロッシに代わり、’13年、開発能力が高いアンドレア・ドヴィツィオーゾが加入。負の遺産は大きくなかなか成績は出なかったが、マシンはジオメトリーを含めまともな方向に。
’14~’15:縦剛性向上に執着し始める
エンジンパワーという武器を生かすべく、ドゥカティはブレーキング性能をどんどん高めていった。この頃から縦剛性の増強に執着。「縦を強くして曲がらないなら、横を弱めりゃいんじゃね?」というノリを感じるが、そううまくはいかない。適切なねじれ剛性が得られず苦しみ始める。ドヴィは問題点を指摘していたのだが……。
’16~’19:制動性能にこだわりすぎ
どうにかフロントの接地感を得ようと空力デバイスにこだわりまくる一方、車体作りは迷走を続ける。制動性能は相変わらず高く、エンジン特性も改善されたが、コーナーのボトムスピードが高められず、旋回性は劣っていた。
’20~’21:ドヴィツィオーゾ離脱がどう出るか
マシンの問題点を指摘し続けるドヴィツィオーゾと、ゼネラルマネージャのジジ・ダッリーリャの軋轢が深刻化。ついに’20年をもってドヴィは離脱する。最新のGP21はまたもハデなウイングレットが目を引くが、構成に大きな変化はなさそう。果たして……。
マシン&ライダーの変遷まとめ(’03〜’20)
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