●文:ヤングマシン編集部(青木宣篤完全監修) ●写真:MotoGP.com/高橋剛
新型コロナ禍、無観客、陽性反応──。いつもとはまったく違うシーズンだったが、モトGPマシンの咆哮の迫力は変わらない。ハイレベルな激戦を繰り広げたマシンたちの素性について、元GPライダー・ノブ青木がスズキ/ヤマハ/ホンダ/ドゥカティ/KTMのマシンを振り返る。
スズキGSX-RR:奇跡の好バランスでタイトルをもぎ獲る!
’20シーズン、ミシュランが投入した新型リヤタイヤがGSX-RRにベストマッチ! しなやかなフレームによりエッジグリップでコーナリングするGSX-RRのパフォーマンスを最大限に引き出してくれた。
もともとタイヤに優しいキャラクター。一発のタイム出しにはあまり向いていないが、タイヤがタレてくるレース後半になった時こそ強さを発揮する。
今季、リンスもミルも終盤にスルスルッとポジションを上げるシーンが何度も見られたが、まさにこの特性のメリットを生かし切った展開と言える。タイトル獲得は、マシンとライダー、タイヤがバチッと合った好バランスの成果だ。
ヤマハYZR-M1:まとまりは良好だがフロント依存が仇に
勝利数では他を圧倒したのがヤマハだ。ライダー4人のうち3人が勝っているという結果だけ見れば、実はもっともまとまりのいいマシンがYZR-M1だったと言える。
だが、不安定さが最大の敗因。シーズン序盤に連勝したクアルタラロも途中から失速し、調子を取り戻すことはできなかった。他のライダーも勝ったり下位に終わったりと、浮き沈みが激しかった。
M1の硬めのフレームは一発タイム出しこそ得意としていたが、フロント依存が高いという欠点があったようだ。今年のミシュランはリヤタイヤのグリップが向上した分、フロントが押されるようにして転倒するシーンがたびたび見られた。
ホンダRC213V:特殊なマシンの乗り方をライダーが体得した
RC213Vが「マルク・マルケススペシャル」であることをホンダは否定し続けているが、誰がどう見たって、ねぇ(笑)
ヘッドパイプを中心にフロントまわりがガチガチな車体特性は、マルケス兄級のハードブレーキングが前提となっている。エンジンのイナーシャも極端に軽く、独特な乗り味になっているはずだ。
あまりに特殊ゆえ、マルケス兄以外は好成績が出せなかったRC213Vだが、ライダーたちが乗りこなしに成功しつつある。
シーズン終盤になってからのアレックス・マルケスと中上貴晶の活躍は、よりハードなブレーキングができるセッティングが見つかったからだろう。2021シーズンも大いに期待できそうだ。
ドゥカティ デスモセディチGP20:ドヴィの警告通り旋回性を上げていれば…
フレームとタイヤのマッチングにもっとも苦戦。エッジグリップが高まった一方で、相対的な比率としてトラクションエリアのグリップが下がり、強力な立ち上がり加速というドゥカティの得意が生かせなかった。ドヴィツィオーゾは以前から旋回力向上を訴えていたが…。(※追記:最終戦でスズキ勢がふるわず、ドゥカティは’20シーズンのコンストラクターズタイトルを獲得した)
KTM RC16:特殊なマシンに乗れるライダーを育てた
鉄パイプフレームにこだわるがゆえに、フロントタイヤを使い切れないという独特な特性のRC16。リヤタイヤがうまく機能した時にだけバチッと性能を発揮するピンポイントマシンだ。この特性で育ってきたライダーたちが”ときおり”好成績を残すことで、目立って見せた。
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