静岡県の三ない運動はどこに向かおうとしているのか。去る1月28日に行われた「第2回高校生の自動二輪車等の免許取得に関する意見交換会」の議事概要が公開されていたので、目立った点を紹介しつつ考察したい。第1回とは違い、PTA関係者や校長協会らの出席はなかったが、第2回のテーマは「交通安全教育」であり、静岡県教育委員会健康体育科(以降、県教委)が、最近の情勢や他県の事例等について、出席団体から意見を聞く/意見を求めるという形だった。
●文:田中淳磨(輪)
第2回意見交換会は静岡県教委のヒアリングに終始
結論から言ってしまえば、この意見交換会で何かの答えや方針が示されたわけではない。主催である県教委には「こうしたい/こうすべき」という主体性はなく、あくまでも学校との仲介役というスタンスだ。なお、県教委の基本的な認識は、三ない運動の精神はPTA(県高P連)で生きており、そのスタンスは継続されているが、免許取得やバイク乗車についてどうするかは各校の判断に委ねられているというものだ。
本当の声を知り、議論を
日本自動車工業会からは「県教育委員会としてのリーダーシップを発揮することが必要ではないか」との意見も出ているが、県教委としての対応は難しそうだ。埼玉県のように、県教委が全県的に三ない運動を推し進めていた自治体ならば、交通安全教育への転換となった時でも全県的(公立高校)に展開できた。
しかし、静岡県の場合は「一定の条件付きで許可している」とはいえ、全日制の生徒が免許を取得した実績が直近2年間でゼロ、3年前でも通学距離の問題から許可した高校が2校あったのみと、ほとんどの公立高校では三ない運動が校則に残っている可能性が高いと思われる。各校の判断に県教委は関わっていないのだから、ひとつひとつの学校の判断を個別に変えていくしかなく、それは容易なことではない。
なお、各校の判断状況について、県教委はまるっきり把握していないわけではない。「通学以外でのバイク利用については生徒指導上の理由等により各学校が制約を設けている」「許可申請書は各学校ごとに様式を定めて書面で確認している」「許可には部活動への加入、成績不良の科目がないといった条件を定めている学校もある」といった具合だ。
とはいえ、県教委は各校の方針について統計的な把握はしていないようだ。自工会が県教委に対して「生徒と保護者に対して免許取得についての意識調査を実施してはどうか」と提案しているが、県教委は「そういった提案があったことは学校へ示していく」との回答にとどまっている。
また、日本二輪車普及安全協会は、第1回意見交換会で県PTA出席者から出された「片道17kmを自転車通学する子供がいる。免許取得の判断は家庭に任せればよい」という意見を踏まえ、「(PTA関係者に)実際の話を聞きたい」と要望した。これについて、県教委は「Zoom(オンライン会議)の活用も含めて考えていきたい」と回答している。
現在は県教委が有識者にヒアリングしている状態だが、意識調査が今後行われ、生徒や保護者の”本当の声”が明らかになり、交通安全教育への転換に向けた「仮定の議論(もしも三ない運動がなくなったら)」が起こっていくことに期待したい。
第2回 高校生の自動二輪車等の免許取得に関する意見交換会
- 日時:’21年1月28日(木)14時~15時40分
- 場所:静岡県庁西館8階 教育委員会議室
- 主催:静岡県教育委員会健康体育課(担当課)
- 出席団体等:(一社)日本自動車工業会 (一社)日本二輪車普及安全協会 (一財)静岡県交通安全協会 (一社)静岡県指定自動車教習所協会 静岡県警察本部交通部交通企画課
※意見交換会の概要はインターネット上に公開されている。→ PDF
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