二輪車利用環境改善部会レポート#38

三ない運動について静岡県の高校PTAからなされた提言とは?【免許取得の諾否は家庭が判断すべき】


●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)

静岡県教育委員会による意見交換会開催

’20年10月30日、静岡県教育委員会健康体育科(以降、県教委)による「高校生の自動二輪車等の免許取得に関する意見交換会」が開催された。2輪業界からも日本自動車工業会/日本二輪車普及安全協会が参加し、有識者としての立場から意見を述べた。

開催のきっかけは、文教警察委員会での田口章県議会議員による質問だ。’17年の第67回全国高等学校PTA連合会(静岡県大会)での三ない運動の進め方の見直しのほか、公共交通機関の衰退/初心運転者事故率の高さといった県の課題について、さらに選挙権年齢の引き下げ/自主自律の教育など社会情勢を鑑みて、免許取得/安全運転教育の実施/バイク通学の実現を提言した。

この件について県教委に確認したが、現在のところは意見交換会をもって静岡県の三ない運動をどうこうしようというものではないようだ。とはいえ、各高校側の免許取得やバイク通学の許可条件、交通安全指導の内容等に影響を与える可能性もありそうだ。

PTAから提言された、免許取得とバイク通学

三ない運動は、’12年の全国高等学校PTA連合会(和歌山大会)以降、マナーアップ運動への転換を掲げ、全国組織的な活動は終了したものの、各都道府県市の高P連が独自に運動を展開しており、免許取得やバイク通学の判断は各校ごとの規則による所が多い。 静岡県も、三ない運動は「各校の判断に委ねられている」状態にある。県の教育委員会として指導要項等に三ない運動を盛り込んだり、各校に通達を出しているわけではないが、’82年の全国高等学校PTA連合会(仙台大会)での「バイクの三ない運動」特別決議以降、県教委も歩調を合わせ、交通事故防止と非行防止の立場から三ない運動を基本姿勢として指導してきた。今なお、公立高校で免許取得を許されているのは、事実上、一部の定時制高校のみであり、全日制高校の許可生徒数を見ればわかる通り、その数は極端に少ない(表1)。

※高P連:”高等学校PTA連合会”の略称。都道府県および政令指定都市単位で結成された、高等学校PTA組織の連合体。元文部科学省の所管で現在も同省から毎年表彰が行われている。

全日制の高校で免許を取得した生徒は少なく、’20年はなんと0人! 静岡県には伊豆半島を含めて中山間地も多く、公共交通の乏しい中で生徒の通学環境は維持できているのだろうか?

第1回意見交換会ではPTAからも2名が参加し、率直な意見を述べた。「知っているだけでも、片道17kmを自転車で通っている生徒が2人いる。通学で認めてもらえれば負担は軽くなると思う」といった具体例のほか、「学校までの公共交通機関が少ない」「休日に親の送迎の負担が減れば助かる」と家庭の実情を代弁するような意見も出された。さらには、「免許取得は認めるべき。取得の判断は家庭がすることであり、学校は関係ない。通学で認めるかについては学校や教育委員会で判断すればよい」と免許取得の判断は家庭に任せるべきとも提言している。

埼玉県でも三重県でも「三ない運動は継続すべき」というのがPTAの立場だったが、静岡県では驚きの提言がなされていた。移動弱者としての高校生が実際に県下にいること、雨天や部活での送迎が保護者の負担になっていること、そういった高校生の実態を踏まえた判断が求められているようだ。次回は、引き続き静岡県の実態を掘り下げたい。

日本自動車工業会が発行する「高校生への二輪車安全運転教育 好事例2018」には静岡県の事例も紹介されていた。県教委は、定時制高校のバイク通学生徒に対して「二輪車グッドマナー講習会」を毎年実施している。


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