二輪車利用環境改善部会レポート#40

“クルマ社会”静岡県の交通課題【三ない運動の弊害は初心運転者事故に表れる?】

●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)

前記事に続いて、静岡県の三ない運動に関して考察する。「高校生の自動二輪車等の免許取得に関する意見交換会」は’21年1月にも第2回が開催されたが、それ以降は続かないようだ。免許取得やバイク通学等の許可について各校の判断に委ねている静岡県は、三ない運動を指導方針に取り入れていた埼玉県のように全県的に推し進めることは難しい。そこで今回は、静岡県の各校が、三ない運動を前提とした方針をやめ、必要な生徒には乗ることを許可し、交通安全教育に力を入れたほうがよいと考える、ひとつの視点を紹介する。

交通事故が多い静岡県の現状

静岡県の大きな課題として、とにかく交通事故が多いということが挙げられる。’20年は初心運転者*事故の発生件数が群馬県を押さえてワースト1位になった。同じく、初心運転者事故ワースト上位の常連である群馬県は、その要因のひとつに「三ない運動が交通安全教育をも遮断している」と考え、’14年に群馬県交通安全条例を制定し、三ない運動を撤廃。同時に策定したアクションプログラムのもと、幼児から高齢者に至るまで交通安全教育を推進している。群馬県と同じくクルマ王国と言ってもよい静岡県はどう動くべきなのだろうか。まずは、交通事故の背景から見てみよう。

* 初心運転者:原付/普通二輪/大型二輪/普通免許を新規に取得してから1年間を初心運転者期間と呼び、それぞれの免許ごとに設けられる。

【静岡県の交通事故状況】静岡県の交通事故状況を見てみると、ワーストランキングの上位にあたる項目が多い。交通事故は車の保有台数に左右される側面があるため、一般的には「車保有台数あたりの交通事故発生率」が交通事故状況の目安とされるが、’19年はワースト1位だった。また、指定教習所から必ず公表されている初心運転者事故発生件数もワースト1位(’20)であり、群馬県とワースト争いをしている状況にある。 [写真タップで拡大]

就職生徒の多くが製造業へ

静岡県は、東名高速道路の開通とともに大手企業の工場が多数進出した「加工/組立型のものづくり県」だ。第2次産業は全国5位であり、「日本の縮図/産業のデパート」とも呼ばれている。自動車/2輪車/部品メーカーが東西にわたって集積し、輸送用機械器具の製造品出荷額は4.4兆円と全国の6.4%を占めている。バイクを開発/生産しているヤマハ発動機やスズキも磐田市/浜松市にそれぞれ本社を置き、周辺の自治体に工場/事業所/開発センター/テストコースなどを配置し、県内出身者も大勢働いている。

ヤマハ発動機は本社のある磐田市を中心に、浜松市、森町などに関連工場などを集積している。写真は浜松市北区にある新浜松IM事業所で、産業用ロボットなどを生産している。浜松市は静岡県の中でも製造業の盛んな地域だが、政令指定都市10万人当たりの人身事故件数が11年連続でワースト1位(’19年)という状況に陥っている。 [写真タップで拡大]

静岡県では、高校卒業者の22.7%が就職の道を選び、うち9割が県内企業に採用され、その約半数が生産工程従事者(製造/加工従事者、機械組立従事者)となっているが、これも地場産業の影響だろう(’20年3月)。

そして、彼らの多くはクルマ(またはバイク)通勤を始める。静岡県では、大都市の浜松市でさえ「クルマは1人1台持っている」「クルマ通勤は他の交通手段には代替できない」という調査結果が出ているほどで、多くの企業では通勤にかかるガソリン代を負担している。こうした背景を考えれば、初心運転者の事故が多いのも合点がいく。

伊豆半島を含め、中山間地の自治体では高校卒業者の4〜5割が就職の道を選んでいる。こうした地域では、高校までの通学距離が長く、生徒本人や保護者の負担になっているケースもある。社会に出る直前になって免許を取らせ、通勤の渋滞路に放り込まれれば、事故のリスクも増えるだろう。高校年代から道交法や交通マナーを身をもって学び、混合交通での走行経験を積んでいれば、そのリスクを減らすことができるのではないか。自転車事故の発生率(1万台当たりの事故件数)でもワースト1位(’18年)という静岡県が、今後どのような交通安全教育を進めていくのか注視する必要があるだろう。


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