250cc版の国内販売が絶好調なクルーザー・ホンダレブルシリーズの長兄として、’21年3月にDCT版、5月にはマニュアル仕様が発売された「レブル1100」。今回の試乗を担当したヤングマシンのメインテスター・丸山浩氏によれば、「足着きがめちゃくちゃ優れている”普通の”バイク」「安い/旨い/かっこいい」「運動性と速さはネイキッド並み」とのこと。さっそく高速走行とワインディング走行のインプレッションを見てみよう。
●まとめ:宮田健一 ●写真:長谷川徹 山内潤也 ●取材協力:ホンダ
レブル250が売れてる理由はスタイルだけじゃない
今、250ccクラスで一番売れているバイク、それがレブル250だ。クルーザーなのに何でトップが取れるんだ? フルカウルスポーツよりもスタイル的にこっちの人気が高いのか? 乗る前にはそんなことも思ったのだが、実際に体験してみると一発でその理由を理解することができた。
まず、身長150cm台でも両足が着き、160cmもあればかかとまでベタベタという驚くほどの足着き性の良さ。そして取り回しやすい170kgという軽量車体と乗り手の体格を選ばないそのクルーザーデザイン。これは女性など小柄な人だけでなく、太めの人もカバーする。
そして極めつけはその走りだ。ライディングポジションもそうだが、ハンドリングは意外やナチュラル。クルーザーという車種のクセの強さを抜いた普通さが印象的で、キャッチフレーズを付けるなら、まさに「足着きがめちゃくちゃ優れている普通のバイク」。クルーザーらしいカッコよさのまま、よく走るエンジンで誰にでもバイクの楽しさを味わわせてくれる、そして安い。ひとつの完成形を見た感じだ。これなら誰にでも安心して勧めることができる。なるほど売れて当然だ。
前置きが長くなったが、今回試乗したのは、このレブルシリーズの長兄として加わった1100。250や500のスタイルイメージは崩さずに、エンジンにはなんとジャンルの違うアフリカツイン譲りの並列2気筒をチョイス。500では250の”走る/曲がる/止まる”の基本の楽しみに、排気量によるクルーザーらしい鼓動感を感じながら旅する喜びが加わっていたが、さらに1100まで増えたことでそのあたりのキャラクターに変化があるかが気になるところだ。
さらに、500はトラクションコントロールなどは持たず装備面でいたってシンプルである一方、1100はシリーズ頂点にふさわしく電子装備がドドンと充実。しかもアフリカツインゆずりということでDCT仕様まで用意されている。今回乗ったのはそのDCT仕様だ。
1100になってもレブルらしさはそのまま
それでは実際に1100に跨ってみよう。さすがは大型バイクらしい貫禄で、250&500ではスリムだったタンクは横方向のボリュームがアップしており、太ももホールドがバッチリのピッタリフィット。シートも肉厚になって座り心地も向上だ。
だが、基本的なライポジ感覚は拍子抜けするくらい250&500と共通していた。遠すぎないハンドル位置、やや前方かなという程度に収められてちゃんと踏ん張れるステップ位置、そしてなんといっても初心者に安心なのが両足かかとまで地面にベッタリというシリーズ通しての足着き性の良さ。エンジンがDCTということでクラッチカバーが横に張り出しているが、それも足着きにはまったく影響がない。スタイルに迫力感を増してくれているだけでデメリットは感じさせない。
走り出すと、低中速域ではレブルらしいフレンドリーさを見せながら、さすが1100らしいパルスの効いた余裕ある鼓動感が伝わってくる。エンジンはアフリカツインそのままというわけではなく綿密にチューニングされていた。クランクマスが増えた印象で低中速域ではゴロゴロした粘り感が強まっている。単純に法定速度で高速道路を巡航するなら2200〜2400rpmくらいの回転数で心地いいパルス感を楽しみながら走っていける。クルーズコントロールで長距離もラクチン。その楽しさはパラツインでもクルーザーそのものだ。
レッドゾーンは8000rpmから。ただ基本的には低回転型なのだが、これがスロットルをガバっと開けると、そこらのネイキッド顔負けのなかなかな吹け上がり感とパワーを見せてくれるのが意外や意外。ここでアフリカツインというスポーツエンジンベースの本性が表れてくる。回せばひと粒で2度おいしい表情を見せるところが、これまでのレブルと違っているところだろうか。
エンジン特性は「スポーツ」「スタンダード」「レイン」「ユーザー」の4つのライディングモードが用意されており、このパワフル感をもっとも堪能できるのがスポーツモード。でも、普段はスタンダードモードでゆったりクルージングや流しながらの峠越えを楽しむのがレブルらしい楽しみ方だと感じた。高速でのクルージング中も、峠を流すような走りをしているときも、このDCTの変速プログラムがとにかく優秀で、まったく違和感なくエンジン回転のおいしいところだけをライダーに与え続けてくれる。だから、ライダーはシフト操作から解放されたぶん景色を楽しむ方に気を配ることができる。私も自分で買って乗るならDCTの方を選ぶなと感じたくらいだ。
ハンドリングもこれまた兄弟同様にナチュラルそのものだ。一般的なクルーザーのようにロー&ロングで足着き性は良くとも寝かしこむ途中でいきなりバタンとフロントから切れ込んでくるようなクセは一切ない。かつてクルーザーが”アメリカン”と呼ばれていた時代には、そのクセが味とも言われていたが、今となってはこのスタイルでも自然に操ることができるレブルは”ジャパニーズクルーザー”とでも呼べる新しいジャンルとして認知されていいのではと思えてくる。
フロント荷重をかけたコーナリングが楽しめる
ちょっと足を延ばしてワインディングでの走りにも挑戦してみる。DCTのライディングモードを「スポーツ」に切り替えてスロットルを開けると、大排気量らしいモリモリ出てくるパワー感。回せば速さもかなりある。試しにトラクションコントロールをオフにしてみたら、ウイリーにも見事に成功。クルーザーでは普通考えられない。DCTはオートといっても手元ボタンの操作でマニュアルのように任意のシフト操作も行える。これがオートシフターのようにコーナー手前でバンバンバーンと連続してのシフトダウンもできてしまうような、意外なスポーティ面を持っていたのも印象的だ。
そして、やっぱり感じるのはハンドリングの素晴らしさだ。そのナチュラルな特性は「これ、ホントにクルーザーなの?」と思えるくらいコーナーを楽しくクリアできる。これにはシリーズ通してのライディングポジション設定も活きていた。つまり、ハンドルにある程度の体重を載せてちゃんとフロント荷重がかけられるような設定だ。ふんぞり返ってフロント荷重が希薄になりがちな一般的クルーザーのライポジとは決定的に違う。エンジンの速さや運動性能から、まるで普通のネイキッドに乗っているような錯覚さえ覚えてしまうほど。レブルらしい”普通のバイク感”は1100になっても失われてはいなかった。
250でバイクの世界に入門し、大型二輪免許を取ってステップアップした最初に500がある。それに飽き足らず、もっと大きいのが欲しいと思った先に1100が用意されている。シリーズを通してバイクに多くの人を呼び込んでくれるレブルならではの世界観を、この1100はさらに押し広げてくれた。
DCTはもちろんMT仕様にもトラクションコントロール/オートクルーズ/グリップヒーター、それにETCまで標準装備で、まさに豪華仕様のレブルの決定版。「だけど、そのぶん高いんでしょ?」と思いそうなんだけど、これがまたマニュアル仕様で110万円、DCT仕様でも121万円という最近にしては嬉しビックリなプライス。いやはや今回は実にお見それいたしました。
“アフリカツイン”とエンジンフィールはどう違う?
【クルーザーらしい味アリ!】アフリカツインのエンジンは本格オフロードをこなすスポーツ性とともに、ロングツーリングに使ってもその鼓動感が気持ちいい優秀な旅性能の持ち主だった。レブル1100ではこのエンジンをさらにクルーザーらしい味わいを見せるようにチューニング。パラツインといってもVツインのようなドロドロした感じがちゃんと表れていた。それも鼓動感からくる振動が嫌にならないレベルに調整されていたのが見事。
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