●文:ヤングマシン編集部 ●写真:Honda
ホンダは、注目の空冷ロングストローク単気筒を搭載する「GB350」およびバリエーションモデルの「GB350S」を正式発表。その車体の狙いは、「ライダーが余裕を持って操っている姿が最も美しい」を誰もが享受できること。扱いやすさ、ゆったりした操縦フィールが美しさに繋がるというのだ。
「ライダーの存在感、ゆったりした操縦フィール、取り回しやすさ」を狙った車体
およそホンダらしくない物言いだ。これはけっしてネガティブな意味ではないが、今までにホンダがこんなことを大上段に構えて言ってきたことがあっただろうか。
2010年に登場した空冷4気筒のCB1100は『鷹揚』をキーワードに、大空を悠々と舞うような自由感を訴えたが、それは「操る満足」や「所有する満足」といった、スピードに頼らないライディングの愉悦とマシンの上質感を謳ったもの。今回の「扱いやすさがライダーとバイクの一体感を増し、操っている姿が美しくなる」というGB350の世界観とは、微妙に異なっているように感じる。
性能やスペックを作り込むことでライダーを満足させ、乗り手よりもマシンの完成度がクローズアップされることが普通だったホンダが、「あくまでもライダーが主役であり、見る者に印象を決定づけるのはマシンそのものよりも、むしろライダーである」と言い切っている。そのことに、1990年代以降のバイク業界を中から見てきた筆者としては驚きを禁じ得ないのだ。
ホンダは車体の狙いを、「見る者に印象を決定付けるのは、マシンそのものより、むしろライダーであり、私達はライダーが操っている姿が最も美しいと考えています。GB350シリーズの車体開発では、この原点とも言うべきライダーとモーターサイクルの一体感を見据えながら市街地からツーリングまでの扱いやすさ、動力性能、外観との統合が図られました」とした。
すべてを『余裕を持って操れること』や『取りまわしのしやすさ』に収れんさせている、ということだろう。
ホンダは、車両がもっとも引き立って見えるのは、ライダーが安心感と余裕を持って扱っている状態だと考えたのだ。そして市街地から郊外、さらに長距離ツーリング、各場面での交通環境や車速、路面状況などさまざまなコンディションでの走りから、押し歩きや駐車時などの車両取りまわしまで、ライダーがGB350/Sと体験する幅広いシーンにおいて、堂々と自信を持って扱えることがファンライドの前提条件と位置づけた。
そのためのロングストローク単気筒エンジンであり、シンプルながら考え抜かれた車体であり、そしてライダーが乗った姿やエルゴノミクスまでトータルで仕上げられた外観デザインであり……ということなのだ。
快適で堂々としたライディングポジションが余裕を生む
ハンドルバーの設定は昔ながらの言い方なら『殿様乗り』に近く、アップライトで手前に引かれたグリップ位置で上半身をアップライトにし、さまざまな状況下で視界良好。この快適で堂々としたライディングポジションによってライダーの存在感を強調しながら、安心感のある車体挙動が得られるスペックを設定した。
そしてGB350/Sのホイールベースは1440mm。同じ251~400ccクラスのCB400SFよりも30mm長く、大型スポーツネイキッド並み。これにキャスター27°30′/トレール120mm、フロントフォークオフセット量45mmという仕様を組み合わせ、大型モーターサイクルにも引けを取らない車格や、クルージング時のリラックス感を実現している。
また、左右43度を確保したハンドル切れ角により、最小回転半径は2.3m。これはコンパクトなスポーツネイキッドのCB250Rと同数値で、CB400SFの2.6mに対してかなり小回りが利くことがわかる。外乱に強い前19/後18インチホイール(GB350Sは前19/後17インチ)も相まって、アドベンチャーバイクに近い安心感と自由な操縦性が想像できる。
フレームの“しなり”が穏やかな運動性と、“ため”のある操縦性を実現
穏やかな操縦フィールをもたらすために、鋼管セミダブルクレードル式フレームを採用。多くのモーターサイクルが採用してきた一般的なフレーム形式だが、開発に際しては最新CAEによる構造解析や振動解析を導入し、動的な荷重に対する各部の変形過渡特性を総合的にコントロール。これが一貫性のあるロール特性を生んでいるわけだ。もう少し違う言葉で言えば、手応えが一定で安心して寝かし込める特性ということだろう。コーナリング時には車体質量の手応えを感じながら“ため”のある操縦性を獲得するとともに、さまざまな場面での安心感ある乗り味を作り込んでいるという。
フレームはチェーンラインの内側にピボットを設定した幅の狭いインナーピボット構造により、スチールのしなやまさを最大限に引き出しながら、縦、横、ねじれ剛性をバランスさせることで安心感につなげている。っまた、操縦性では、エンジンを低い位置に搭載することでバイクの重心を低く抑えながら前後方向の搭載位置を調整し、フロント分担荷重を最適化。併せてハンドルグリップとヒップポイント間の距離を短く設定することにより、腰を据えてハンドル操作が可能な、落ち着いたフィールを提供する、としている。
スイングアームは、幅咆哮を詰めたフレームピボット部の外側に締結されるタイプ。別体のアルミ鋳造ステップブラケットと共締めする合理的な構造だ。丸パイプ構成のフレームに対し、スイングアームはより高剛性の60mm×30mm角断面パイプを採用することで変形を抑え、力強いトルクを駆動力として無駄なく路面に伝える。エンドピースは鍛造製で、路面からの入力とクッション反力を効率的に受けられる形状とした。これらにより、スッキリした外観と快適なライディングフィールを両立しているという。
ともに120mmのトラベル量を持つ前後サスペンションはコンベンショナルなタイプ。フロント正立フォークはφ41mmで、リヤショックはダンパー内部に窒素ガスを加圧封入することで応答性の高いダンピング特性を得ている。
ブレーキはフロントにφ310mm、リヤにφ240mmのディスクブレーキを採用。GB350シリーズ専用セッティングの前後独立制御ABSを標準装備する。ABSの液圧をコントロールするモジュレーターは、リヤブレーキホースを直接締め付けられる位置とすることで、リヤブレーキパイプを廃止したコンパクトなシステムとしている。
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