空冷、直立、単気筒が鼓動を予感させる

ホンダ「GB350/GB350S」の核心! ロングストローク設定の空冷単気筒エンジンを解説

●文:ヤングマシン編集部 ●写真:Honda

ホンダは、注目の空冷ロングストローク単気筒を搭載する「GB350」およびバリエーションモデルの「GB350S」を正式発表。この新型バイクの核となるのは、完全新開発の空冷エンジンにほかならない。一見するとローテクのようだが、中身はキッチリ造り込まれつつ、クラシカルなフィーリングを目指している。

水平に流れる吸排気のライン、ほぼ直立したシリンダー、そして空冷フィン……

ホンダが正式発表した「GB350」および「GB350S」に搭載されるエンジンは、最新の排出ガス規制に適合するモデルとしては異例の新開発、348ccの空冷4ストローク単気筒だ。このエンジンは、バイクの外観イメージを決定づける役割を担うだけでなく、現代のバイクが置き去りにしつつある伝統的なバイクの乗り味を実現しようとしている。

奇しくもSR400がファイナルとなり、国産400ccクラスから空冷の灯火が消えようとしているこのタイミングでの登場に、ホンダの気合いとしたたかさを感じずにはいられない。

このエンジンの特徴は、なんといっても空冷であること。そして異例のロングストローク設定であり、オフセットシリンダーや非対称コンロッドを採用するなど、最新技術で設計されていることが、大きな特徴となっている。

ほぼ直立したシリンダーに、水平基調とした吸気~排気の流れが映える。ちなみにシフトペダルはシーソー式だが、チェンジ方式は普通の常時噛合式リターンの5速なので、通常の慣れ親しんだ操作(かき上げアップ/踏み込みダウン)もなんら問題なく行える。 [写真タップで拡大]

エンジンの外観デザイン

エンジン外観は、力強くクリアな鼓動を生み出す源として、空冷、直立、単気筒という特徴を主軸に外観表現することで機能美を導き出すことを追求したという。

スロットルボディからシリンダーヘッド、エキゾーストパイプ接続部は水平に配置され、吸気→燃焼→排気という動力発生の流れを視覚的にイメージさせる。また、単気筒であることを強調するラウンド形状の空冷フィンは、放熱性を考慮し1枚ごとに形状変化させた構成により空冷エンジンならではの立体感を獲得し、そのシリンダーヘッド部フィン端面に施された切削加工の輝きは前述の吸気から排気への流れを美しく表現した。

さらに、クランクケース上部に低く配置したスターターモーターや、配管など細部にも配慮しカバーを廃したキャニスター、バランサーウエイトを内蔵するクランクケース前部など、補器類の機能的な配置を工夫することでシリンダー前後にスッキリとした“空間”を設け、ロングストローク単気筒エンジンとしての存在感を引き立ててている。

この外観のために所有してもいいのでは……と思わせる存在感。 [写真タップで拡大]

“クラッチをつないだ瞬間にわかる”粘りと鼓動感を重視

本誌情報網によれば、エンジンフィーリングはクラシックバイクの心地よさを想起させるフィーリングに仕上がっているという。それこそ、発進でクラッチをつないだ瞬間に伝わってくる鼓動感や粘り、クランクが回っている感じが直感的に身体に入ってくるようなイメージだろうか。

その中核を担うのは、ボアφ70mm×ストローク90.5mmというロングストローク設定のスペックだ。わずか3000rpmで最大トルクを発生する日常域重視の設定で、街乗りでは力強さを、また高速道路でエンジンを回して走っても、ただの連続音にはならず鼓動感を残したサウンドが期待できる。

ホンダがこのようなエンジンの造り込みをアピールしてきたことは、長い歴史上でも異例であり、ゆえにGB350独自の魅力に期待がかかる。

最大トルクは3.0kg-m/3000rpmで、そのまま高回転域までフラットなトルクを発生する。クラッチがつながりきった瞬間にバキンッと前に蹴り出されるような特性を期待したくなる。 [写真タップで拡大]

ワイドレシオの5速トランスミッションは、キビキビ走れる1~4速に対し、5速は低回転30km/hから高速巡行にまで対応。低い回転でスロットルをワイドオープンしたときの、心地よく息の長い加速と、シートから実感できるトラクションがありありと浮かぶようだ。

この“息の長い加速”を実現するためにも、質量の大きなフライホイールとし、その慣性マスによって一発ごとの粘りある燃焼フィールが際立っているというからたまらない。[9.5:1]というスーパーカブ並みの圧縮比も、やわらかく湿ったような燃焼感覚を想像させる。

ホンダは「日常の移動から長距離ツーリングまで、エンジンの鼓動と対話しながらも、それに急かされることなく、常に余裕と充実感につつまれたライディングを楽しめるよう出力特性を作り込みました」と説明し、今までの同社のバイクにないフィーリングを訴えている。

心地よい鼓動を残し、不快な振動=雑味を排するテクノロジー

GB350/Sのエンジン開発では、、燃焼エネルギーを心地良さや手応えとしてライダーに届ける“鼓動=味わい”と、往復回転部の慣性力に起因する不快な“振動=雑味”を明確に分け、鼓動の最大化と振動の最小化を図ることで単気筒エンジンの特徴を引き出しクリアな鼓動を実現したとしている。

その手法として、一般的なバランサー軸に加えメインシャフト軸上にもバランサーを追加して、一次振動を抑制。クランク1回転毎に発生する一次振動を打ち消すことで、クランク2回転毎に発生する燃焼による鼓動をクリアに感じさせるのが狙いだ。また、一次バランサーを装備することで発生する偶力振動をキャンセルするために、メインシャフトにも同軸バランサーを装備。これらにより、ロングストロークエンジンの鼓動を純粋に味わえる、趣味性の高いエンジンフィールを獲得したという。ちなみにだが、“趣味性の高いエンジンフィール”という言い回しをホンダが用いることも異例といえよう。

バランサーの位置関係と発生するチカラの関係を整え、燃焼トルクによる鼓動感のみをクリアに取り出す。 [写真タップで拡大]

この“ロングストロークエンジン”は、一般的にエンジン全高が長くなることに加え、搭載するバイクの最低地上高の確保も必要となることから、クランク室とミッション室の間に隔壁を設けた密閉式クランクケースを採用。ある意味、ウエットサンプのシンプルさとドライサンプの攪拌抵抗低減というメリットの間を取ったような構造で、隔壁に配置されたリードバルブが、ピストン上下によるクランク室の圧力変動に伴い開閉することで、ピストンジェットから吐出されてピストン冷却とコンロッド大端部の潤滑を終えたオイルをミッション室に排出する。これによりフリクション低減を図り、燃費向上につながっている。

クランク室にオイルが溜まらないように、リードバルブを用いることでエンジンオイルをミッション室に排出する。 [写真タップで拡大]

サウンドチューニングと、ピストンまわりのフリクション低減

エアクリーナーボックスは、エレメントからスロットルボディに至るまでの管長を確保し、低速から力強いトルクを生み出すとともに、吸気経路のストレート化によって吸気抵抗を低減。必要な量の空気を安定して取り入れるため、吸気口を走行風による外乱影響の少ないエアクリーナー後方に配置し、おこまでの空気の導入経路をシート下とエアクリーナーボックス上面の間に設けた。

また、排気系は重厚な低温を主成分とした、鼓動感あるサウンドを重要視。マフラーの内部構造をできるだけ長い管長となるようサイレンサー後端まで確保し、トルクフルな走りに寄与させた。テールパイプは大径φ45mmとしたことで、燃焼によって生じた音圧のエネルギーをクリアに伝えるようチューニング。さらに、エキゾーストパイプを二重管構造とすることで、GB350ではクロームの、GB350Sではマットブラック仕上げの熱による変色を抑え、キャタライザーもアンダーパイプ内に直列配置とするなど、スッキリした外観とバンク角の確保にも気を配っている。

マフラー内部構成図。1室構造とし、マフラー後端までを最大限に利用することで容量を確保。テールパイプにはφ45mmという大径を用いて、ロングストローク単気筒らしい低音パルスを伝える。 [写真タップで拡大]

エンジン回転が上がっても、単気筒らしい排気音になるような周波数に整えられている。鋭い音圧で歯切れのいい鼓動を演出。 [写真タップで拡大]

ピストン&シリンダー間の摺動抵抗抑制には、クランク軸とシリンダー中心を10mmオフセットする“オフセットシリンダー”で対応。これによりロングストロークのコンロッドとシリンダー内壁下端の干渉を避けるために、コンロッドを前後非対称としているのも新しさを感じさせる。これらにより実現した10mmのオフセット量により、燃焼が生み出すエネルギーを最大限に活かすとともに、良好な燃費にも寄与している。

ピストンがコンロッドを押し下げる際、横方向に働く分力をなるべく排除することで、燃焼によって生み出された圧力エネルギーを最大限に活用する。 [写真タップで拡大]

非対称コンロッドは、一見すると「失敗作かしら……」と思ってしまいかねないが、これもオフセットシリンダーを実現するためのもの。 [写真タップで拡大]

シリンダーまわりの冷却に関しては、冷却フィンの深さ/厚さ/間隔の最適化、ピストンジェットの採用、燃焼室周辺を冷却するためのオイル通路を設けることなどにより、燃焼効率の高い温度域を維持できるように工夫されている。

燃焼室上部冷却オイル通路イメージ。 [写真タップで拡大]

「不快な振動=NO、鼓動感=YES」は駆動系にまで

クランクからリヤタイヤまで動力を伝える駆動系領域では、CAE機構解析シミュレーションを活用しながら、各要素をバランスよくチューニング。単気筒エンジンにありがちな、大きなトルク変動によるギクシャク感を抑えながら、その力強さを心地よい鼓動として伝えることに腐心している。

アルミカムのアシストスリッパークラッチはクラッチレバー操作荷重を約30%低減するとともに、シフトダウンのよる急激なエンジンブレーキによる不快なショックや後輪のホッピングを緩和。また、シフトフィールを追求するために、シフトカムのプロフィールには大排気量モデルと同様のタイプをベースとするなど、操作感の向上にも余念がない。

クラッチハウジングと同軸のプライマリードリブンギヤに配置されているダンパースプリングは、硬さを最適化することでトルク変動にともなう不快な振動を吸収し、鼓動感を活かす。 [写真タップで拡大]

リヤホイールのハブ内に配置されたハブダンバーは、大排気量モデルに近い5個仕様とすることで容量を増やし、サイズや形状、硬度などを最適化することでギクシャク感を抑えつつ、力強い加速感を表現。 [写真タップで拡大]

アルミカム アシストスリッパークラッチ構造図。 [写真タップで拡大]

もちろん今どきのトラコンは標準装備

幅広い路面コンディション下での走行を想定し、路面状況に応じてエンジントルクを制御するホンダセレクタブルトルクコントロール(HSTC)を採用。メーター左側面のスイッチでON/OFFも可能だという。

HSTC作動疑念図。2チャンネルABSと併せて、ライダーの安全な走行をアシストする。 [写真タップで拡大]


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