●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●取材協力:コーケン[山下工業研究所]
コーケンらしく多ギア化を実現。待望の72歯ラチェット
さまざまなデバイスを搭載することでメンテナンスのスペースが狭くなるバイクや自動車に対して、’10年の登場以来、徹底したコンパクト化でユーザーの期待に応えてきたコーケンのラチェットハンドル「Z-EAL」シリーズ。
次世代のスタンダードツールという位置づけのZ -EALは、ラチェットハンドルに36歯ギアを採用してきた。多ギア化によって作業性を向上させる他メーカーに対して、コーケンは空転トルクの軽さを武器にしてきたわけだが、’21年1月、ついに72歯のハンドルが登場した。
新型ラチェットを見て驚くのは、本体サイズが既存のZ -EALと変わらないこと。ギアのサイズを変えずに歯数を倍にすれば、歯の山の高さは低くなる。すると強度や耐久性で不利になるため大径化で対応するのが一般的な手法。だが新型のギア径は36歯と同一なのだ。
この条件で強度を確保するには、回転方向を変える爪(パウル)をギアに強く押し当てる必要がある。爪の向きを切り替えるピンのスプリングを強くすれば噛み合わせも強くなるが、それでは大きな美点である空転トルクまで重くなってしまう。
多ギア化しても、空転トルクが増えてボルトナットが供回りしては意味がない。そんなジレンマを解消したのが、爪の2ピース化だった。回転方向を切り替える爪とギアと噛み合う爪を別体として、両者をフローティング構造とすることで、ギアと接する上の爪に荷重が加わった際に下の爪にクサビのように打ち込まれる動きを実現した。
他社にはすでに72歯を超えるラチェットハンドルも数多く存在し、スペックだけで見れば”ようやく感”もある。だがどこまでも真面目にコーケンらしさを突き詰めた72歯の実用性は群を抜く。手にとってフィーリングを確かめてもらいたい。

ギアの直径を拡大すれば設計は楽になる。それでも従来の36歯(左)と同じヘッドに収めたのは、コンパクトさを追求するZ-EALのコンセプトを守るため。2階建ての爪のスライド量は僅かだが、これで課題を解決。 [写真タップで拡大]
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