●文:モトメカニック編集部(たぐちかつみ) ●取材協力:井上ボーリング
絶好調エンジンは「柱付きICBM®」仕様。間違いのないエンジン仕様で乗り心地抜群!!
『モトメカニック』編集部では、先ごろヤマハトレールの雄「’69 250 DT1」をフルレストアした。極低速域から不安定にならず、安心して乗ることができるようになったのだが、そんなエンジン特性に大きく寄与したのが井上ボーリングの「柱付きICBM®」シリンダーである。
以前、柱付きICBMシリンダーの開発に関与した時、筆者は自前のカワサキマッハIII(H1)にこれを組み込んだことがある。’69年製の初期型H1は、吸気ポートに柱がある、通称デュアルポートとかブリッジポートと呼ばれるシリンダーを採用していた。しかし、生産性の配慮から’70年モデルからは柱がなくなり、ハート型の吸入ポートに変更された。そんなH1でICBMをテストするのなら、吸排気ポートの双方に柱を立てたいと考えた。現実にそんな仕様の市販車が存在していたからだ。しかも井上ボーリングには、熱ひずみでカジリやすい排気ポートの柱を逃がす特殊技術がある。その実績は、メーカー供給の純正補修部品でも実証済み。その技術を盛り込むことで、H1の吸排気ポートの実用精度はさらに良くなるはず。そんな考えで作業を進め、想像以上の効果を体感できたのであった。
そんな折、単品になったDT1シリンダーを手に取る機会があった。「マッハのポートと似ているなぁ…」とそれが第一印象。だったらDT1にも柱付きICBMが効果的なのではないかと直感。試してみると、あのピストンのスラップ音やリングの叩き音がほぼ皆無に!!
柱付き=大きなポートにガイドとなる”柱”が立ったことで、ピストンリングがポートに飛び出すことなくスムーズに往復運動。さらにそのガイド=柱が、ピストンの首振りも抑制してくれる結果となり、2スト旧車特有のメカノイズがなくなり、聞えてくるのは「シュ、シュッ」という往復運動音になった。
柱付きICBMシリンダーを組み込んだDT1でそんな激変を体感すれば、今回もコレしか考えられませんよね。コストうんぬんと言う方もいますが、賞味期限5000キロもたない通常のオーバーサイズ加工だと、しばらく後には同じ部品コストと工賃が必要になる。しかし、柱付きICBMシリンダーを採用すればその何倍も走れる…。どちらがお得だと思います?
2スト旧車エンジンの救世主、井上ボーリングの”柱付きICBM”技術。削り出しアルミスリーブの吸排気ポートにピストンガイドとなる”柱”を立て、スリーブ内壁をニカジル系メッキ処理で硬度アップ。2スト旧車エンジン特有のギャンギャン音は皆無だ。
今回フルレストアしたDT1は…
エンジン腰下は、クランクケースカバーを開けた範囲内でのメンテナンスにとどめた。試運転後に気になれば、全バラ&オーバーホールの予定だったが、その必要もなさそう。本当に腰下コンディションは良い。
程度の良い中古メーターがあったので良かった。何年も前にオーバーホールした形跡があり、作動も良好。68年初期型のタコメーターは、レッドゾーンがなく白表示だった。
ユニクロパーツはすべてワイヤーバフで磨き込んでから再ユニクロメッキ仕上げ。シートストッパーのベルトは、同じベルト素材で前オーナーさんが作って下さった。手縫い!!
市販のメンテナンス用リフトアップスタンドは、ストロークが長い現代のモトクロッサー対応で開発されている。そこで、ストローク量を詰め、天板形状を変更し、VMX用として使いやすい仕様へ改造自作。ミニトレ用としても使えるようにしてみたが今イチだったか?
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