●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●取材協力:EZブラストジャパン
アルミナやガラスビーズのように塗膜や金属表面を研削しない重曹を用いることで、短時間で効率良くクリーニングできるEZブラスト。クロームメッキの艶がワンランクアップするEZブラストなら、多少のサビも気にならないレベルに仕上がるのだ。
メンテナンス/レストア業界でユーザー増加中のEZブラスト。素材を傷つけにくい水溶性メディアの可能性は大!!
炭酸水素ナトリウムを利用した重曹ブラスト自体は昔から存在している表面処理手法だが、「EZブラスト」は水道水と一緒に吹き付けるのが特徴で、メンテナンスやレストア分野で一躍注目される存在となった。
特に効果が実感できるのが、クロームめっき表面のサビ取り能力の高さだ。めっき皮膜が剥がれるほど状態が悪い場合は致し方ないが、表面の点サビは面白いほどよく落ちる。めっきのサビは目に見えない小さな穴から浸入した水分が鉄素材の表面に到達して発生する。したがってサビ穴自体は再めっきしない限り消えてなくなることはない。
だが赤サビ自体はかなりのレベルで除去でき、クロームならではの金属光沢が蘇るのだ。それも、スチールウールや金属磨きで物理的に擦るとどうしても残る細かなスクラッチ傷がまったく発生しないのがEZブラストの大きな魅力である。
今回はハンドルやマフラープロテクターで試してみたところ、マフラーカバーやライトリムなどの薄いプレス部品よりも、トップブリッジやハンドルのように元の素材が厚く、硬い部品の方がクリーニング効果が良好だった。これは各々の部品に対するめっきの厚み自体の違いを反映した結果かもしれないし、パーツによってサビの深さが違うことが原因かもしれないが……。
いずれの場合も、めっき表面を曇らせる擦り傷を付けることなくクロームめっきの光沢が復活したのはEZブラストの効能であることは間違いない。再めっきが最善であることは当然だが、重曹ブラストが次善の策として大いに魅力的であることは間違いないと確信できた。
クロームメッキの汚れや点サビ、バックミラーの汚れ落としにも最適
現在『モトメカニック』編集部でレストア作業中の’74 ヤマハLB50チャピィ。そのマフラーカバーにはまんべんなく点サビが発生し、全体的に赤っぽくなっていたが、半分だけガムテープでマスキングして施工してみたところ、点サビが落ちるのと同時にクロームの光沢も回復することがわかった。
潤滑油をスプレーして目の細かいスチールウールで擦っても同様にサビが落ちるが、その代わりに磨き傷が残ってしまう。逆に傷が付きにくいクリーナーケミカルを使うと、光沢は出るが点サビのポツポツが残ることが多い。
EZブラストは、点サビの爪の引っかかりを軽減しながら、磨き傷を付けずに光沢を復活できるのが素晴らしい。ステンレス製と思われるミラーボディや鏡面の汚れ落としにも効果がある。
表面サビか下地に食い込むサビかの違いで、クロームめっきのブラスト効果に違いが生じる
再生作業中の初期型チャピィのハンドル(写真左/下)は、クランプ部分から立ち上がりにかけてのサビがあまりにもひどく思えたので、部品取りで持っていた中期型のハンドルと合わせてEZブラスト処理を施してみた。
真っ赤に見える部分にブラストを当てると、サビだけが落ちてその下に残っていためっき層が現れてびっくり。ワイヤーブラシで擦っていたら傷だらけだろうが、重曹メディアなので光沢も残っている。これなら再使用しても違和感はない。
クロームメッキの点サビは除去できないが、ツヤ消し状態から輝きがアップしたウインカーボディ
’60~’70年代のバイクに多く見られる亜鉛ダイカスト製ウインカーボディは、クロームめっき仕上げの場合が多い。ダイカストは鋳物なので、サビが発生すると表面に巣穴が発生して再めっきも容易ではない。EZブラストでもツブツブは消えないが、くすんでいた表面に輝きが戻った。
すべてのサビが取れるわけではないが、再めっきは思いとどまる程度の輝きが回復
リヤキャリアの赤サビもEZブラストでかなりきれいになった。元々めっきが薄いテールランプの土台などは素材自体が赤サビで覆われており、重曹メディアでは歯が立たない。スチールブラシで下地を出して、シルバーのスプレーでタッチアップするなど、臨機応変に対処しよう。
しつこいゴムの汚れも洗浄できるが、ツヤ消し状態に仕上がる可能性もある
経年変化によって洗剤ぐらいではきれいにならないグリップにEZブラストを当ててみた。穏やかな研削力に期待したのだが、驚くほど黒々とした状態になった。ただし、素材の状態やブラストの強さによって、ゴム自体のツヤが低下することもあるので注意が必要だ。
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