サーキットテスト、限界域で勝負!

YZF-R1/M vs CBR1000RR-R/SP 令和HYバトル〈#2 サーキット編〉

ラップタイム/最高速度

タイムはあくまで参考値。速さのうえではほぼ互角

袖ヶ浦フォレストレースウェイで今回計測したタイムは、一般のスポーツ走行に混じり、YZF-R1とCBR1000RR-Rそれぞれスタンダードと電子制御サスペンションの付いたR1MとRR-R SP、合計4台を走らせてみた結果だ。コース上が混雑しており限界までアタックしたタイムではないので、あくまで参考程度で考えてもらいたい。イメージ的には、ちょっと頑張って走ってみましたといった感じだ。

青線がR1、赤線がCBRのベストラップ。線の乱れは一般走行車を追い抜く際の減速等だ。ピークはCBRが速く、ボトムからの復帰はR1が速い。

STDが好記録だが、許容範囲はYZF-R1M&CBR1000RR-R SPが広い

結果は、YZF-R1[STD]がトップで1分13秒486。次にCBR1000RR-R[STD]で1分14秒035。続いてR1M、CBR-SPの順となる。CBRよりR1が速いという結果となったが、これは一歩優れた無駄のないトラクションコントロールを持つR1の方がコーナーをキレイに処理しやすくタイムにつながったというところだろうか。しかし、私としてはCBRのパワーを存分に出し切れてはいないと感じていたので、これがクリアラップでの限界ガチ勝負だと引っくり返りそうな印象もある。おそらく限界でのタイムは、(ライダーには相当な負担があるが)パワーにモノを言わせたCBRに軍配が上がるだろう。高回転域での最後のひと伸びが確実に実感でき、そこが決定的な差になりそうなのだ。

もっとも、その領域で走れるまでに至るには、かなりの経験が必要。普通に見るとどちらも甲乙つけがたく、ほとんどの人にとって”速さやタイムに関しては互角”と結論づけたい。それに、サーキットを楽しむのは何もレースやライバルより速いタイムを出すことばかりじゃない。その速さを引き出していくまでのアプローチをどう楽しむかといったことも大事だ。

ストイックに無駄なくコーナーひとつひとつを極めていくのが好きか、それとも豪快にパワーを堪能できる方がいいか。それぞれ好みに合った選択肢があると分かったのが今回のテストでの収穫だった。なお、どちらもスタンダードが電子制御サスペンション付きのR1M、CBR-SPより好タイムとなったが、これはコース状況の影響による。走りやすさでは許容範囲の広い電子制御サスペンション付きの方がどちらも好印象だった。

[写真タップで拡大]

【袖ヶ浦フォレストレースウェイ】都心からもアクセスしやすい人気のサーキット。大小さまざまなコーナーと広いコース幅を持ち、リッタースーパースポーツも思う存分に走らせることができる。全長2436m、ストレート長400m、コーナー数14。■住所:千葉県袖ケ浦市市林348-1

[写真タップで拡大]

【デジスパイス3】計測に使用したのは、おなじみマルチGPS超小型データロガー。PCソフトでの解析に加え、スマホの無料アプリとも連携可能だ。●価格:4万4000円

最高出力測定

サーキットテストを経て、そのインプレッションとラップタイムの根拠はどこにあるのか、シャーシダイナモ上でガチ測定比較を敢行した。計測は後輪で行ったが、リザルトは補正をかけたうえでの”エンジン出力”の数値となる。

取材協力:和光2りんかん埼玉県和光市新倉5-11-1 ☎048-452-6290
NSR250Rマニアがパワーチェックを担当。今までに測定してきた車両は数千台にのぼるという。

カタログ表記は200psのまま、大幅に出力向上したYZF-R1

驚くべきはYZF-R1だ。パワーもトルクもメーカー公称スペックの200ps/11.5kg-mを超えている。通常は後輪出力でカタログ値から10%程度、エンジン出力でも5%前後は割り引いた結果になることが多いが、YZF-R1は2.9ps/0.5kg-m上回っているのだ。

さらに驚異的なのは、8958rpmで最大トルクを発生している点。実走行ではラムエアなどが働き始めるので、カタログ値の11500rpmあたりがトルクピークになるだろうが、それでも異様に広いトルクバンドを持っていることに変わりはない。CBR1000RR-Rと比較すると、8750rpmあたりで1kg-m以上、パワーでは実に約20psもの差をつけている。YZF-R1がコーナーの立ち上がりで美しいまでのスライドを見せながら加速していくその要素として、この中間トルク&パワーは大きな役割を担っているはずだ。

ピークが高いCBRと中速で約20ps上回るR1

対するCBR1000RR-Rは、長いストレートのない袖ヶ浦のようなコースでは不利な特性。ピークで5ps上回っているものの、その回転域に達するまでの加速で先行され、パワーを炸裂させる頃には次のブレーキングが迫る。このパワーを生かすには、世界選手権を開催するコースのような規模が必要かもしれない。

ちなみにYZF-R1は、別の機会に機関好調の’19年型(カタログ値200ps)で計測した際に約185psだったとのことなので、厳密な比較はできないものの実質的に約18psもパワーアップしたことになる。’20年モデルのYZF-R1のエンジンは、ただの熟成や規制対応にとどまらない進化を遂げていた。


●文:宮田健一 編集部 ●長谷川徹 ●取材協力:袖ヶ浦フォレストレースウェイ デジスパイス 和光2りんかん ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

最新の記事