純正部品を探しまくって細かなパーツまで再メッキするフルレストアもやり甲斐はあるが、年式なりのヤレ感を残しつつ要所には手を掛けて、近所のアシとして気軽に乗れるように仕上げたい。そんなテーマで始める初期型チャピィ(’74 ヤマハ LB50 II A)の整備。今回はエンジンカバーや小物パーツを再塗装する。
ブラックとシルバーが輝けば印象は一変する
オークションで落札してから数年間放置していた初期型チャピィを引っ張り出し、思い出したかのように「チャピィ、チャッピー」と入力して部品漁りを再開。するとオークションでは、今もチャピィに関する出品物が思った以上に多い。同じ商品が再出品され続けているのかもしれないが、同じLBシリーズのジッピィやボビィを圧倒する。付け加えるなら、次にリフレッシュしようと思っているスクーターのスズキ・ハイよりチャピィの方がまだ多い。まあモンキーやダックス、シャリィに比べたら物の数には入らないのだが。
【’74 ヤマハ LB50 II A チャピィ】ヘッドパイプからテールエンドまで、一本のパイプを曲げたようなフレームデザインが個性的。バックボーンでもプレスフレームでもバイクのようなパイプフレームでもない。ヘッドやシリンダーからの吹き抜けやオイル漏れはなく、エンジンはとりあえず分解不要な感じ
このチャピィ、洗っただけでくすみが取れてそれなりの姿になったが、地面からの湿気で車体下部のサビが進行している。ニットー製タイヤに1974年45周目の製造刻印があったので、昭和49年末から50年初頭に生産されたのかもしれない。
ピーマンのようなキュウリのようなグリーンの車体色は現状のまま、銀と黒の塗装部分だけやり直して年代なりの見た目にする作戦のため、ガレージに運び込んだ車体をどんどん分解する。もう1台所有している中期型は入手した時点で程度が良く、電装系を12V化しただけでどこも分解しなかったので、チャピィをバラすこと自体は初体験。湿気ムンムンのサイクルポートから釈放された途端にバラされるとは、チャピィ本人からすればまったく迷惑な話だろう。
過去にいじったAT90やHS1などと同様の、フロントフォークのねじ込み式のオイルシールホルダーにヤマハミニらしさを感じつつも、センタースタンドを掛けた状態の車体からエンジンや足周りをどんどん外しながら、黒と銀に塗る部品を仕分けていく。
右側エンジンカバー内側のオートマチック用クラッチに目が釘付けになり、もう少しで分解しそうになったものの、今はその時ではないと自分を押しとどめる。そのエンジンカバー、遠心クラッチの中期型にはYAMAHAのロゴが入っているので、もしや初期型ならでは? と浮き足立ったが、これはCDI点火と角形メーターの最終型までATに共通の仕様だった…。ついでに言えば、こののっぺらぼうカバーは、エンジン流用元のオートマチックメイトからこうだったらしい。
ホイールハブはペイントか磨きか思案中だが、いずれにしても新品に交換するベアリングはお疲れ様。
2時間程度ですっかりバラバラにしたパーツの塗装をお願いしたのは愛知県東海市のカーベック。フレームや外装やクロームメッキは現状からの磨きで行くのだから、せめて黒と銀は自家塗装ではなくプロにお願いしたい。洗浄とサンドブラストで準備が整った部品のうち、まずはエンジンカバーをガンコートのシルバーでペイント。残りはパウダーコートでお願いするが、早くも仕上がりが楽しみで仕方がない。
スイングアームやスタンドなど車体下部の黒パーツはパウダーコート一択。足周りを半ツヤブラックにすることで全体がグッと引き締まって見える。熱と水分で赤サビまみれのエキゾーストパイプは、耐熱塗料のセラトップEXで抜かりなく。
なぜゴムの内側にサビが食い込むのか分からないが、合わせホイールが錆びるとビードやチューブが張りついて苦労することがある。今回は張りつきは軽度で表面の荒れも少ないので、パテ不要でシルバーのパウダーコートを選択。
下地作りから仕上げまで素材に応じた最適の仕上がりを
ガンコートやパウダーコートの塗料や設備の販売と開発を行うカーベックの製品は、自動車、バイク業界はもちろん、様々な業種で活用されている。洗浄用機器で好評なのがスプラッシュショット。
密閉型キャビネット内に温水と洗浄剤を高圧で噴射して、グリスや油汚れを強力に除去するため、スプレータイプのパーツクリーナーや洗油より作業時間を大幅に短縮できるのが特長だ。
エンジンカバーはガンコート仕上げ
メタリック感を抑えたシルバーにクリアを添加
カーベックの名が一躍有名になったのは、高機能塗料の代名詞であるアメリカKG社のガンコートの日本総輸入代理店となったのがきっかけだった。塗料の販売だけでなく、焼付乾燥器や塗装ブースなどトータルで製品開発を行うことでノウハウを蓄積し、的確なアドバイスを行えるのが大きな強みとなっている。
アメリカ・KG社 ガンコート
ガンコートにプライマーやサフェーサーは不要で、サンドブラストで下地を整えたエンジンカバーに直接施工する。
純正塗装らしい雰囲気を出すために、メタリック感の少ないシルバーをチョイス。KG社の仕様によりシルバーがザラッとした仕上がりになるため、サテンクリアーを混ぜてツヤを出す。
ガンコートは厚塗りすると焼付乾燥で沸いてしまうので、必ず口径0.4mmのガンで施工するよう指定されている。
ガンコートは170度で1時間以上焼付乾燥することで放熱効果と表面硬度、耐薬品性が最大限に発揮される。
●文/写真:栗田 晃 ●取材協力:カーベック ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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