青木宣篤の上毛GP新聞

後輪を流しながら倒し込む!? そんなライダーを育てたKTMのちょっと特殊な走らせ方

スライドしながら倒し込む、そのメリットとは

コーナー進入でリヤを流すことは、比較的どなたでもできるワザではないかと思う。小学生男子は自転車テールスライドが大好物だが、アレと基本的に変わらない。

だが、そのまま旋回――つまりクリッピングポイントに向けてマシンを倒し込めるかと言われたら、話はまた別だろう。

下の写真はブラッド・ビンダーのコーナー進入だが、見て分かる通りリヤがスライドしている。彼はこのままグイグイとマシンを寝かせて、コーナリングを開始してしまうのだ!

ブレーキングでリヤを滑らせ、そのままマシンを傾けてクリッピングポイントについていく。本来は減速→旋回は別々のパートで、リヤスライドは減速のうちに済ませるのに、そのまま旋回してしまうとは…。

繰り返しになるが、進入のまだマシンが起きている段階でのリヤスライドはやりやすい。でも、そのまま倒し込んでいくことは非常に難しい。だが、ビンダーやミゲール・オリベイラといったKTM育ちのライダーはリヤスライドコーナリングができてしまうのだ。

恐ろしい。4輪のF1でカウンターステアを当てながら減速するようなきわどさがある。実際、KTM育ちのライダーたちも、条件が揃わなければこの走りはできないようだ。

そんなギリギリの走りに、どんなメリットがあるのだろうか?

ひとつは、リヤがスライドしていることによる摩擦で減速度が増すことだろう。そしてもうひとつ重要なのは、フロントを頼らない減速〜旋回が可能になることだ。

…というより、KTMのマシンはフロントに頼ることができない。フレームの特性上、フロントに仕事をさせることができないようなのだ。だからリヤから向きを変えるような走りがフィットするのだ。というか、言葉は悪いがそういう走りを強いられる。

そこへきてビンダーやオリベイラは、ずっとKTM育ち。もうそういう走りがすっかり身に付いている。ある意味、究極のマン=マシン一体化が完成している、というわけなのだ。

KTMの鉄パイプフレームは、決して優れているわけではない。レッドブルリンクでの2戦では調子がよかったが、サンマリノGPではイマイチ、というように、路面μにかなり左右される。

だが、マシンの欠点を補えるライダーをイチから育ててしまえば、トータルのパフォーマンスは上がる。スゴイ考え方だが、ビンダーやオリベイラらが勝ち始めているから、正しいとも言える。

ただ、この乗り方が身に付いたライダーが他で通用するかは…。


●青木宣篤完全監修 ●写真:MotoGP.com/Ducati/RedBull ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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