中央のラムエアダクトとセンターアップマフラーを踏襲しながら、印象が大きく異なる新生ホンダ CBR600RR。もともと空力自慢だったが、新型ではクラス最強の空気抵抗値を実現するとともに、機能美もまた見事な仕上がりだ。
シートカウル以外の空力マネージメントを刷新
多くの構成部品をアップデートしたニューCBR600RR。外装に関しても大幅な飛躍を遂げている。戦闘力を向上するため、テールを除いてカウルを一新。織りなす面のすべてが空力性能を意識しており、モトGPマシン=RC213Vで培った技術を注入することで、直4の600スーパースポーツで最少のCd値(空気抵抗値)を達成した。保安部品を装着した状態の従来モデルも、旋回時のCd値はモトGP800cc時代のRC212Vと同等以上だったが、新型はこれを凌駕したのだ。
【’20 HONDA CBR600RR】 外装はシートカウルを除いて一新され、前面&側面投影面積を最適化。空気抵抗を削減して運動性能をアップしながら、防風性も高めた。ショートテールが全盛の現在、センターマフラーは逆に新鮮に映る。●色:トリコロール ●価格:160万6000円
アッパーカウルの前面投影面積を減少したほか、延長したアンダーカウルで後輪に当たる空気抵抗を減少。加えて、サイド部の外装面積の小型化により俊敏なハンドリングに貢献している。ミドルカウル形状の最適化でラジエターの冷却効率もアップした。
そして最も注目すべきはウイングレットだ。ダウンフォースを発生させるモトGP発祥のデバイスで、600SSへの採用例は稀少。国産勢ではクラス唯一の装備だ。コーナー進入時は前輪荷重が抜けにくくなり、安定感がアップ。旋回中も荷重をキープし、スムーズなコーナリングに貢献する。
デザインも研ぎ澄まされた印象となり、LED4灯の顔も投入。兄貴分RR-Rに似た、タダ者ではないオーラが漂う。
シャープさの中に4気筒車ならではのマッシブ感
(左)翼と滑らかな形状のアッパーカウルが際立つフロントビュー。前後ウインカーはコンパクトなLEDとなり、計320gの軽量化に貢献。(右)センター&右出しマフラーのRC213Vに通じるレーシーなリヤビュー。RR-RよりモトGPマシン似だ。タイヤサイズは前後とも不変。
【LEDライトはマスの集中化にも】片側点灯だった2眼ハロゲンから、RR-Rを思わせるLED4灯に刷新。450g軽量化した上に、発光体をアッパーカウル内で重心に近づけて配置し、マスの集中化も狙う。
【600RRらしいセンター吸気・センター排気】’03の初代以来、シンボルのセンターアップマフラーを堅持。高効率なセンター吸気のラムエアダクトは’07以来の装備で、内部のプレートは整流+防水の役目を持つ。
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【逆スラントノーズのはしりだったPC40中期】最新のCBR1000RR-RやNinjaも採用する流行の逆スラントノーズ。’13年型で600RRがいち早く採用し、抜群の空力性能を誇った。
クラス最少のCd値を生む新エアロ
【翼端板でロールモーメントを低減】新兵器のウイングレットは、ダウンフォースを発生し、前輪荷重を安定させる。配置、形状、角度は入念に導き出され、上下先端の突起が渦の発生を抑制。バンクした際のロール(横)方向への揚力を抑え、鋭いハンドリングを妨げることもない。
燃料タンクカバー上面を従来より10mmダウン。低く伏せることで前面投影面積を減らし、600cc直4SSで最少のCd値0.555をマークする。アゴが収まりやすい形状も採用。
ミドル&ロアーカウルは側面のアウトレット形状を最適化し、導風&排風の効率をアップ。ラジエターの冷却効率を最大化した一方で、カウル面積は最小化している。ロアーカウルは後輪近くまで延長し、空気を下方に流す。
エアフローを示したCG。スクリーン角度を従来より起こした38度とし、アッパーカウルの構成面を緩やかなアールでつなぐことで空力と防風性能を両立した。伏せた状態で最大の性能を発揮するが、様々な姿勢にも対応している。
●文:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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