EICMA 2019では電動バイクを発表!

【EICMAで聞いた】新型カタナ誕生のきっかけをつくった“エンジンズエンジニアリング”とは何者か?

  • 2019/12/10

EICMA 2017で初公開された“KATANA 3.0”によってスズキ新型カタナ登場の物語が始まったのはご存じだろう。イタリアのエンジンズエンジニアリングがGSX-S1000Fをベースに作り上げたデザインコンセプトが大きな反響を呼び、これがスズキの手によって実現したものだ。そこで気になるのは、エンジンズエンジニアリングって何者? ということである。

KATANA 3.0の製作を手掛けたエンジニアリング企業

スズキの新型カタナは同社のGSX-S1000Fをベースに開発されているが、そのデザインは社外デザイナーがつくったことで知られている。始まりはEICMA 2017でイタリアのバイク雑誌「MOTOCICLSMO(モトチクリスモ)」誌のブースに展示されていた“KATANA 3.0”というカスタムバイク。同誌が誌面の企画として2016年春にスタートさせたプロジェクトで、モトグッツィのグリーゾやトライアンフのタイガー、GPXのを手掛けたデザイナー、ロドルフォ・フラスコーリ氏がKATANA 3.0をデザインした。

これが大きな反響を呼んだことからスズキが呼応し、ほぼそのままのカタチで量産バイクへとつながっていったのだ。

KATANA 3.0は翌年のEICMA 2018でも展示。このときには片面がシルバーで反対面はクレイという、あしゅら男爵のような状態だった。

さて、エンジンズエンジニアリングがKATANA 3.0プロジェクトのどこに関わっていたのかというと、車両の製作である。フラスコーリ氏がデザインしたボディワークを形にしたわけだ。そう聞くとカスタムコンストラクターのように思えてしまうが、今回のEICMA 2019で取材してみると、実はもっとさまざまな幅広い仕事をしていることがわかったので紹介したい。

単体部品だけじゃなく、車体をまるごとプロデュース

エンジンズエンジニアリングは、EICMA 2019で電動バイクのコンセプトモデル「STRATOS」を展示した。ただ、これはオフロードタイプの電動スクータースタイルを採用しており、KATANA 3.0からかなりかけ離れたものだ。流用部品はあまりなさそうだし、車両メーカーの試作品かのような雰囲気もなくはない。はたしてエンジンズエンジニアリングとは何者なのか?

そんな疑問に答えてくれたのは、CEOのアルベルト・ストラザーリ氏だ。軽く聞いてみようと思ったら親玉が出てきてしまって驚いたのはここだけのハナシである。

エンジニアリング(Engines Engineering)のCEO、アルベルト・ストラザーリ(Alberto Strazzari)氏。右は今回展示された電動バイクのコンセプトモデル、STRATOS(ストラトス)だ。 Engines Engineeringは28年間にわたって電動バイクを開発しているとのことで、最近では将来を見据えて電動パワートレイン技術にフルタイムで取り組むエンジニアチームを結成。今後もさまざまな制御技術を研究&開発していくという。

――まず今回のSTRATOSについて伺いたい。

「このSTRATOSは、自分たちの技術のデモンストレーションとして展示しています。電動バイクの時代が来ることを多くのユーザーが予感していますが、環境性能に関してはOKと思っていても、バイクとして楽しめるものかどうかは半信半疑。だから、ファンバイクとして楽しめるものを提案したかった。そして、これがなぜオフロードタイプなのかというと、それはファンバイクとしてアピールするのに最も適しているうからです。オフロードは路面のグリップがよくないし、パワートレインのレスポンスも良くなければなりません。そうした状況下でのコントローラブルさを見ていただければ、我々の技術力が分かっていただけると思います」

――デモ車両については全てを自社内でつくり上げているという。ということは、カスタムバイクを製作する会社ではない……?

「今年で40周年となったエンジンズエンジニアリングは、コンポーネントを売るのではなく、プロジェクトを売る会社です。このSTRATOSはフレームも、パワートレインも、コントロールユニットも、バッテリーも、多岐にわたる電動バイクのパラメータを全てコントロール下に置くため、社内で制作しました。そして我々はこれをそのまま売るつもりはありません」

――つまり、車両メーカーなどを相手にプロトタイプを製作し、そこからプロジェクトを一緒につくり上げていくのが仕事、ということのようだ。

「我々はプロデューサーであり、メーカーのパートナーでもあります。もちろん新技術を持ち込んだりもします。特に電動バイクの領域にはやるべきことがたくさんあり、どうしたらそれらを育てていくことができるのか、コストターゲットに到達できるのか。そしてもちろんパフォーマンスも。それらを統合して形にし、オファーするわけです」

――具体的にはどのようなアプローチで進んでいくのだろうか?

「3つのレベルに分けてオファーしています。ひとつはコンポーネントを提供することで、試作パーツなどもつくります。2つめは、プロジェクトに合わせてカスタマイズした技術を提供することで、日本やアジア諸国のメーカーが求める性能やコストに合わせてデザインしたパワートレインなどを売るわけです。そして3つめは、この電動バイクのように新しいテクノロジーを白紙から要望に合わせてつくり上げること。もしなにかつくりたければ我々に相談してください。プロジェクトの最初の部分からパートナーになることができます」

――それらを支えるスタッフはどのように構成?

「エンジンズエンジニアリングは40年にわたってバイクづくりに携わってきました。従業員数はおよそ100人で、いくつかの部門に分かれてクライアントに対しプロジェクトの提案、市場調査、開発などを行っています。社内でボディワークデザイン、プロトタイプ製作、ベンチテスト、振動テスト、エミッションテスト、音響テストなどもします」

――私たち日本人からすると、KATANA 3.0が最も有名だが……。

「あれもプロトタイプの一種ですが、(ベースがあるので)もっともシンプルな部類です。ほかにはドゥカティスクランブラーや、中国/アジア/日本メーカーのアジア向け車両などにも関わっています。スタイリングや開発など、さまざまな項目を一括して請け負いますよ」

――では最後に、このSTRATOSは今後は何につながっていく?

「それはわかりません(笑)。これはあくまでも提案ですから。でも、つくってくれとなれば、いつでもできますよ。乗ったら面白いと思いますね。スムーズでリニアなファンバイクです」

【Engines Engineering STRATOS/PROTOTYPE】主要諸元■軸距1350mm 最低地上高200mm シート高810mm■動力EM-Sync-IPM-10/12-48V-Evo■0-50km/h加速3.7秒 最高速度85km/h 最高出力約9.5ps 最大トルク23.46kg-m 車重120kg WMTCレンジ110km■キャスター26° トレール100mm
スマートフォンを貼り付けたようなメーターには、通常のバイクのメーターの機能のほか車両状況の表示、ナビゲーション、天気予報などの役割も持たせているようだ。
STRATOSの実際の走行シーン。ストラザーリ氏いわく「かなり楽しい」とのこと。

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ヨ

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)