走り慣れた高速道路で乗っているが、自分の経験に基づく距離感が完全におかしい……。あっという間に、目的地に到着してしまった。なんと言えばいいのか、それは到達時間の速さだけでなく、疲れをまったく感じない。つまり、ストレスなしに高速クルージングできてしまう。サンダンス柴崎武彦氏がつくった、アメリカ大陸横断4600kmを前提としたホットロッド・ツアラー『Trans-Am(トランザム)』だ!
●取材協力:サンダンス ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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いつまでもどこまでも走りたくなる真のコンフォート性
仕事柄、いろいろなバイクに乗る機会があり、乗り味という観点から見れば、どんなニューモデルもカスタムも想像の範疇にあるか、あるいはその枠から少し外れているかという程度であることがほとんどだ。良くも悪くも……。しかし、柴崎武彦氏率いるサンダンスが手がけたこの「トランザム」は、イメージ通りではないところが多く、興奮せずにはいられない。
さて、何から説明すればいいだろう。はやる気持ちを抑えて、まずは心臓部から。空冷45度Vツインの排気量は、127キュービックインチ=2070cc。
2本のカムシャフトを腰下に持つOHV2バルブエンジンは『スーパーXR-TC』と名付けられているコンプリートエンジン。ツインカム・ユニットをベースに、排気量をオーナーの好み次第で設定可能。この車両では吸気機構をフューエルインジェクションとし、従来のFCRキャブ仕様よりますます扱いやすい。
アイドリングは低く落ち着き、極低回転域でも燃焼室の混合気が正しく確実に燃えて排気されていることが力強いサウンドを聴いていると想像がつく。
ギヤを入れて走り出すと、クラッチやトランスミッションだけでなく、車体の隅々まで可動部のすべてがスムーズに動いていることが、すぐに乗り手に伝わってくる。ブレーキのタッチやシフトフィール、操作系のすべてがコントロールしやすく、サスペンションのしなやかな動きを含め、まるで一線級のレーシングマシンに乗ったときのような感覚だ。
5年ほど前、ヤマハに鈴鹿8耐スーパーストッククラスで優勝したYZF-R1を菅生サーキットで乗らせてもらったことがあるが、あのとき感じた一切無駄のないダイレクトな操作性を思い出す。
8耐と言えば、サンダンスも98年に参戦し、唯一ハーレーで走ったと伝説化されていることもここで触れておきたい。全米選手権スーパーツインクラス参戦などレーシングシーン最高峰への挑戦から培われた技術力やノウハウが、このマシンに乗って感じる従順なコントロール性を生み出しているのだ。
柴崎氏にしてみれば、レーシングマシンでも大陸横断ツアラーでも、モーターサイクルはまず扱いやすくなければならない。そこに一切の妥協はないのである。
スロットル操作に対するレスポンスもシャープで、アクセルをワイドオープンしたときの加速は凄まじく、摺動抵抗が一切ないのではないかと思えるほどにVツインエンジンは滑らかに回っていく。
雑味のない鼓動がダイレクトに味わえ、ゆっくり流してもビッグツインらしいトルク感に酔いしれそうなほど味わい深く、とても心地良い。レーシングシーンでは速さを競うが、公道、特にロングライドでは乗り手を飽きさせないテイスティさも肝心なことも熟知している。
そもそもこのトランザムは、自らがヘリテイジでアメリカ横断4万6000kmのロングライドを繰り返す途中、経験に基づいてアイデアが生まれたものだ。果てしなく長い道のりの最中、宿泊したモーテルの部屋でスケッチに描いたのがこのシルエットであった。独自開発したフェアリングの空力特性には舌を巻く。
身体に風圧はまったく感じず、シールドのないヘルメットでも顔が冷えない。形状はまったく違うものの、パッと見では“バットウイングフェアリング”を想起させる。“らしさ”にこだわり、誰が見てもハーレーだとわかるヤッコカウルのシルエットを踏襲した。
驚くのは、右手のスロットルグリップを戻したときだ。エンジンブレーキはイメージ通りだが、車体がスーッと前へ進んでいく。一体どういうことか……。
柴崎氏によると、通常のバイクは空気抵抗を強く受けていて、駆動力が途切れた途端に急減速することになるが、エアロダイナミックスを追求し抵抗を極力減らしたトランザムは空気を効率よく後方へ流し、減速が圧倒的に少ない。なので、アクセルを戻したときにも前へ車体が進む感覚を乗り手が強く感じるのだ。
何もかもが素晴らしい違和感だ。見るからに大きいFLHに匹敵する迫力だが、サイドスタンドを払って車体を起こすとスッと軽い。シャシーはソフテイルフレームをベースとし、アルミ製タンク、ドライカーボンのリヤフェンダー、軽量高剛性のスイングアームも専用開発。TC時代、FLHの車体重量は430kg程度だったが、トランザムではわずか300kgに抑えられた。
ホイールベースはソフテイルが1635mmほどなのに対し、1700mmと延長し、優れた直進安定性を実現。シート高はFLHが740mm、トランザムは620mmとし、取り回しも良好にしている。
軽く低重心のシャシーと2000cc超えのハイパワーエンジンを組み合わせ、さらに空力に優れたフェアリングを備えた最強のネオ・ツーリングマシンだ!!
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