300km/hをたぐり寄せた高効率版

時代を切り拓いた革新のエポックマシン:カワサキZZ-R1100【大型初・ラムエア】


●文:沼尾宏明 ※本記事で取り上げる「初」は、公道走行可能な量産二輪市販車としての”初”を意味します。なお、その定義には諸説ある場合があります。 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

’90 ZZ-R1100〈大型初・ラムエア〉300km/hをたぐり寄せた高効率版登場

’80年代中盤、レプリカが絶頂を迎える中、カワサキは独自の最強最速路線に注力した。最高速250km/hを突破した’84年のGPZ900Rを皮切りに、’86年のGPZ1000RX、’88年のZX-10と矢継ぎ早に後継機を送り出し、最高出力は900Rの115psから137psに到達。最高速も270km/h超に及んだ。そして’90年、ZZ-R1100(C1)がデビュー。排気量はついにリッター超えの1103ccとなり、147psをマークした。さらに空力特性に優れたカウルと大型車初のラムエアを投入。ノーズから導入する高効率タイプで、前人未踏の300km/hに迫る決め手となった。当初注目度は低かったが、実力が知れ渡り、最速マシンとして’90年代中盤まで長期政権を築くに至ったのである。

【’90 KAWASAKI ZZ-R1100】■車重228kg(乾) 水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 1052cc 147ps 11.2kg-m ※輸出車

吸気効率の高いノーズにラムエア吸入口を設置。ダクトは車体左から取り回し、走行風を直線的にエアボックスへ導く。過給効果により最高速付近で数%の馬力増が可能だ。C型のダクトは左寄りの非対称デザインが特徴。

ZX-10の水冷直4をベースにボアを2mm拡大し、ボア76×ストローク58mmに変更。排気量は997→1052ccに到達した。φ40mmCVKキャブのほか、ピストンやクランク、バルブなどの動弁系も新作だ。ラジエータは湾曲形状で冷却効果を高め、対向4ポットキャリパーなど足まわりも充実した。

メーターには320km/hの文字が踊る。ノーマルでは実測280km/h程度。ボンネビル最高速チャレンジではドクターSUDAのカスタム車が308km/hを叩き出した。

’92年型C2のカタログ。ハードなイメージながら、素直な出力特性とハンドリングで乗りやすさも抜群だった。

’93 ZZ-R1100:D型でツイン吸気に

’93年型でD型へ移行し、全身の熟成が進んだ。心臓部は新作ピストンで耐久性をアップし、ミッションも改良。ラムエアはツイン吸気となり、過給効果を一層高めた。車体面も新設計フレームやブレーキの強化で快適性を増している。なお、’90年代終盤に呼称が”ZZ-R”から”ZZR”に統一された。

【’93 KAWASAKI ZZ-R1100】■車重233kg(乾) 水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 1052cc 147ps 11.2kg-m ※輸出車

エアインテークはシングルからツインとなり、左右にダクトを配置。吸入効果が大幅にアップした。合わせてエアボックス容量も拡大。カウルは一層滑らかなデザインに変更し、タンク容量も増加された(21→24L)。

燃料計を追加し、インジケーターの配置も洗練。320km/hスケール、レッド1万1500回転以降は不変。

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