日本でも2020年4月4日に発売されたカワサキのNinja 1000SXだが、スペインからテストレポートが入ってきたのでお届けしたい。大幅な改装でスポーティさを増し、電子制御と快適性の面で多くの新しい機能を取り入れたニンジャの実力とは? テスト担当はソロモト誌の女性ライダー、Judit Florensaだ。
TEXT:Judit Florensa PHOTO:KAWASAKI ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ラフで快適なモデルを求める“R”の世界の住人にとってニンジャ1000SXは完璧な回答
スポーティさと快適性を同時に達成する。離れているはずの2つのコンセプトを信じられないレベルで融合したのがZ1000SX(日本名 ニンジャ1000)だった。そして2020年モデルのプレゼンテーションで示されたスローガンは「両方の世界で最高」であり、それは完璧に成功しているように見える。まるで天使と悪魔を同時に内包しているかのようだ。
2003年登場のZ1000から数えて第4世代となるこのマシンは、Z1000SXからニンジャ1000SX(欧州&日本で共通名を採用)への名前の変更に合わせて、よりレーシングイメージの外観となった。これは、Ninja ZX-10Rなどの“R”の世界に重みを寄せたように見える。成熟したライダーたちは今もスポーツを楽しんでいるが、より快適なものが欲しいと考え、週末のツーリングやバイク旅行にも惹かれている。これを1台で達成する手段はないものか……。
両脚の間のスーパーバイク
アップライトなライディングポジションやパニアケースが、ただの見せかけに思えてしまう可能性があることは知っている。なにしろコイツは、1043cc/141ps/11.3kg-mの並列4気筒エンジンを搭載しているからだ。レスポンスはパワフルで、テイスティでもあり、リニアで扱いやすい特性を持っている。ショート気味なギヤ比により、高回転域まで常に使い切ることもできる。
コルドバで行われた国際試乗会では、さまざまな状況でテストできるように、たとえば5速からシフトダウンせずに速度の低いラウンドアバウト(環状交差点)に進入したのだが、まったく問題なく、通常と同じように加速できた。そして交通量が少ない区間でスロットルを引き絞れば、ターボシップが離陸しようとしているかのような加速で、バイクにしっかりとしがみついている必要がある。
カワサキのスーパーバイクを所有することは優れたパフォーマンス、つまり“R”が持つセンセーションをを保有できることにほかならない。ニンジャ1000SXにはそれがある。我々のようなスポーツライディングを好むライダーにとって、これは人生の半分を保証されたようなものだ。
車体に目を移すと、ニンジャ1000SXはアルミ製ツインスパーフレームにφ41mm倒立フォーク、ホリゾンタルバックリンク式リヤサスペンション(どちらも調整可能)が安定性をもたらしている。路面の起伏でも落ち着きが失われることはなかった。ただ、安定性と引き換えに敏捷性はわずかにスポイルされている。とはいえ、それは思ったよりもはるかに少ないレベルだった。低速で曲がりくねった道ではZ900ほどの俊敏さはない、という程度だ。
こうした特性は荒れたアスファルトや乾き切っていない水たまり跡、木の根などによる鋭い凹凸、トラクターが残していった砂利などで強みを発揮する。6軸IMU(慣性計測装置)によるコーナリングABS(KIBS)と、バンク角を考慮したトラクションコントロールシステム(KTRC)はさまざまなレベルの介入を行っており、安全性、効率、安定性に貢献している。
タイヤは新しいブリヂストンのバトラックスハイパースポーツS22を装着しており、ソフトな構造から優れたパフォーマンスとグリップを発揮。寒い朝の条件でも不安なく使用できた。
カワサキテクノロジーの頂点に
このスポーツツーリングマシンは2050年に生きている……というのは冗談だが、クイックシフター、ライドバイワイヤ―、フルLEDライティングなど、ありとあらゆるものを搭載している。これらはすべて新しいものだが、リストはここで終わることはない。情報が豊富で読みやすい4.3インチのカラーTFT画面を起動すれば、多数の表示パターンが使用可能で、カスタマイズも可能。すべて左手元のパイナップル状のキーパッドから操作できる。バンク角のリアルタイム表示も可能だ。
Bluetoothを介してスマートフォンに接続すれば、Rideology(ライディオロジー)アプリケーションと連動して体験の幅を広げてくれる。もちろんスマートフォンの多数の機能にアクセスすることも可能だ。
もうひとつのハイライトは、クルーズコントロールなどのガジェットだ。限りないツーリングルートで速度レーダーにおびえる必要もない。ライディングモードはロード、スポーツ、レイン、ライド(調整可能)があり、シート下にはUSB電源ソケットも装備している。
走りの爽快さを共有する楽しみ
快適性の面で行われた作業は卓越している、座面は幅が広がり、ライダーとパッセンジャーの両方にとって快適だ。距離を稼ぐのは容易であり、また渋滞などにハマっても苦にならなかった。
調整可能なスクリーンは、身長167cmの私にとって十分な大きさがあり、必要ならばアクセサリーで大型のものも用意されている。同様に、私の身長でも足着き性に問題はほとんど感じなかった。ただ、私の体力だと235kgの車重を軽々と取りまわし……というわけにはいかない。
ハンドルバーの位置はもちろんZX-10Rよりも高く、ライディングポジションは直立したものになっている。完璧に快適というほどではない。ウインドスクリーンは4つのポジションに工具不要で調整可能。ただし走行時は不可なのと、生粋のツアラーに比べると全身が守られているというほどではない。高い位置に合わせればヘルメットの上を風が流れていくが、両腕が涼しいことにしばらく走って気づいた。
パニアケースはオプションであり、アクセサリーのカタログで見つけることができるだろう。これを装備することで、ツーリングマシンの外観になる。また、外せば“R”になる。この二面性によってすべての領域を十分にカバーできるだろう。ただし、街中でパニアケースを装着している場合は、左右の張り出しに注意が必要だ。
欧州での価格は1万5150ユーロで、写真のグレーのほか緑と白の計3色が入手できる。ひとことで言えばパフォーマンスツアラー。欠けているものは、何もない。
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