世界初&日本初、二輪車技術進化の歴史

時代を切り拓いた革新のエポックマシン:スズキGSX-R750【世界初・油冷エンジン】


●文:沼尾宏明 ※本記事で取り上げる「初」は、公道走行可能な量産二輪市販車としての”初”を意味します。なお、その定義には諸説ある場合があります。 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

’85 スズキGSX-R750〈世界初・油冷エンジン〉第三の冷却方式で超軽量化

’85年にデビューしたGSX-R750の「最高出力100ps、乾燥重量176kg」というスペックに、世界中のライダーが驚愕した。ナナハンが軒並み車重210kg超だった時代に、400㏄並みの軽さを実現したからである。その秘密が、RG250などで培ったアルミフレーム、そして市販車初の油冷エンジンだ。耐久レースで勝利するため、目標車重は176kgに設定。当初は空冷や水冷も検討されたが、前者は熱的に不利、後者は重量増につながる。そこで導き出されたのが第三の冷却方式と言える「油冷」だった。これは、エンジンオイルをシリンダーヘッド上面へ大量に噴射する冷却方式。ウォータージャケットが不要のため、構造は空冷並みに軽量シンプル、かつ水冷に迫る冷却性能を両立していた。軽さゆえの俊敏な運動性能が評判を呼び、R750は大ヒットを飛ばしたのである。

【’85 SUZUKI GSX-R750】■車重179kg(乾) 油冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 749㏄ 77ps 6.4㎏-m ■当時価格:78万円 ※国内仕様

第2次大戦の米軍戦闘機P51ムスタングの液冷エンジンからヒントを得た「油冷」。ヘッドカバー内側にある8本のノズルから、燃焼室上面に毎分20Lのエンジンオイルを噴射。冷却に使用したオイルは中央の通路と左右のパイプからクランクケースへ戻り、潤滑に使われる。

【速さは強烈。レースで強い】輸出仕様は100ps、ライトチューンでさえ簡単に130psまで到達。デビュー当時のルマン24耐でいきなり優勝したほか、全日本TT-F1を3連覇し、AMAでも勝利。当時、世界のサーキットがR750で溢れ返った。

【1年後にさらなる大排気量版も】R750をベースに、1052㏄へ拡大した1100もデビュー。130psを叩き出し、車重も197㎏と軽量だった。異例のリッター超級スポーツは衝撃的。スズキは’83年のRG250Γを皮切りに毎年、革新作を送り出したのだ。

’86 GSX-R750R〈国産初・100万円超〉憧れの乾式クラッチに電子式サスまで獲得

辻本聡+ヨシムラの全日本優勝を記念した500台限定仕様が「R」。乾式クラッチやFRP製シングルシートをはじめ、リザーバータンク別体式リヤショック、電子制御式アンチノーズダイブFフォークまで備えた。結果、国産車で初めて100万円を突破し、話題になった。

スズキGSX-R750R

【’86 SUZUKI GSX-R750R】■車重181kg(乾) 油冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 749cc 77ps 6.4kg-m ■当時価格:105万円

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