GSX750ES/GS1000RからGSX-R750まで

【ヨシムラ 8耐マシン一挙紹介】鈴鹿8耐・栄光のTT-F1マシン[1985-1993]#スズキ×ヨシムラ編-02

1988年の天才ケビン・シュワンツの苦闘を描いた前回に続くのは、もちろんその戦いに使われたワークスマシンだ。そしてスズキ編では、ヨシムラが作ったF1マシン(1988)とうりふたつの市販車(1989)にフォーカス。そして歴代ワークスマシンを紹介していきたい。

※ヤングマシン2016年8月号より復刻

公道市販モデル SUZUKI GSX-R750R[RK]1989:’88年のヨシムラのF1マシンとうりふたつの“本気”仕様

ホンダRC30、ヤマハOW-01に続くリアルレプリカで、500台の限定発売。前年のTT-F1を戦ったヨシムラのマシンと多くの共通部品を持ち、ほぼ同等のポテンシャルが与えられた。キャブ口径はワークスと同じφ40㎜とし、他にもチタンバルブ、バフがけコンロッド、クロスミッション、サブフレーム付きスイングアームなどがおごられている。フルパワー仕様は120ps。

【SUZUKI GSX-R750R[RK]1988】デュアルオイルクーラー、アルミ製燃料タンク、サブフレーム付きスイングアームなど上級装備を誇るRK。STDとは別格の存在だった。■全長2070 全幅730 全高1110 軸距1405 シート高785(各mm) 車重187kg(乾)■油冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 749cc 77ps/9500rpm 6.8kg-m/7000rpm 燃料タンク容量19L■タイヤF=130/60R17 R=170/60R17 ●当時価格:165万円
【GSX-R750〈TT-F1〉1988】RK の車体構成や中身は’88年の全日本を走っていたヨシムラ・トルネードからほぼ踏襲された。
フロントフォークはインナーロッド式正立タイプ。冷気吸入インテーク(SCAI)も装備する。マフラーはSTDの2本出しに対し、右1本出し集合を採用。タイヤはミシュラン製だ。
メーターまわりもシンプルかつアグレッシブで、別体リザーバーなども相まって、レーサーと違わぬ雰囲気を持っていた。
’88年型でショート化されたエンジンストロークは、ヨシムラのF1マシンにならって元のボア×ストロークに戻されている。
カウルはFRP製。当時としてはかなり割り切ったシングルシート仕様は、リアルレプリカの証でもあった。色は青×白のツートンのみ。
完成度の高い基本骨格とサスペンションはSTDを踏襲。エンジンカバー類の取付け面を変更し、バンク角を右1度05分、左2度25分、改善している。

スズキ×ヨシムラ8耐レーサーと公道市販モデルを一挙紹介!

※各車の写真は図の下方にあります。

1983年のGS1000Rからフィードバックがなされた。

空冷4気筒をモリワキ製フレームで投入[1983-1984]

[1983/2 GSX750E(E4)・公道市販モデル]鉄製ダブルクレードルフレームに空冷直4エンジンを搭載。ハーフカウルとリヤ1本サスを持つ。
[1984 GSX750ES・ヨシムラ8耐レーサー]モリワキ製フレームの750E(海外名ES)2台を8耐に投入した。

GS1000Rから市販車へフィードバック[1983]

[1983 GS1000R・スズキワークスレーサー]空冷エンジン搭載のスズキワークス耐久レーサー。TT-F1世界選手権や世界耐久などで活躍した。これが市販車のGSX-R750へと繋がっていく。

アルミフレーム×油冷エンジンで750ccレプリカ元年へ[1985]

[1985/3 GSX-R750(F)・公道市販モデル]初代GSX-R750 。アルミフレームと油冷エンジンを採用し、徹底的な軽量化に成功。GSX750Eと比べてトータルではなんと-31㎏となった。
[1985 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]GSX-Rで初の8耐挑戦。シュワンツ/クロスビー組が3位を獲得。

2代目で“R”仕様も登場した[1986]

[1986/4 GSX-R750(G)・公道市販モデル]2代目のGはラジアルタイヤを採用。
[1986/2 GSX-R750R(RG)・公道市販モデル]乾式クラッチなどを備えた500台限定のRGも登場。
[1986 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]骨折中の辻本用に特製ペダルを装備。シュワンツと組み3位に。

ハイメカ搭載で最後のマイナーチェンジ[1987]

[1987/3 GSX-R750(H)・公道市販モデル]フロントブレーキや電気式アンチノー
ズダイブなど足まわり中心に改良。ステアリングダンパーも新設された。
[1987 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]独走のグッドフェロー/高吉組がゴール直前に他車と接触。2位。

初のフルモデルチェンジを果たした[1988]

[1988/3 GSX-R750(J)・公道市販モデル]初のフルモデルチェンジ。フロントホイール17インチ化や油圧→機械式クラッチへと変更された。
[1988 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]ベース車の熱問題に悩まされるもシュワンツ/ポーレンが2位獲得。

再び“R”仕様が登場。前年のヨシムラマシンとうりふたつ[1989]

[1989/3 GSX-R750(K)・公道市販モデル]ギヤ比やホイールベースを変更。
[1989/4 GSX-R750R(RK)・公道市販モデル]限定500台のRKは165万円。ほぼSTD仕様2台分の価格だった。
[1989 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]RKのエンジンをチューンしスズキワークス製フレームに搭載した。

倒立フォーク採用の’90モデルは’89年末発売[1990]

[1989/12 GSX-R750(L)・公道市販モデル]フロント倒立フォークや1本出しマフラー採用でサーキットでの戦闘力アップが図られた。
[1990 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]油冷の限界が明確に。ラストでオイルを吹くも執念の6位入賞。

高回転化を図った油冷最終モデルが登場[1991]

[1991/3 GSX-R750(M)・公道市販モデル]油冷最終モデル。1バルブ1ロッカーアームで高回転性能を向上。カウルも新型になった。
[1991 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]油冷最終型。悪天のレースで転倒や炎上にめげず完走した。

ついに水冷エンジン搭載へ[1992]

[1992/1 GSX-R750(WN)・公道市販モデル]水冷にフルモデルチェンジ。フレームも新型となったが、ダブルクレードルタイプを踏襲していた。
[1992 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]水冷化。キャブにヨシムラ独自のMJNを搭載。

ヨシムラの独自性がより顕著になっていく[1993]

[1993/7 GSX-R750(WP)・公道市販モデル]
[1993 GSX-R750・ヨシムラ8耐レーサー]スズキワークスと異なるサスやミクニキャブで独自性が明確に。

●文:高橋 剛/飛澤 慎/沼尾宏明/宮田健一 ●写真:鶴身 健/長谷川 徹/真弓悟史

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