新型となったBMW F900R、そして新たにラインナップに加わったF900XRを、モーターサイクルジャーナリストの鈴木大五郎氏がスペイン・アルメリアでテスト。激戦区に再参入するなか、譲れないというFシリーズのテーマとそのキャラクターの変化を探った。後編はXRを中心にRとの明確な作り分けについて考察する。
●文:鈴木大五郎 ●写真:BMW ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
【TESTER:鈴木大五郎】様々なバイク遊び、レー ス経験を持つMCジャーナリスト。自身のスクール主催のほか、BMWモトラッドの公認インストラクターも務める。
シングルエンジンからスタートしたBMWのFシリーズ。現在は並列ツインシリーズに付けられた名称であるが、その頭文字にはどういった意味があるのだろう。Funなのか? Freedomなのか? しかし「これ[…]
GSと共通車体ながら見事なつくり分け
(前ページより続く)
一方、車体周りはメインフレームとスイングアームを基本的にGSと共通とする。前モデルは鉄製トラスフレームのGSに対し、アルミ製ツインチューブフレームのRと、それぞれが専用のものを用いていた。
たしかに、こうすることでコストを大幅に削減できるのだろう。
この手法は10年も前から模索していたとのことだが、ジャーナリスト的立場から言えば、オンロードとオフロードでまったく同じ車体を用いるのは……。
しかし、走り出してみればそれはまったくもって安定していて、不安定な挙動を示す気配がまったくない。
RもGSもそれぞれが専用のフレームとスイングアームを持っていた前モデルをしっかり超えているのだ。
GS登場時に我々はそれが両モデル共通などとは知らなかったのであるが、当然両方のモデルを視野に入れながら設計をしていたとのことである。また、燃料タンクの位置がシート下からオーソドックスな位置に変更となったことも、運動性の向上につながっていると感じられた。
ランチブレイクを挟んで、今度はXRにまたがる。新機種となるこのマシン。単純にRにアッパーカウルを装着したのみならず、細かいパートを専用設計としている。
【’20 BMW F900XR】主要諸元 ■全長2105 全幅860 全高1320-1420 軸距1530 シート高825(各mm) 車重223kg(装備) ■水冷4スト並列2気筒 894cc 内径86×行程77mm 圧縮比13.1:1 最高出力105hp/8500rpm 最大トルク8.36kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量15.5L ■キャスター29.5°/トレール105.2mm ブレーキF=φ320mmWディスク+4ポッドキャリパー R=φ265mmディスク+1ポッドキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:114万8000円〜
過去にはF800GTというツアラーイメージのマシンがあったが、GTとは違うのはそのスタイリングイメージだけでなく、前後のサスペンションがストロークアップされ、よりアクティブに走れそうな雰囲気がある点。
前後の荷重配分は、Rの50対50 に対し、XRはやや前輪荷重が増した51対49。
エンジンはまったく同じものとはオフィシャルのコメント。しかし同じモード設定で走らせたときに感じられた特性の違い。Rと比較してマイルドに感じたと正直に開発者に伝えたところ、足回りの設定や重量の違いに対し、99%のライダーが気付かない程度に、アジャストされているとこっそり教えてくれたのだった。
ストロークの増した前後足回りにより、マシンのフィーリングもより優しいものとなっている。静止状態ではRよりもフロント寄りという重量配分であるが、ライダーが跨るとそこに変化が生じるようで、むしろこちらのほうがヒラヒラと自由度の高いハンドリングとなっている。それは、ストリートで乗ると、良く出来たロードネイキッドマシンのように感じるF750GSと、F900Rの中間ともいえるフィーリングで、ライダーに自信を与えてくれる類のものとなっている。もちろん、大型のアッパーカウルは防風効果も高く、上半身だけでなく膝回りをもサポートしてくれる。高速巡行時には振動等、大幅に低減されており、快適性は段違いに高まっている。
昨今の日本市場でのパーパスを考えると、このXRこそがFシリーズの真打では? と想像してしまう。しかし、いずれにしてもわが国での高い資質を持っている2台であるのは間違いない。
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BMW F900XR
前後足回りはフロントが135mm(R)→170mm(XR)。リア142mm(R)から172mm(XR)とストロークが伸び、それに伴いホイールベースやトレールも異なる。
R同様、量産バイク初となるプラスチック溶接式燃料タンクは従来のシート下から通常の位置へ。Rの13Lに対し15.5Lの容量を確保。テスト車両はミシュラン製ロード5を装着。
Rに対し、よりアップライトでゆったりしたポジション。ステップ位置も低めとなる。撮影車両のシートは欧州でのSTDだが、ほかにオプション5種をラインナップする(身長165cm/62kg)。
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スクリーンは2段階のアジャスト式。レバーを上下にパタンと倒すシンプルな方式で、走行中でも操作可能。防風効果もかなり高い。
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ライトは2灯式でこちらもアダプティブコーナ ーリングライトを設定。デイタイムランングライトは残念ながら日本では未装備となる。
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ホールド性良いダブルシートはオプションを含め全部で6種類をラインナップ。前部サイドがスリム化され、足つき性にも貢献している。
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270度クランクを逆回転駆動するエンジンはRと共通。競合ひしめくクラスで競争力を上げるため、GSからそのまま転用しなかった。
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