バーハンドルに片持ちスイングアーム、水冷エンジンを語る

「CB-Fコンセプトはアリ? ナシ?」CB750F/CB900Fに熱狂した男・丸山浩に聞く

昭和40年世代を直撃する「CB-Fコンセプト」がホンダのバーチャルモーターサイクルショーで公開されて話題に。そこで、CB750F/900Fがバイクの免許を取るきっかけになったという熱き“F”ファンである丸山浩に、実際のところアリなのかナシなのか、聞いてみた。


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ホンダが4月27日から公開している「バーチャルモーターサイクルショー」では、ワールドプレミアとしてCB-Fコンセプトが初お披露目された。1980年代のバイクブームを過ごしてきた昭和40年世代にとっては「待ってました!」のデザインだが、一方でCB1000Rをベースとしていることから水冷エンジン搭載かつ1本サスなど、スペックは最新のバイク。こうしたコンセプトではカワサキのZ900RSが大きな成功を収めており、同時にオールドファンからは賛否の声も聞こえていた。そんな中でのCB-Fコンセプト登場である。

2019年はCB92の登場から60周年、CB750Fourから50周年、そしてCB750F/900Fから40周年という記念すべき年だった。これもあってか、CB像をもう一度見つめなおす機運ができているのだ。そして従来のCB1100EXなどがCB750Fourをオマージュしてきたのに対し、新しいCB-FコンセプトはCB1000Rをベースとし、CB900Fの北米カラーをモチーフとした提案になっている。

これが昭和40年世代にとってどんな意味を持つのか。当事者ど真ん中とも言える、ヤングマシンメインテスターの丸山浩に話を聞いた。丸山はCB1100をベースにCB900Fを再現する「Project-F」を手掛けるなど、生粋の“F”ファンとして知られている。

丸山浩:ヤングマシンメインテスターを務める、Withme会長。CB750F/900Fを見たことがきっかけとなってバイクの免許を取得した。1964年(昭和39年)生まれ。

――丸山さんの世代にとってCB-Fとは、やはり思い入れが強いもの?

このCB-Fコンセプトの形とカラー……私にとっては、「バイクってカッコいい!」と思ってバイクに乗り始めるきっかけになったマシンがCB750F/900Fでした。カッコいいマシンがあるとバイクに乗りたいという気持ちになる。みんなそこから免許を取るわけです。

古き良きマシンなんだけれど、今の人たちがバイクの免許を取ろうかなと思うきっかけになるカッコよさがCB750F/900Fにはあると、改めて思うわけです。その形がCB-Fコンセプトでは再現されていて、変わらないところもあり、でも新しい伝承でもあり……私としては100%受け入れています。

空冷エンジンかどうか、そして丸山浩はこれをどう思っているのか、お客様でも気にする人が多い。私のところでは空冷で「Project-F(CB1100をベースとしたコンプリートカスタム)」というのを作ってきたこともあり、もちろん空冷ならではの良さもわかっているのですが、やはりメーカーは最新の水冷でこの形を作ってくるわけです。

[CB-Fコンセプト]CB1000Rをベースとし、998cc水冷の直4エンジンをモノバックボーンフレームに搭載。クイックシフターも踏襲している。

デザインを懐古主義にするのか、最新とするのか。2018年に登場したCB1000Rは、その点で新し過ぎた。カッコいい形、オートバイってなんだろうなと思った時、やっぱりこのCB-Fのカタチが私たちの世代には突き刺さるんです。

それが、まったく1980年代のCB-Fを知らない人にも刺さったら、このカタチが正解だったということになるんでしょうけど、そこはまだわかりません。刺さるんじゃないかとは思っていますけど。

[CB-Fコンセプト]3月27日にホンダが「バーチャルモーターサイクルショー」で初公開した。ベースマシンはCB1000Rだ。

ホンダCB1000R
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ベースマシンとなったCB1000R。並列4気筒エンジンやモノバックボーンフレーム、片持ちスイングアームなどがCB-Fコンセプトにも活かされている。●価格:167万900円

ディテールに宿る“F”の魂

――では、丸山さんが思う“F”らしさとは?

CB-Fコンセプトで“F”らしいなと思うのは、やっぱりリヤを跳ね上げたところじゃないですかね。今時のデザインは跳ね上げる前にスパッと終わらせるのがトレンド。CB1000Rもスパッと切っていた。それをちょっと長めに後ろに伸ばしているところですよね。

それと燃料タンクの形状。当時のCB750F/900Fそのままをよく作っていると思います。ポイントはフロントまわりのエラ。それとエンジンとのクリアランスをギリギリまで追い込んでいるところ。ここに隙間が空いていると見かけが悪くなりますから。長いタンクなのも見逃せません。現代の乗りやすいライディングポジションを意識すると、このタンクは長い。

[CB-Fコンセプト]後ろまできっちり伸びたシートカウルやスクエアな燃料タンクが“F”の特徴をよく捉えている。

CB1000Rであれば、安全面と乗りやすさのためにシートがタンク後端に乗り上げています。でもCB-Fコンセプトは、タンクが長いためにシート前端をスパッと終わらせている。これはギリギリまで前に乗せたいからでしょうね。ライディングポジション的には後ろに乗っている印象、またはフロントが遠い感じで、ちょっと大きめのマシンに感じるはず。よく再現したなと思います。あと、タンク後端のエラですね。このまま発売されるかはわかりませんが、このままだとヒザが当たって痛いはずなんです。当時のマシンも痛かった(笑)。

プロジェクトF(空冷CB1100ベースのコンプリートカスタム)ではエッジを立てず、わずかに丸みを付けた。そうするとエッジが少し消えるんですが、このCB-Fコンセプトは実際に売る時にどうなるのか。昔のFのままでいくなら、ライダーには多少の我慢を強いることに。でも、全部丸くすると今時のデザインになってしまいます。

このCB-Fコンセプトの燃料タンクは、たたずまいを見ても陰影がスッキリしています。エッジの部分で影がスッと消えるんです。これはよくやったなと思いますが、本当にこのまま出すんでしょうか。見どころだと思います

[CB-Fコンセプト]燃料タンクは前サイドも後端もエッジが立ったスクエアな形状。陰影の付き方もスッキリしている。

――このCB-Fコンセプト、ディテールとしては、往年のCB750F/900Fのようにジュラルミン鍛造のセパレートハンドルではなくバーハンドルを採用、さらに片持ちスイングアームに1本サスですよね。これはOKなんですか?

全然OKです! これは我々のようなカスタムビルダーにはなかなかできない部分で、最新のスタイルでやらなければとなるとメーカーにしか作れません。アップハンドルもOKです。ただ、唯一この中で「仕方がないか……」と思う部分はマフラーの集合部に付けられた膨張室。4本のエキゾーストパイプを下で4-2に集合してから膨張室に接続しています。普通に横から見れば集合タイプのメガホンマフラーに見えるんですが、下のほうから覗き込むと、いわゆる“弁当箱”が見えてしまう。ただ、こればっかりは現代のマシンなのでやらないわけにはいきません。パワーをキッチリ出そうとするなら、このショートメガホンマフラーでは今時の騒音規制に合うように消音しきれないでしょうから。でも車体がバンクすると見えちゃうんだよなあ……。

[CB-Fコンセプト]アルミ製のファットバーにスマートフォンを思わせるデジタル液晶メーターを組み合わせている。これが市販時にどうなるのか。

ホンダCB750F
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CB750Fはアナログの2連メーターと、ジュラルミン鍛造のセパレートハンドルを採用している。

――CB-Fコンセプトには保安部品(ウインカーやテールまわり)が付いていませんが、付けるなら?

ウインカーが難しいですよね。昔のCB750F/900Fは、どでかいウインカーでそれが印象に残っているのでそれもいいですし、小さくしたLEDでも当時「ヨーロピアンウインカー」っていうのが流行ったのでそれもOK。ただ、取り付ける位置は我々Fファンにとってとても重要です。ヘッドライトとホーンの位置関係に対して、ウインカーをどの位置に付けるのか。これを間違えると取って付けたような印象になってしまう。アンダーブラケットの横あたりに生えると昔ながらのスタイルになりますよね。

[CB-Fコンセプト]ダミーのヘッドライトに2連ホーンを組み合わせただけのCB-Fコンセプトだけに、ウインカーやメーターの市販時の仕上がりが気になる!

そしてリヤウインカーは難しいですね。まさかCB1000Rのようにスイングアームマウントにはならないと思いますが……。シート下からフェンダーを出してほしい。昔のアメリカ仕様なんかはすごく長いフェンダーが付いていましたから、そのスタイルでもいいんじゃないでしょうか。スイングアームから生えたら、ちょっと違うかなと。

――最後に、CB-Fコンセプトが発売されたと仮定して。丸山浩がCB-Fコンセプトをカスタムするとしたら?

それはテイストオブツクバに出るでしょう! 鉄フレームですから。じつは2年前にCB1000Rが発売されたときに計画していたんですよ。これにFの外装を乗せたら、鉄フレームでCBR1000RR系のエンジンじゃないですか。適当なCGですけどCB1000RにCB-Fの外装を乗せてみて、自前のYoutubeチャンネルでも紹介しています。なんなら最新CBR1000RR-Rのエンジンも搭載できる……のかも? そうしたらもう勝てますよ! めちゃくちゃ速いヤツができる。CB-Fコンセプトだったら、それがカンタンにできますよね(笑)。テイストオブツクバだったら、勝ちを狙うだけじゃなく、自分が好きなバイクでレースに出場するというだけでも楽しめます。

――ゼッケンはやはり19番?

いやいや、じつは19番にはそれほど強いこだわりはありません。あの時代の北米カラーで言えば、フレディ・スペンサーのほかにピエトリとかワイズとかボールドウィンとか、全部で4人いたので、そのゼッケンならどれでもOK。テイストオブツクバならあの大きいゼッケンプレートを再現できますからね。楽しめると思います!

HONDA CB750F[1979~]

CB-Fコンセプトのスタイリングの手本となったのがCB750F/900Fだ。また、バイク漫画の金字塔「バリバリ伝説」で主人公の巨摩 郡が乗っていたことでも人気に。

1979年に登場したホンダCB750F。初代は通称CB750FZとも呼ばれる。当時価格は53万8000円だった。

2年目の1980年には早くもマイナーチェンジ。CB750FAとも。変更点はハロゲンヘッドライト採用のほか、ピボットシャフトがφ14→16mmとなりブッシュからニードルベアリングへと改良された。リヤブレーキパッドも厚みを増している。当時価格は54万8000円。

1981年のCB750FBではホイールが裏コムスターに。フロントブレーキキャリパーは2ポットになった。ただしCB900Fとは異なり、フロントフォーク径はφ35mmのまま。また、赤フレームに金色ホイールの限定車や、カウル装着車のFBBも登場した。CB750FBの当時価格は59万5000円。

1982年に国内仕様最終モデルとなったCB750FCが登場。ホイールは前後18インチのブーメランコムスターとなり、フロントフォーク径もφ39mmに。TRACも採用し、リヤショックはサブタンク付きの新型となった。当時価格は64万円。

1983~1991年に週刊少年マガジンで連載されたバイク漫画の金字塔が「バリバリ伝説」だ。主人公の巨摩 郡が愛車としてCB750Fに乗っていた。

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