音(だけ)速(い)伝説

カワサキ Ninja ZX-25R歓迎論【30年の時を超えて”250cc4気筒”再び】

  • 2020/3/22
ZX-25R×ZXR250

250cc4気筒マシン。かつては、「速いのは音だけじゃないか」と揶揄された。でも、今こそ胸を張ろう。「音だけ速ければ十分だ!」と。30年を経て、時代がようやく追いついたのだ。カワサキ Ninja ZX-25Rは、これからのスポーツバイクの道標だ。

文:高橋 剛 ●写真:鶴身 健/真弓悟史 ●CG構成:白圡 学
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高回転主義、ハイメカ信者

まさか、こんなに人気だったのか…!?

’19東京モーターショーにカワサキ Ninja ZX-25Rが登場して以降、250cc4気筒人気が猛烈な勢いで再燃している。

再燃…? だがそもそも、かつてこのカテゴリーは”燃えて”いたのだろうか?

250ccスポーツバイクが熱かったあの時代、主役は2ストのレーサーレプリカだった。技術も注目も人気も、2ストレプリカに集まっていた。

そんな中で、4スト4気筒は明らかに脇役だった。「エンジンがヒュンヒュンと回るのはすごいけど…、だから何なの?」と、少し引いたところから、少し冷めた目で見られていた。 

主立ったレースがなかったから? 世界グランプリに2スト250ccは走っていたけれど、4スト4気筒は走っていなかったから? 理由のひとつかもしれない。でも、それだけじゃない。

オレたちは、ガチだったのだ。正確に言えば、ガチ過ぎだった。ガチで速さを追い求めていた。「だから何なの?」の後には、言葉にせずとも「さほど速くはないんだし」と続いたはずだ。

ガチなことは、決して悪くない。本気の速さを追い求めるからこそ、技術が向上する。技術者が磨かれる。ユーザーであるオレたちにとっても、何らかのかたちで恩恵がある。 

しかもあの時代は、ガチであることが当たり前だった。サーキットと公道は密につながっていて、良くも悪くも勢いがあり、熱かった。

意味も意義も考える必要などどこにもなかった。ただシンプルに、「速いことはエライこと」だった。

だから、さほど速くなかった250cc4スト4気筒は、主役にはなれなかった。2万回転に届こうとする超高回転を達成していながらも、それがガチの速さに結びついていない、と感じられていたのだ。 

カワサキ ZXR250

約20年前に2万回転という超高回転の世界を見せてくれた、カワサキ ZXR250。

カワサキ ZXR250

アナログメーターが時代を感じさせるが、ハイメカ感では現代のバイクに引けを取らない。

カワサキ ZXR250

単純な湾曲線を描くエキゾーストパイプや、GPZ900R系を思わせるシリンダーの造形などが時代を偲ばせる。このエンジンはバリオスにも搭載され、’07年まで生き残った。

カワサキ ZXR250

シリンダヘッドに冷却風を送る、通称“洗濯ホース”。実はラムエアダクトはこれとは別にアンダーカウルにある。フロントブレーキはWディスク+2ポットキャリパー。

だが、時代は変わった。世界はすっかり賢くなって、物事を考えるようになった。

本当にガチが必要なのか? 

ラップタイムがコンマ数秒、最高速が数km/h速いバイクが、果たして本当に「いいバイク」なのか…?

そこに再び250cc4気筒が登場し、炎を上げた。

これは”再燃”ではない。新しい炎だ。

30年の時を超えて

ようやく時代が追いついた。

ZX-25Rは、騒がしい自分の周辺をクールに眺めながら、ZXR250にそう語りかける。

ガチの速さが本当に必要なのかを考える時代。自分たちの身の丈にあった性能を求める時代。無理なく楽しめるバイクを望む時代。そして、本当の意味で「いいもの」を愛でる時代。

それが、今だ。250cc4気筒のZX-25Rが、今、すべてを叶える。

カワサキ Ninja ZX-25R[東京モーターショー2019参考出品車]

’19東京モーターショーで突如発表された、カワサキ13年ぶりの250cc4気筒マシン・Ninja ZX-25R。

カワサキ Ninja ZX-25R[東京モーターショー2019参考出品車]

デジタルメーターにはギヤポションジインジケーターなども備えている。

カワサキ Ninja ZX-25R[東京モーターショー2019参考出品車]

元々コンパクトなため3軸三角形配置は見送っているが、贅肉をそぎ落とした造形やエキゾーストパイプの取りまわしはクラスを超えている。ボア×ストローク諸元も気になるところ。

カワサキ Ninja ZX-25R[東京モーターショー2019参考出品車]

サイドカウルの段付きエアスクープは洗濯ホースのオマージュ? フロントブレーキは1枚ディスクながらラジアル4ポット。リニアなタッチが期待できる。

ガチの速さは、きっとこのバイクにはないだろう。規制やらコストやら、あるいは社会の目やら、現実的な制約がこのバイクにはのしかかっている。それが現代に生まれるバイクの宿命だ。 

しかも、はっきり言えば、しょせんは250ccなのだ。ラップタイムなんて、たかが知れている。ガチで速いリッタースーパースポーツ勢とは比べるべくもないだろう。

けれど、それでいい。

いや、それがいい。

消去法じゃない。積極的に、250cc4気筒がいい。

ZX-25Rには、(おそらく)気持ちよく回るエンジンと、気持ちいいエキゾーストノートがある。(確実に)最新のエクイップメントがある。

そして、ラップタイムがガチのスーパースポーツには敵わないとしても、値段は(おそらく)半分以下だ。それなのに、楽しみは倍だ。

250ccのZX-25Rは、気兼ねなくアクセルを開けられるだろう。そして、爽快なエンジン音に包まれるだろう。待っているのは、おびえる必要のないスポーツライディングだ。走らせてナンボのバイクを、思いっ切り走らせられるという喜びだ。

ZX-25Rは、間違いなく高性能だ。でも、手のひらに収まる。手が届く今の時代を生きるオレたちの、本当の意味でのスポーツバイク。

バイクは、オレたちにとって趣味だ。命を懸けるものじゃなく、人生を豊かにする遊びのひとつだ。そして、本気の遊びは、ZX-25Rのように、洒落の効いた存在であるべきなのだ。

主役を張るだけの力。そして時代の後押し。燃え盛れ、新しい炎。

ZX-25R×ZXR250

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