MotoGPにおいて、’15年のホルヘ・ロレンソ以来タイトルから遠ざかっているヤマハ。やるべきことを整理し、集中することで、復活の狼煙を上げようとしている。ヤマハのMotoGPプロジェクトリーダーへのインタビューとともに’19シーズンを振り返る。
●文:高橋 剛 ●取材協力:ヤマハ発動機 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
時には辛抱をしながら信じる道をひたすら進む
ヤマハは計4名のライダーを擁している。ファクトリーチームにマーベリック・ビニャーレスとバレンティーノ・ロッシ。そしてサテライトチームにクアルタラロとフランコ・モルビデリ。この4名には、同じ’19年型のYZR-M1が授けられた。
もちろんファクトリーチームとサテライトチームにはいくらかの差はあるし、ライダー個別の好みに応じた違いもある。クアルタラロについてはエンジンの耐久性を考慮して回転数リミッターを設けていたともされる。にもかかわらず、クアルタラロは第4戦スペインGPでポールポジションを獲得してみせたのだ。
「コーナリングスピードの速さが彼の特長ですが、実は減速が非常にうまい。その組み合わせで、YZR-M1の良さを他のライダーとは違う形で引き出すことができるんです。簡単に言えば、”合って”いた。同時にファビオは、『初めて乗ったライダーでも短時間で極限まで性能を引き出せる』というYZR-M1の長所も見せてくれました」
ライダーが思ったように応答するマシン。同じように攻めた時、同じように応える再現性の高さ。それがYZR-M1のめざす先だ。さし当たって新人のクアルタラロがシーズン序盤から速さを見せたことは、明るい話題ではあった。
一方で、新人のクアルタラロがあまりに速ければ、他のライダーが混乱するのも無理はなかった。勢いや才能を差し引いたとしても、相当な結果だ。事実上のエースライダーであるビニャーレスは繊細なメンタルの持ち主と言われる。クアルタラロの活躍に我を失いかけていた。
「まずは落ち着いてもらうことを心がけました」と鷲見氏。「今、自分たちがやるべきことは何かを見極めながら、ベースセッティングを煮詰めることに集中したんです。特にマーベリックは思うように減速ができないとリズムを崩してしまう。車体、エンジンの制御を丁寧に見直していきました」
第7戦スペインGPあたりから、セッティングの煮詰めが功を奏し始めた。スペインでは他車の転倒に巻き込まれてリタイヤを喫したビニャーレスだったが、続く第8戦オランダGPで優勝を遂げる。そして以降、安定して上位につけ、第18戦マレーシアGPでも2勝目を挙げてみせるのだった。
“物事がうまく進まない時ほど、ライダーは多くを求めるものだ。(…)だが、バイクは非常に繊細な乗り物で、無数のパーツの組み合わせによってフィーリングが大きく異なる。あれこれといじればいじるほど、問題の本質がどこにあるのか見失いがちなのだ”→【’19 MotoGPを振り返る〈ヤマハ編〉後半へ続く】
(前ページの続き) 物事がうまく進まない時ほど、ライダーは多くを求めるものだ。特に自信を失うような事態に直面すると、あちらこちらにその原因を見出し始めてしまう。そしてファクトリーチームには、ライダー個[…]
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