普通自動二輪で乗れるホンダのフルカウルスポーツとして’13年にデビューし、’16年にフルチェンジしたCBR400R。7年目となる’19年モデルでは、アグレッシブになったスタイリングもさることながら、車重を2kg軽量化し、エンジンを大幅に熟成するなどさまざまな進化を遂げた。そのオールマイティな走りについてレポートする。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:山内潤也 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
[◯]オールマイティな走り。熟成エンジンも好印象
ひと通りの試乗を終えたあと、CBR400Rは普通二輪免許でビッグバイクの世界が味わえる稀有なモデル、という結論に至った。高速道路での優れた安定性と防風効果、倒し込みや切り返しで伝わる重量感など、挙動の多くがワンクラス上の排気量車を思わせるもので、その演出は見事だと言える。
【’19 HONDA CBR400R】主要諸元 ■全長2080 全幅755 全高1145 軸距1410 シート高785(各mm) 車重192kg ■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ399cc 46ps[34kW]/9000rpm 3.9kg-m[38Nm]/7500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量17L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=160/60ZR17
まずはエンジンから。カップルバランサーやローラーロッカーアームなどを採用した399㏄水冷並列2気筒エンジンは、アドベンチャーモデルの400Xと同様にバルブタイミングおよびリフト量の最適化などによって、最高出力46psはそのままに3000〜7000rpmでのトルクを3〜4%向上させている。もともとレッドゾーンの始まる1万rpmまで不快な微振動を伴わずスムーズに伸び上がる特性だが、新型はさらに磨きをかけた印象だ。トップ6速100km/hでの回転数はメーター読み5250rpmで、高速道路で上りにさしかかっても、速度を楽に維持できたり前走車を余裕で追い越せたのは、バルブタイミングを含む各部の熟成によるところが大きいだろう。
加えて、この新型から待望のアシストスリッパークラッチが採用されており、ドッグレッグレバーの導入と合わせて操作が圧倒的に楽になった。なお、新型サイレンサーのサウンドは特に低回転域でのパルス感を強調したもので、2気筒好きな私としてもこの音質は好みだ。
ハンドリングは、ライダーの技量や気象条件などを問わないという非常に扱いやすいもので、基本的には安定成分が強め。リヤショックが分離加圧式にバージョンアップしているのだが、乗り心地だけなら400Xの方が上。とはいえ、高速道路で大きめのギャップを拾っても変に突き上げられることはなく、その後の収束が早いのはしなやかなフレームのおかげだろう。何よりうれしいのは、巡航ポジションでの防風効果が高いこと。ヘルメットに干渉する風切り音がほとんどなく、淡々と巡航することが可能だ。なお、ブレーキはフロントがシングルなので決して強力ではないが、リヤも含めて必要にして十分な性能を有している。
【スタイリングを一新してよりアグレッシブに】写真上が2019年モデル。 φ35mm鋼管をメインに使用したダイヤモンドフレームはそのままに、シートレールおよびスイングアームのエンド部分を改良。リンク式のリヤショックは分離加圧式に。ハンドル切れ角は3度減り、最小回転半径は2.7→2.9mへ。アシストスリッパークラッチを新採用。
【 ウインカーもLED化し、さらに精悍さアップ】標準装着タイヤ2種類のうちダンロップ・D222は継続だが、もう1種類はメッツラー・Z8インタラクトからミシュラン・ロード5へ。灯火類は前後のウインカーもLED化され、エマージェンシーストップシグナルを導入。
セパハンの締結をトップブリッジの上→下に変更、上半身の前傾角を約8度深めている。これによりフロントカウルをより低くすることが可能に。スクリーンの形状も見直す。
ハンドル位置は下がったが、それでも前傾姿勢は極端には深くはない。シート高785mmは変わらず足つき良好。
180度クランクの399㏄水冷パラツインはバルタイやリフト量、インジェクター、吸排気系、FIセッティング、クランク角検知システム、ミッションなどほぼ全てに手を加えた。
サイレンサーはテールパイプを1本から2本へ。エキゾーストパイプを二重管にし、触媒前後の容量を増大。
フォークはφ41mm正立式。Fブレーキはφ320mmシングルディスクと片押し式2ピストンキャリパーのセットで、ABSも標準装備。
導風ダクト構造や排風レイヤー構造などを採用したカウルデザイン。サイドにはスポイラーあり。
ギヤ段数、シフトアップインジケーター、回転数ピークホールド、水温計を追加した新型メーター。
[△]ライバルより安定指向。大型車っぽいと言える
直接のライバルであるニンジャ400よりも25kg重く軸距は40mm長い上に、タイヤが前後ともワンサイズずつ太いので、どうしても挙動は大らかなイメージに。とはいえ、この落ち着いた走りは、より長い距離のツーリング向けとも言えるだろう。
[こんな人におすすめ]見た目と走りのギャップ大きめ。それも持ち味だ
共通プラットフォームで誕生したCBR400R。’19年のモデルチェンジで400Xとの差別化が明確になったことで、こちらはさらにオールマイティさを高めた印象だ。たくさんの荷物を積んでのツーリングならニンジャ400よりもいいかもしれない。
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